2013 Fiscal Year Annual Research Report
側頭葉における報酬に基づいた視覚刺激の連合記憶メカニズムの解明
Project/Area Number |
23530971
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
菅生 康子 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (40357257)
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Keywords | ニューロン / 連合 / 記憶 / 報酬 / 視覚刺激 |
Research Abstract |
我々の日常生活において記憶機能は重要な役割を担っている。また、長寿化が進むにつれ、記憶の機能が衰える認知症への対応が社会の大きな課題となってきている。記憶や認知の脳内メカニズムを明らかにすることは、認知症を理解し、認知症患者のクオリティ・オブ・ライフを向上する技術開発の手掛かりを得ることにつながる。状況に応じて柔軟に認知する仕組みは不明な点が多い。本研究では、物事を識別する脳のメカニズムを明らかにするため、嗅周囲皮質の情報処理の解明を目指した。今回の実験では、同じパターン刺激が、その前に呈示される色刺激によって、「報酬あり」か「報酬なし」に関係づけられている。実験動物は、色刺激を記憶し、続いて呈示されるパターン刺激を見て報酬の有無を連想する。実験動物のパターン刺激呈示中の嗅周囲皮質の神経細胞活動を電気的に記録したところ、パターン刺激呈示中つまり、まだ実際の報酬呈示・非呈示が行われていない状況にもかかわらずニューロンの約半数が報酬の有無の情報を表現することが分かった。さらに、色刺激・パターン刺激の組み合わせの情報も表現していたことから、嗅周囲皮質で報酬の有無の情報が段階的に処理されることも示唆された。また、最終年度は嗅周囲皮質の前段階の処理を行うとされるTE野のニューロン活動を記録し、解析した。その結果、TE野では柔軟な表現は弱いことが分かってきた。柔軟な表現は、嗅周囲皮質および嗅周囲皮質が神経繊維の投射を行う領野で起こると考えられる。 状況に応じてある出来事の認識を柔軟に変化させる時の脳内情報処理メカニズムに、嗅周囲皮質内部の神経機構が関与していることが今回の研究によって初めて明らかになった。嗅周囲皮質についての研究成果は国際誌で発表した。また、「状況に応じて物事を柔軟に認識する脳の活動-認知症の理解へ手掛かり-」と題して所属する研究機関のホームページで公開した。
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