2013 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアにおける多文化共生をめざした道徳教育カリキュラムの開発に関する研究
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23530992
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
野平 慎二 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (50243530)
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Keywords | インドネシア / 多文化共生 / 道徳教育 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
1.インドネシアの小学校における新しいカリキュラムの調査: インドネシア・ジャカルタの公立小学校1校と私立小学校1校を訪問し(2013年10月)、道徳教育に関する実態調査と資料収集を行った。また、国家カリキュラムセンターを訪問し、小学校の新しいカリキュラムに関して説明を受けた。 インドネシアでは2012年にカリキュラム改革が実施され、小学校1学年と4学年の授業は、道徳教育を含めすべて総合学習の形で行われることになった。総合学習は、今後すべての学年に拡大される予定である。しかしながら、教科書の作成と配布は遅れており、地方教育委員会や各学校の教員に対する研修も進んでいない。また、17の内容項目に整理されていた道徳授業の内容項目が総合学習のなかにどのように組み入れられるのかについても明確でなく、各学校に委ねられている、という現状ないしは問題点が明らかになった。 2.インドネシアの小学校における多文化共生意識の調査: 上記の2小学校において、教員(各3名)を対象に、多文化共生の意識と行動に関する予備的な聞き取り調査を実施した。調査の内容は、多文化共生の意義、意識や行動、道徳授業のなかでの扱い、等である。この調査結果をもとに、平成26年度は道徳教育カリキュラムの開発、および実施と結果の検討(本調査)を実施する予定である。 3.多文化共生を目指した道徳教育カリキュラムの開発: インドネシアの教育理念である「人格教育」と新しいカリキュラムとの関連、及び新しいカリキュラムのなかに多文化共生に関わる内容がどのような形で含まれているのかについて検討を進めた。さらに、カリキュラム開発の基礎的作業として、多文化共生の理念と学校教育におけるその実践に関して、現地の教育行政関係者や学校教員を対象とする共同研修会を企画・実施し、研究成果の報告を行った(2014年2月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の研究計画として、以下の2点を予定していた。(1)インドネシアにおける多文化共生を目指した道徳教育カリキュラムの開発、(2)インドネシアにおける多文化共生を目指した道徳教育カリキュラムの実践と検証。 先に記したとおり、インドネシアでは2012年に大規模なカリキュラム改革の方針が打ち出され、小学校1学年と4学年で先行実施されている。ただ、そのための国家カリキュラムの整備、地方教育委員会や各学校の教員に対する研修は十分に行われていない。当該学年の教科書の作成や配布も十分ではなく、他学年の教科書や教師用指導書についてはこれから作成されるといった状況にある。このような事情のため、平成25年度中に予定していた、従来の道徳の時間内に行う道徳授業のカリキュラム開発の作業については見直しが必要となり、実践と検証には至らなかった。現在、新しいカリキュラムのなかに多文化共生を目指した道徳教育がどのような形で含まれているのか、それらと「人格教育」とはどのような関連にあるのか、調査と検討を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.インドネシアにおける多文化共生を目指した道徳教育カリキュラムの開発: これまでに明らかになった人格教育の理念および小学校における新しいカリキュラム、そこにおける道徳教育の目標や内容等を踏まえ、インドネシアの小学校における多文化共生概念を目指した道徳教育カリキュラムを開発する。開発にあたっては、インドネシアの研究協力者と連携を取りながら作業を進める。 2.インドネシアにおける多文化共生を目指した道徳教育カリキュラムの実践と検証: 上記により開発したカリキュラムを、インドネシアにおける研究協力校の協力を得て実践する(協力校としては、バリとジャカルタの公立小学校各1校を予定)。実践後は、教師と児童生徒に対して聞き取り調査を実施してその効果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先に記したとおり、インドネシアでは2012年に大規模なカリキュラム改革の方針が打ち出され、小学校1学年と4学年で先行実施されている。ただ、当該学年を含め教科書はまだ十分に作成、配布されておらず、地方教育委員会や各学校の教員に対する研修も十分に行われていない。新しいカリキュラムに関する資料は今後順次公表される見通しであるため、平成25年度に予定していた資料の収集、翻訳、整理に関する経費の使用を次年度に繰り越した。また、多文化共生を目指した道徳教育カリキュラムの実施と検証に関する経費の使用も次年度に繰り越した。 1.文献資料の翻訳と整理: インドネシアにおける新しいカリキュラムに関する資料を収集・翻訳・整理する。これに、平成25年度までに整理が終わっている道徳教育、多文化共生教育に関する資料を加えて、インドネシアの小学校における多文化共生を目指した道徳教育カリキュラムを開発する。 2.訪問調査と効果の検証: 開発した道徳教育カリキュラムをインドネシアの研究協力校で実践する。実践にあたり、現地を訪問して実践の状況調査と事後の検証を行う。事後の検証は、教師と児童生徒に対する聞き取り調査によって行う予定である。また、調査の際には通訳者を依頼する予定である。
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