2012 Fiscal Year Research-status Report
アジア都市国家における「日本型授業研究・校内研修モデル」導入の可能性に関する研究
Project/Area Number |
23531001
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
久野 弘幸 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30325302)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
サルカルアラニ モハメドレザ 帝京大学, 教育学部, 准教授 (30535696)
田村 知子 中村学園大学, 公私立大学の部局等, 講師 (90435107)
|
Keywords | 授業研究 / 教員研修 / 国際研究者交流・シンガポール・インドネシア / 国際情報交換・シンガポール・インドネシア / 授業分析 / カリキュラムマネジメント / アジア / 教員研修 |
Research Abstract |
本研究は,アジア諸国における「授業研究(Lesson Study)」による授業改善ならびに現職教員研修、とりわけ「校内現職研修」体制の整備に注目し、アジアにおける都市型国家および中核的都市において、①授業研究およびそれを支える校内研修体制がどのように整備されようとしているか、②それらの国・都市において、「個に照らした指導」を特徴にした「日本型授業研究モデル」の有効性の検証を目的としている。 本年度の主な研究成果を研究実施計画書に照らして示せば,次の通りである。 ①本年度焦点化したシンガポールおよびバンドンの二都市で行われている校内研修体制の構築には、日本の授業研究の先例と経験が大きく寄与し、「日本型授業研究」がモデルとして機能していることが明らかになった。(論文・学会発表で報告) ②インドネシア・バンドンにある小学校において「日本型授業研究」の特徴的な研究手法の一つである「授業記録」に基づく授業研究を行い、その効果について検討を行っている。その成果については、来年度の世界授業研究学会で発表する予定である。 今年度は、計3回の研究会を行った。第1回は、9月に東海市教育研究所にて、本年度の研究計画および研究課題の再確認を行った。第2回は、10月に日本教育方法学会に併せて福井大学にて、各自の研究内容の交流及び12月のWALSに関わる打ち合わせを行った。第3回は、2月に名古屋大学にてインドネシアの授業研究について報告と意見交換を行った。 最後に、研究実施に当たって得られた国際研究者交流の実績を記す。本年度の研究によって、アジア諸国の同世代の研究ネットワークを築き,深める手がかりが得られたことは、研究の土台をなす研究の実績である。具体的には、シンガポールEdmund LIM氏とインドネシア教育大学のTatang Sratno氏の名を挙げることができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究及び単独研究の両面から、学会等での発表並びに論文等による成果が出始めていることによる。とりわけ、シンガポールおよびインドネシアとの共同研究に成果が得られたことが大きい。 具体的には、研究代表である久野弘幸は、インドネシア教育大学スラトノ氏との連携により愛知教育大学生活科教育講座紀要『生活科・総合的学習研究』誌に「Lesson Study Development in Asian Countries」を執筆したこと、モハメド・アラニは、福井大学での教育方法学会において「授業逐語記録にもとづく比較授業分析 -シンガポールの授業と比較して日本の授業の特徴をさぐる-」を発表したこと、そして、田村知子は九州教育経営学会紀要において「カリキュラムマネジメントに関するミドルリーダー研修の開発と評価」をそれぞれまとめている。 以上のことから、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の前半については、研究代表者である久野弘幸が英国・ケンブリッジ大学にてアジアおよび世界の授業研究に関わる研究を行うことにより、本研究の中間的整理を行う。また、研究分担者であるモハメド・アラニと田村知子とともに、三人の研究チームで9月にスウェーデン・ヨーテボリで開催される国際授業研究学会(WALS)に参加し、共同研究の発表ならびに個人発表を行う予定である。 これとは別に、6月のシンガポールにおける授業研究シンポジウム、7月の日本カリキュラム学会および10月の日本教育方法学会、九州教育経営学会などに研究成果報告の場を求め、積極的に研究成果の発信を行う。 これらの成果および前年までの研究成果を集約し、12月から2月にかけて研究報告書をまとめ3年間の研究のまとめと課題の抽出を行う予定である。 そのために、本年度についても、3回の研究会を予定しそれぞれの役割分担や執筆項目の確認、予算管理及び研究期間終了後を見越した継続的な研究計画の原案作成を行う予定である。 最後に、長期的な研究推進の方策を述べておきたい。今次の3年間にわたる科学研究費補助金研究により、アジア諸国の大学や教育研究所などと同世代の研究ネットワークを築き,深める手がかりを得ることができた。今次の研究期間には、主に2つのアジア授業研究拠点都市とを結ぶことには成功したが、今後の研究の推進にあたっては、両国との関係をさらに深化しさせることはもちろん、東アジアの授業研究拠点都市(中国・上海、韓国・全州)との関係づくりを通して、アジアに生起している授業研究拠点都市における研究動向を明らかにすることが今後の研究課題として浮かび上がってきている。最終年次には、中長期的な研究の方策を立案することも課題としている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用については、最終年次であることを踏まえ、おおよそ以下のように計画している。なお、予定していた一件の調査旅行が日程変更により実施困難になり、次年度に実施することにしたため一部残額が生じた。 ①日本カリキュラム学会・日本教育方法学会など、国内における研究成果報告(15万円)、②WALS世界大会(スウェーデン・ヨーテボリ大学)における研究成果報告(40万円)、③研究打ち合わせ(15万円)、④研究成果報告書の作成・配布(15万円)、⑤講師招聘による研究会(5万円)、⑥消耗品購入費用(10万円) 昨年度後半から、今次の科学研究費調査による研究成果が順調に得られ始めており、その成果を国内外の学会(世界授業研究学会、日本カリキュラム学会、日本教育方法学会など)において口頭による研究発表を行うとともに、国内外の学術団体における論文投稿(International Journal for Lesson and Learning Studies:WALS, Emerald社, Edcational Research for Policy and Practice:APERA, Springer社)および情報発信(WALSおよび、Singapore Lesson Study Symposium:SLSS)を意識的に行うための活動に優先的に支出する予定である。
|