2011 Fiscal Year Research-status Report
フランスのフレネ教育における〈自尊感情〉と〈他者へのかかわり〉
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23530980
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
坂本 明美 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (40400535)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フレネ教育 / 自尊感情 / かかわり / フランス |
Research Abstract |
本研究は、子どもたちの「自尊感情」、「自己肯定感」を育む教育の在り方を追究するために、フランスの「フレネ教育」について、「自尊感情」と「他者へのかかわり」という視点で考察を行なうことを目的としている。平成23年度の研究成果としては、南フランスのヴァンスにある「フレネ学校」で調査を行なったことが大きな成果であった。同校では、三つのクラス(幼児クラス、小学校低~中学年クラス、小学校中~高学年クラス)において観察・記録を行なった。また、同校の教師たちにインタビューもさせていただいた。 訪問したヴァンスの「フレネ学校」は、フランスの教育者セレスタン・フレネ(Celestin FREINET:1896~1966)が1935年に開校した学校であり、現在も存続している。筆者は「フレネ教育」の研究を始めた当初から、同校で定点観測的に観察を続けている。 一方、2009年、この「フレネ学校」では、二名の教師が退職された。この二名の教師たちは、どちらも同校で長年実践を続けてこられた教師であり、そのうちのお一人は校長も兼務されていた。そして、彼女たちの退職に伴い、代わりに新たに二名の教師が採用された。校長と担任教師が変わったことによって、「フレネ学校」の教育実践はどのように変わったのか、あるいは変わらないものは何なのか、ということについても、筆者は関心を持っていた。筆者は2007年3月以来同校を訪問していなかったため、再び訪問・観察したい、と以前から考えていた。 また、「フレネ教育」における「自尊感情」というテーマは、筆者の研究の原点に立ち返るものでもある。そのため、筆者の「フレネ教育」の研究の出発点となったヴァンスの「フレネ学校」における観察をもとに、研究テーマについて考察したいと考え、今回同校における調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」では、主に次の二つの柱で進める予定であった。1.フレネの記述からの考察、2.フランスにおいて「フレネ教育」を導入している教室での観察・記録を通した考察、である。 平成23年度は、上記の二つの柱のうち、2.のフランスの学校における観察・記録については実施できた。その考察については、「研究実施計画」においても、平成24年度に引き続き行なう予定としていた。一方、1.のフレネの記述からの考察については、ほとんどといってよいほど取り組むことができなかった。さらに、平成23年度は、分析や考察の土台作りとして、「自尊感情」等に関する文献を読み進める予定であったが、不十分であった。 なお、私事となるが、筆者は平成23年4月12日に出産したため、「育児休業等に伴う交付申請留保届」を提出させていただき、平成23年9月8日を、今回の科研費の研究開始日とさせていただいた。この事情も含めたうえで研究計画を立てたつもりであるが、文献を読む時間が非常に少なかったことが大きな反省点である。この点については、平成24年度(以降)にできる限り挽回していくように努力したいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成23年度の「収支状況報告書」の「次年度使用額」欄が「0円」にならず、若干の残高が生じた状況について、簡単に説明させていただきたい。1.「旅費」:フランスへ調査に出かける際に、航空券を旅行代理店に手配してもらったところ、「日程の変更はできない」という条件付きの安いチケットを手配してくださった。そのため、当初予定していた金額よりも「旅費」が少なくて済み、若干の残高が生じた。2.「人件費・謝金」:実支出額が0円だった。3.「その他」:実支出額が0円だった。以上のような状況であったため、「物品費」を、予定を少し上回る金額使用した。しかし、最終的には、全体を総合計して若干の残高が生じた。 次に、翌年度以降の使用計画については、次のような今後の主な研究の推進方策において必要となる経費のために使用していきたいと考えている。1.平成24年度:文献資料の調査。平成23年度に行なったフランスにおける調査内容を考察し、学会発表・論文発表する。2.平成25年度:第二回目のフランスにおける調査。その調査内容の考察。文献資料の調査の継続。3.平成26年度:平成25年度の調査・研究内容を考察してまとめ、学会発表・論文発表を行なう。平成23~25年度に調査・研究を進めてきた内容について、全体的に統括し、考察を深めて研究成果をまとめ、学会発表・論文発表を行なう。 以上のような研究の推進方策で、次のような研究費の使用計画を考えている。文献等の購入。観察・記録・分析・考察を進めていくうえで、研究に必要となる物品の購入。論文執筆の過程で英文等の要旨の執筆が必要な場合、誰かに校閲を依頼した時にはそのための謝金が必要となる。国内の学会の大会や研究会への参加に必要となる旅費。フランスへの出張のための旅費。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、主に次のような研究費の使用計画を予定している。1.平成23年度に行なったフランスにおける調査内容をもとに、分析・考察・まとめを行なわなければならないので、そのために必要な物品を購入する。2.特に平成23年度は、文献資料の調査が不十分だったため、必要な文献資料を購入・入手して読む。3.上記の1.と2.をもとに、学会発表・論文発表を行ないたい。そのため、学会の大会に参加するための「旅費」も必要となる。また、国内で開催される研究会にも参加したいと考えているため、そのための「旅費」も必要になる。4.論文で英文等の要旨の執筆が必要な場合、誰かに校閲をお願いした時には、そのための「謝金」が必要となる。5.学会発表・論文発表を通して残された課題、今後明らかにしなければならない課題について、文献資料をさらに調査し、購入・入手する。6.平成25年度に実施する予定の、第二回目のフランスにおける調査の準備を行なわなければならない。そのために必要な経費も生じると思われる。
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