2012 Fiscal Year Research-status Report
身体的姿勢によって変容する視空間の特性:斟酌理論に照らして
Project/Area Number |
23530965
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
東山 篤規 立命館大学, 文学部, 教授 (00118001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下野 孝一 東京海洋大学, 海洋工学部, 教授 (70202116)
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Keywords | 空間知覚 |
Research Abstract |
この実験では,奥行きの手がかりと自己受容覚の関係を明らかにした。検討する手がかりとして,両眼網膜像差,きめの勾配,陰影を用いた。距離の手がかりには,刺激図形の正立・逆転にほとんど関係なくはたらく両眼網膜像差と,刺激図形の正立・逆転に依存して奥行きの関係が変わる陰影や奥行き反転図形と,その中間に位置するきめの勾配とがあるが,自己受容覚の変化は,どの種類の奥行きの手がかりに影響するのかを明らかにした。 実験では被験者にヘッド・マウンティッド・ディスプレイHMDを装着させることによって,身体が屈曲しても目に与えられる網膜像を一定にした。①両眼網膜像差を網膜に与える実験では,像差が7段階にわたって変化するステレオグラムを作成し,それをHMDの中に提示して,観察者には,正立した条件,天井を見上げた条件,足元を見おろした条件のもとでステレオグラムを融合させ,そのときに知覚された奥行きを判断させた。②きめの勾配を用いる実験では,きめの勾配が強く作用している10図形を選抜し,観察者には,上で述べた同じ3姿勢条件のもとで,各図形の正立画と倒立画を継時観察させて,奥行き量の判断を求めた。③陰影を用いる実験では,刺激図形を180°回転させると奥行きの関係が逆転するような10図形(クレータの写真など)を単眼提示した。観察者には,上で述べた同じ姿勢条件のもとで各図形を観察し,その見え姿の報告を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
とくに困難なく,研究計画が実施できたから。得られた結果も。じゅうぶんに解釈できるようなものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,当初の実験計画に従って,頭の方向判断と視覚線分の方向判断の測定を行う。すなわち,実験1では,頭部の主観的な傾斜角を測定する.従来から言われているようにミュラー効果が頭の傾斜角の過大知覚によって生じるとすれば,頭の傾斜角は,実際よりも大きく知覚されていることになる。頭のみを傾斜させる装置をすでに試作しているので,それを用いて,実験者から指定された方向に頭を傾けたり(マグニテュード産出法),特定の方向に傾けられた頭部の傾斜角を推定したり(マグニテュード推定法)して頭部の傾きに関する知覚的特徴を調べる。 つぎに,ミュラー効果が頭の傾きを不正確に斟酌することによって生じるとすれば,どのように視覚刺激を提示しても視覚的垂直の方向は変化しないはずであると仮定して,実験2では,線条刺激の長さや提示時間を変えてもなお,視覚的垂直方向が不変のままであるのかどうかを検討する。この実験は暗室においてパソコンの画面にさまざま長さあるいは提示時間の線分を提示して観察者には,その線分が右に傾斜しているか左に傾斜しているかの判断(2肢強制選択)を求めて,得られたデータから主観的等価点を求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な費目は,学会発表にともなう旅費と宿泊費(約40万円),実験者・被験者に支払われる謝金(約20万円),ノートパソコンの買い替え費用+関連ソフト(約10万円)である
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