2011 Fiscal Year Research-status Report
戦前・戦後東北における北方性教育運動の展開に関する調査・研究
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23530978
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
土屋 直人 岩手大学, 教育学部, 准教授 (10318751)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 北方性教育 / 生活綴方 / 東北民教研 / 地域教育実践 / 民間教育運動 / 教育実践史 / 生活認識 |
Research Abstract |
本研究では、戦前・戦後東北における北方性教育運動の展開とその実像を明らかにすることを目的とし、特に戦前以来の北方性教育運動、生活綴方教育実践が、戦後東北においていかに展開してきたのかについて実証的に調査・研究を行う。その際、戦前東北における北方性教育運動の基本的性格を明らかにし、それを戦後東北の教師たちがいかにその教育実践の中に継承し発展させようとしてきたかを検討する。 研究初年度にあたる平成23年度においては、具体的に以下の3つの作業を進めた。(1)文献による基礎研究:戸田金一らの先行諸研究の検討とあわせ、主に以下の各実践者の実践の足跡と実際について、同時代及び後時代の著書・雑誌論文等を中心に基礎的事実を整理・収集した。(青森:土岐兼房、三上斉太郎、秋田:加藤周四郎、佐々木昂、山形:『村山俊太郎、国分一太郎、等。(2)戦前・戦後の北方性教育、生活綴方教育実践に関する未見の第一次資料の収集・分析検討:本年度は、山形県教職員組合(山形県国民教育研究所)資料室に赴き、真壁仁、剣持清一や土田茂範らに関する第一次資料を閲覧した。また、秋田大学附属図書館「北方教育資料室」に赴き、第一次史資料(学級文集、実践記録等)の閲覧を行った。これらの諸資料の分析・検討を本格的に次年度以降に行う予定である。(3)戦後生活綴方教育実践に関する聞き取り調査:戦前に、東北6県において生活綴方教育実践を担った教師らに、当時の実践の実態に関する調査を行うべく、本年度は青森県作文教育における代表的実践者である橋本誠一氏への聞き取りを行い、あわせて関連第一次資料を閲覧した。次年以降本格的に、聞き取り調査の内容と実践記録や論稿を総合的に検討吟味し、当該実践者のライフヒストリー、教師としての人物像やその足跡の実際について明らかにする作業を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請時での当初計画(平成22年11月)段階では、歴史研究(教育史研究)としての研究方向・課題意識が強く、第一次資料収集と聞き取り調査を中心に作業を進め、その成果を蓄積し分析を進める予定としていた。それは本年度も来年度も変動しない(変更の予定はない)ものの、平成23年3月11日に発生したの東日本大震災以降、本研究の果たす意味や、特に東北の地域教育実践にとっての生活綴方・北方性教育の有する今日的課題性など、緊急かつ根源的な課題にあらためて考究を深めることが求められたため、作業の進展としてやや停滞する(立ち止まる)時間があり、本質的な課題意識の再検討に迫られたことがあったため、順調とはいえ当初計画以上の進展はみることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、東日本大震災以降における、本研究課題の有する意味、特に東北の地域教育実践にとっての生活綴方・北方性教育の有する今日的課題性など、本研究とかかわる今日的課題とあわせて研究の意義・作業方向を吟味し、その視点からの調査をも進め、考究を更に深めたい。また、作文教育に関係する退職教員や現場教師らへの聞き取り調査も複数の方を対象に進めたい。本研究の姿勢としての歴史的研究(教育実践史研究)としての課題意識は持ちつつも、今日的課題への視点をあわせて据えたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基礎文献図書やデータ保存のためのUSB等の消耗品の購入と合わせ、第一次資料の閲覧・収集及び退職教師らへの聞き取り調査、被災地での(特に若手)教師への聞き取り調査、研究会参加や学会研究発表のための旅費(10回程度)、また上記聞き取り調査に際しての謝金の支出を予定している。 なお、次年度使用額が生じた状況等について、平成23年度においては、当初に予定した聞き取り調査の計画に変更が生じ(対象の方の、高齢の理由による健康不良により実施が叶わなかったこと等)、聞き取り調査に関する謝金の支出に変動があり、次年度使用分として当該額が生じた。翌年度においては、当該使用額分は、聞き取り調査の実施(当該方の健康の回復後の再開)にかかわる謝金として、継続的に使用する予定である。
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