2011 Fiscal Year Research-status Report
「褒め方・叱り方のタクト」 -教育力育成と信頼の場の創出に関する実証研究
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23531004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 晶子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10231375)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | タクト / 判断力 / パフォーマンス / リーダーシップ / 歴史人類学 |
Research Abstract |
本研究はコミュニケーションにおけるタクトの働きについて、言語・身体・パフォーマンスの観点から理論的に分析するとともに、タクト養成プログラムを開発することを目的としている。今年度の研究成果は以下の通りである。(1)理論研究の実績としては、タクトの働きについてはこれまで、教育者側の教育状況の理解や判断、行動の能力という観点からのみ分析されてきたが、教育者と教育される側との相互作用がなされる「場」の創出という観点から分析することの必要性について、東洋的な思想も取り入れた分析の必要について明らかにした。(2)京都市教育委員会やこども未来館等での意見聴取を通して、災害やリスク対応という状況下でのタクトの働きも視野に入れるためには、リーダーシップ養成という観点を考慮に入れた養成プログラムの開発が必要であるという観点から、フォロワーシップとリーダーシップの双方を取り入れたプログラム開発の可能性について検討した。(3)母親が子どもとのコミュニケーションを日誌形式で記録する「振り返り活動」に注目したタクト養成プログラムを開発するために、幼稚園児および小学生をもつ母親の協力を得て、2011年クリスマスから2012年の新年にかけての期間にその予備調査を実施し、その調査結果を取りまとめた。(4)日独タクト国際比較調査を実施するための調査枠組み、方法、実際についてドイツ側協力者と打ち合わせを行った。また、歴史人類学研究の観点を取り入れた研究報告という形で、本研究の成果を発表しまた討議するための京都での2013年3月の国際ワークショップ開催について企画を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の根幹である、東洋的思想をも取り入れた「場」の創出に関する理論研究およびタクト養成プログラムの開発という目的の達成に向けて、現段階では資料調査と分析、プログラム開発のための予備調査の実施とその分析など、おおむね順調に進展していると評価できる。プログラム開発のためにリーダーシップ養成に関わる既存のプログラムを視野に入れた検討および「振り返り」活動を通したプログラム開発の軸の設定を行ったことなど、十分な進展をみたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究では、「場」の創出という観点から、東洋的なわざの修練にみる子育てや教育の知恵について資料を収集し分析するほか、京都学派の「場」の思想を基盤とした経験の意義について分析し、プログラム開発につなげる。事例研究では、「振り返り」活動を通した自己分析のまなざしの形成という観点から日独国際比較によるタクトの本調査を実施する。さらに、米国・国際戦略研究所におけるリーダーシップ養成プログラムに関する研究成果について資料収集および意見聴取する(2012年4月末から5月)ほか、2012年3月には歴史人類学的観点を入れての国際ワークショップを京都で開催することにしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費としては、東洋思想にもとづいた子育てや京都学派の「場」や「純粋経験」に関する文献資料の購入、旅費としては、国内での子育て支援活動に関する意見聴取、米国およびドイツでのリーダーシップ養成プログラムに関する資料収集および意見聴取、本研究成果の一部発表(2012年4月末から5月)、2013年3月開催予定の京都での国際ワークショップの際の招聘、そのほかとしては、「振り返り活動」調査、聞き取り調査のデータ整理、テープ起こしなど補助業務への謝金、国際ワークショップ開催のための会議場代、会議費を予定している。
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