2011 Fiscal Year Research-status Report
ユニバーサル段階におけるヨーロッパの学部専門教育の変容
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23530990
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
吉永 契一郎 東京農工大学, 大学教育センター, 准教授 (70313492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀井 祐介 金沢大学, 大学教育開発・支援センター, 教授 (30304041)
中島 英博 名城大学, 大学・学校づくり研究科, 准教授 (20345862)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ボローニャ・プロセス / ヨーロッパ |
Research Abstract |
本年度は、ボローニャ・プロセス以降の大学教育の変化を知るために、ヨーロッパ6大学の物理学科、ヨーロッパ5大学の経営学科、デンマーク4大学の歴史学科を現地調査した。ボローニャ以降、物理学科は、4年制を学士3年、修士2年に変更した。単位互換は、レベルの等しい大学間とのみであり、修士で大学を変わることは少ない。物理学科は、伝統的に半数以下の卒業率で、卒業生の質を保ってきたが、近年は、カリキュラムを多様化して、卒業率を上げるよう努力している。経営学科は、4年制を学士3年、修士1年に変更した。ここでも、アカデミックな大学と職業系の大学に交流はないが、修士レベルで大学を変わる学生は増加した。認証評価への対応としては、汎用スキルを育成する科目がカリキュラムに加えられたり、セメスター制度を変更して学習の集中度を高めたことが、教育上の変化である。歴史学科は、5年制を学士3年、修士2年に変更した。ただし、学士号は社会的に認知されていない。ボローニャ以降、認証対応もあり、歴史学でも職業能力を意識するようになってきている。以上のことから、学士と修士の2サイクルの確立、ECTSの導入、質の保証というボローニャ・プロセスの大きな柱は、調査したどこの国でも、対応が完了したと言える。しかしながら、修士からの大学移動、単位互換の対象大学、職業能力の育成やアウトカム評価に基づいた質の保証は、分野によって差異が見られる。ボローニャ・プロセスが、ヨーロッパの大学教育に影響を与えていることは間違いないが、大学教育は、あくまで各国の高等教育政策や学問分野の特性に左右されているというのが現状である。今後、大衆化の進展が、各国の高等教育政策や学協会の動向にどのような影響を与えているかを引き続き調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
事前に調査計画を立て、訪問先との詳細な打ち合わせを行ったために、短期間の訪問で、多くの情報が得られた。ボローニャ・プロセスについては、国別の進捗状況報告が多い中、学問分野別にカリキュラム・レベルまで調査できたことの意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
物理学については、アカデミックな大学に限定されるため、今後は、理工分野の職業系大学におけるボローニャ対応を調査する。経営学については、学協会の様子を調査する。歴史学については、デンマーク以外の国の状況を調査する予定である。いずれについても、各国の高等教育政策を考慮に入れて、大衆化がどのように大学教育を均質化しているか、また、それでも残る地域差や分野差とはどのようなものであるかを考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
すべてヨーロッパ調査の旅費とする。3名の研究者が、それぞれ1回、1週間程度の滞在を予定している。
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Research Products
(4 results)