2011 Fiscal Year Research-status Report
高度教職能力開発におけるナラティヴ・カンファレンス法の教育的意義に関する研究
Project/Area Number |
23530974
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
庄井 良信 北海道教育大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00206260)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナラティヴ / 臨床教育学 / 教師教育 / フィンランド |
Research Abstract |
今年度は,ナラティヴ・カンファレンス法(NCM)が現職教師の高度な職能開発に果たす意義と役割に関する理論仮説(生成的問い)を理論的に構築した。具体的には,内外における研究資料を収集し,基礎理論を構築するために,以下の計画を実行した。 (1):現職教師教育カリキュラムに関する内外の研究文献・資料の収集と整理を行なった。特に,日本教育学会の特別課題研究委員会(現職教師教育カリキュラムの教育学的検討)での資料収集によって,本研究課題に関する内外の研究動向を包括的に把握することができた。(2):ナラティヴ・アプローチを応用した質的研究法に関する内外の研究文献・資料(とくに臨床教育学に関連するもの)の収集と整理を行った。その成果は,北海道教育大学大学院の研究紀要に投稿・掲載された。(3):海外における研究資料収集として,ナラティヴなアプローチを応用したカンファレンス型の学びに関する研究文献・資料の収集と整理を行うことができた。(4):フィンランドのナラティヴ・ラーニングに関する基本文献を翻訳し,その経過的な成果は,日本臨床教育学会の『臨床教育学研究』(創刊号)に投稿・掲載された。(5):ナラティヴ・アプローチを活用した「高度職能開発支援」に関する基幹コンセプトと臨床教育学のフィールドワークに基づく具体的な取り組みを,イタリアのローマで9月6日に開催された国際学会(ISCAR:International Society for Cultural and Activity Research)で,"Narrative learning intervention in an inner-city public school" というテーマで発表し,研究交流をおこなった。(6):"NCM"フィールドワークを,檜山郡上ノ国町の小学校,北海道教育大学附属札幌小学校,札幌市内公立小学校で試行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたとおり,平成23年度当初に計画していた研究活動(1)~(6)は,ほぼ十全に遂行できた。とくにローマで開催された国際学会での発表には,国際学会誌から投稿を求める複数のオファーがあり,本研究の推進が国際的にも意義深いものであることが,いっそう明らかになった。さらに,カナダのナラティヴ・インクワイアリー(narrative inquiry)の研究グループと,臨床教育学の国際的な共同研究の重要な契機もつくることができた。そのことをとおして,本研究課題である「高度教職能力開発におけるナラティヴ・カンファレンス法の教育的意義」に関する理論的・実践的な研究の基盤が,当初に構想していた以上に堅固なものになりつつある。また,実践的なデータ収集においても,現職教員が参画するナラティヴ・カンファレンスの臨床的データも当初に予定していた以上に質の高いものとして収集・整理できはじめている。以上のことから標記のとおり自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,今年度の研究実績にもとづいて,北海道教育大学が研究協力協定を締結しているフィンランドのオウル大学教師教育学部・大学院や,カナダのアルバータ大学のナラティヴ・インクワイアリーの研究グループとの共同研究をいっそう豊かに展開しつつ,今年度に構築した「"NCM"が現場教師の高度な職能開発に及ぼす影響に関する理論仮説」に基づいて,北海道における研究協力校への臨床的フィールドワークでの"NCM"や,本学大学院を修了した現職教員との"NCM"を実施し,最終的には多くの現職教師教育の現場(教職大学院等)でも応用可能な"NCM"の典型モデルを臨床教育学の観点から再構築したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費の使用計画は,以下の通りである。 (1)ナラティヴ関連及び教師教育関連の研究資料(欧文・和文)を収集し,それをPDF化し,構造的な検索が可能な基礎資料を作成する。(資料収集国内旅費:18万,PDF資料化:約8万)。(2)モスクワ大学で開催される国際会議での研究発表及び情報収集を行なう。(旅費:36万,発表原稿の英文校閲:8万)。(3)カンファレンス資料解析用の小型PCと携帯用プロジェクター(物品:28万)。(4)資料整理及び観察記録補助業務(人件費:12万)。以上、総額110万。
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Research Products
(8 results)