2012 Fiscal Year Research-status Report
デューイの協働的探究教育理論に根ざした希望の教育学構築に関する研究
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23530999
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
早川 操 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50183562)
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Keywords | ジョン・デューイ / 協働的探究教育 / 協働的知性 / 社会的探究 / 知性的行動的直観 / 想像的経験 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実績については、第一に、平成24年9月に東洋大学で開催された日本デューイ学会第56回研究大会において「デューイの『心理学』に見る実験的知性観の萌芽」と題して、1890年代初期におけるデューイの思想形成段階の実験主義的知性の萌芽的特徴を発表し、『日本デューイ学会紀要』第54号に論文を投稿した。 第二に、同年10月に、ソウル国立大学主催の第13回国際教育研究会議(The 13th International Conference on Education Research)において“The Search for a New Role of Liberal Education in an Age of Globalization: The Challenge of Generic Skills to Liberal Knowledge at Japanese Colleges and Universities”と題する招待講演を行い、Asia Pacific Educational Research (APER)に英語論文を投稿した。 第三に、同年11月に独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センターにおいて「青少年の成長過程における活動体験の意義-デューイの想像的経験論からの示唆-」について講演を行った。 第四に、同年10月には、『日本デューイ学会紀要』第53号に論文「デューイの社会的探究における協働的知性の役割と展開」(査読有:199-209頁)が掲載された。 第五に、同年12月に発行された『教育学研究』第79巻第4号に、リチャード・シュスターマン著、樋口聡、青木孝夫、丸山恭司訳『プラグマティズムと哲学の実践』についての書評が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は本研究を開始してから2年目にあたり、現在までの研究活動に関する達成成果としては、初年度に引き続きデューイの教育理論・公共哲学・社会哲学・ケアリングに関するPhD・EdD論文、図書、論文などを購入した。 今年度は、学会関係者との研究打ち合わせ・意見交換、研究調査、研究セミナーなどへの参加による資料・情報収集、ならびに国内と海外での学会発表(各1回)を行った。これらの研究活動の成果については、国内外の学会誌に論文を投稿し、審査を受けているところである。そのうち、国内の学会誌への投稿論文は掲載可となったため、この研究成果は3年目に学会誌に掲載される予定である。国際学会誌については、現在審査中である。 今年度の学会発表では、デューイの初期思想における実験的知性の特徴に関する研究に取り組み、成熟期や後年の彼の実験的知性・協働的知性観の萌芽的特徴を見出すことができた。その成果の発表は、東洋大学で開催された「日本デューイ学会第55回大会」で行った。 また、韓国ソウル国立大学主催の国際教育研究学会において、わが国の大学教育で近年注目されている転移可能な総合的知識・スキルの研究との関連で、デューイの反省的思考や探究理論、D.ショーンの反省的実践、日本の西田幾多郎の行為的直観との関連で考察した研究論文を発表した。 本テーマに関する具体的な研究成果としては、平成23年度に発表し『日本デューイ学会紀要』に投稿した論文が、「デューイの社会的探究における協働的知性の役割と展開」として採択され掲載された。 平成24年度における本研究の目的に関する達成度については、1論文を出版し、2つの研究発表と1つの講演を行い、1つの書評を発表したので、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成25年度には、これまで2年間の研究成果をさらに推進させるために、デューイの実験的知性・協働的知性の観点から、1930年代のアメリカ教育改革や社会改革に対する考察に取り組むとともに、現代教育改革の理論や実践の分析についての研究にも取り組む。さらに、現代教育改革や学校改革、ケアリング教育の理論、解放・希望の教育学に関する特徴について、デューイの探究教育理論における「協働や経験の共有」の観点から検討するとともに、彼の教育理論の現代的意義・示唆・課題点を解明することに取り組む。 また、今後の応用的研究課題として計画している、現代における協働的探究理論パラダイムの構築について、「ケアリングと希望」から得られる示唆や、P.フレイレやH.ジルーらの希望の教育学や越境教育学理論から得られる示唆を追究する。それにより、最終年度における課題である「日本型希望の教育学」理論の基盤構築に取り組む。そのさいには、デューイが指摘した日本文化教育の課題についての提言を踏まえたうえで、日本型希望の教育学理論の基盤を整備したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画の最終年度にあたる平成25年度は、研究に必要なデューイ教育学・哲学関係とケアリング理論・批判的教授学関係図書の追加購入と、希望の教育学関係の図書の新規購入を計画している。 引き続いて、研究目的達成のために国内および海外の学会での発表や参加を実施する予定である。また、関連研究者との研究打合せや意見交換を行い、研究会などにも参加することにより、新たな研究文献・論文、資料、情報を収集するための調査出張旅費などに研究費を使用する予定である。 さらに、研究補助のためのアルバイト費やその他の費用にも研究費を使用する予定である。
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