2011 Fiscal Year Research-status Report
小学校「理科」支援のための、地域ネットワークを活用した総合的な支援体制の構築
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23530981
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
渡辺 博志 福島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80455906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 努 福島大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50431648)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 理科教育 / 理科教材 |
Research Abstract |
本研究では、いわゆる「若者の理科離れ」問題の原因とされている理科が苦手な小学校教諭や教員養成時の問題についての調査を通じて学校における業務上の問題やライフスタイルにおける諸問題の抽出ならびに、それらの課題解決のための支援策・対応方法についての実践的研究を行うことを目的とした。 しかし平成23年度においては東日本大震災の影響、とりわけ原子力発電所事故後の放射能汚染問題により理科の授業どころかそもそも学校生活全体において屋外活動の自粛・制限、理科においても観察・実験・栽培等の教材使用の見送りなどが顕著となり、年度の前半においては学校現場での本研究に係る調査そのもののが実施できなかった。そうした状況下で現場の教師は教科書の内容をこなすのが精一杯ではあったものの一部の熱心な教員の創意・工夫により、代替教材の使用例が少しずつではあるが見られた。その結果理科が苦手な教員との「理科の授業」の展開に大きな開きが見られたことにより本研究の意義を改めて見直すことができ、研究を推進することが可能となった。具体的には、(1)学校現場において本研究に対する理解を得て、協力小学校と教員を県内の複数地域に得ることができた。実際に学校現場で放射能問題に苦慮しつつも、理科の授業に対する取り組みの実践や、具体的支援の声を得ることができた(2)当初は理科授業で使用する機器・器具類、材料等をそろえたBOXを協力教員に貸与する予定であったが、加えて放射能汚染により実施を見送った個所の代替教材を選定し、授業やその他での利用を依頼した。その結果、教材に対する教師の個人的な興味関心から(ア)授業で使ってみたい、(イ)教室において児童に触れさせたい、(ウ)職員室内で他の教員との理科の授業に関する話題提供として役立った、(エ)毎日持ち歩きたい理科の授業に関して直接的・間接的に有形無形の効果が見られたことを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
福島県は東日本大震災による地震・津波による直接被害に加え、東京電力福島第一原子力発電所の事故で県内全域の小学校も少なからず様々な影響を受けている。 例えば、事故直後は放射能汚染問題により学校現場では屋外活動が自粛され、理科の授業においても屋外での観察や栽培などがほとんどできないばかりか、屋外に生息している動植物の観察・実験も見送られるという最悪の状況に至った。国や各自治体による除染活動だけでなく学校独自でも学校並びに周辺地域の除染活動により現在では空間線量値の低下の傾向がみられるものの、児童やその保護者、教員、地域住民の不安や不信は根強く、いまだに理科の授業での屋外体験活動や、観察・実験が見送られるケースが続き、新学習指導要領の下、理科の字数が増加したにも関わらず、観察・実験・栽培等の活動が見送られるケースが続いている。 こうした事情により、協力校・協力教員においても当初計画通りの協力が得ることが困難を極めたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、福島県の小学校の現場では依然として原発事故による放射能汚染問題が理科の授業だけでなく学校生活全体に大きな影響を残したままである。また本県では小学校から放射線教育の取り組みがすでに検討されており、新学習指導要領で理科の時数が増加した中での現状は、「理科が苦手な教員」にとっては大変な重荷となっていることは想像に難くない。 そこで今後の研究推進の方策として、(1)理科が苦手な教員の原因となっているライフスタイル、学校での諸業務、理科への興味・感心、知識等に関する調査から「理科が苦手」の定義を従来より明確にすると同時に、(2)放射線教育への支援、放射能汚染による使用を見合わせている動植物等の教材の代替物の選定と現場の支援等に関しての調査も併せて実施することで、今現在、学校現場で課題となっている諸問題への取り組みとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記のとおり、理科が苦手な協力教員に関して(1)調査旅費、(2)教材の貸与、に加えて(3)放射能汚染により使用を見送った教材の代替物の開発費、(4)放射線教育に関する教材費等にあてる予定である。
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