2011 Fiscal Year Research-status Report
女性の感情障害脆弱性の基盤となる神経内分泌機構の検討
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23530957
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
富原 一哉 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (00272146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 園子 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 教授 (50396610)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 情動の性差 / 神経内分泌 / エストロゲン / マウス / 産後うつ / 恐怖学習 / 不安 / 行動データの多変量解析 |
Research Abstract |
女性は男性の2倍程度抑うつや不安などの情動障害に罹患しやすいとされ、その発症にはエストロゲンなどの性腺ホルモン深く関与すると考えられている。しかしながら、実験的研究では、エストロゲンが情動関連行動に及ぼす効果は一貫していない。この原因のひとつとして、実験で用いられたエストロゲンの用量や作用期間等の方法論的相違が関係していると考えられている。そこで、23年度は、どのような投与用量や作用期間でどのような効果が示されるのか、体系的にエストロゲンの投与手続きを変化させることにより、メスマウスの情動行動に対するエストロゲンの用量依存的効果の確定を行った。 その結果、高用量の17β-estradiolの投与は、単回投与であっても、長期慢性投与であっても、open-fieldテスト、高架式十字迷路テスト、明暗箱往来テスト、条件性恐怖学習課題、驚愕反応課題などによって測定されたメスマウスの情動行動を亢進させる効果を発揮し、特にその効果は作用期間が長期であるほど顕著であることが示された。一方、低容量のエストロゲン投与では、逆に情動行動が低減する傾向が認められた。また、血中の17β-estradiol量を確認したところ、情動行動の亢進が認められるのは、自然発情周期における発情期よりも高く、むしろ妊娠期に相当する濃度の時であり、それ以下のレベルでは、長期慢性投与であっても、逆に情動反応が抑制される傾向にあることが示唆された。以上のことから、高用量のエストロゲンの慢性処置を受け、情動関連行動が亢進したマウスは「マタニティー・ブルー」や「産後うつ」の動物モデルとなりうると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は、エストロゲン投与の方法論的相違が、メスマウスの情動行動に対して、どのような効果の相違をもたらすかを確定することを目標としており、概ねこの目標を達成できたものと考える。しかしながら、それぞれの投与手続きによってもたらされるエストロゲン血中濃度の確定については、高用量投与の場合にはある程度信頼できるデータを得ることができたものの、低容量投与については、当初予定していた測定法では定量限界を下回ることが明らかとなった。そこで、低容量投与については、測定法を超高感度の液体クロマトグラフィー-タンデム型質量分析(LC-MC/MS)法に変更して別途実験をやり直すこととした。この実験については、次年度まで継続するため、そのための予算の繰越措置を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究によって、妊娠期に相当する血中濃度をもたらす高用量のエストロゲンの慢性投与が、メスマウスの情動関連行動を増大させることが確認されたので、24年度は、この情動亢進効果がERαとERβのどちらを介して発揮されるのかを確定することを目指す。具体的には、情動亢進効果をもたらす濃度の17β-estradiolに相当する濃度のERαアゴニストとERβアゴニストを、浸透圧ポンプによって長期慢性投与し,メスマウスの情動行動を測定する。 さらに、25年度については、当初の計画通り、24年度までの成果を基盤として,グルココルチコイド受容体拮抗薬を用いたHPA軸の操作やセロトニンやオキシトシンの拮抗薬、作動薬を投与した場合のエストロゲン誘導性情動反応促進にたいする影響を測定することにより、このエストロゲンの情動性促進の神経内分泌メカニズムについて仮説的モデルを作成する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
推進状況に記した通り、23年度の研究においては、当初計画していた手法では低用量投与の場合の血中エストロゲン濃度が測定限界を下回ったため、超高感度の測定法による実験を再度行なった。この分析が年度をまたいだため、23年度収支における「次年度使用額」は、その分の予算として繰り越したものである(外部機関に検査依頼するため「その他」の項目として使用)。 その他の24年度研究費については、当初予定通り、主に各種アゴニスト、浸透圧ポンプ等、実験実施に必要な消耗品の購入に使用する。また、研究成果発表のための学会参加費等にも用いる。
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Research Products
(6 results)