2011 Fiscal Year Research-status Report
新教育運動期における学校の「アジール」をめぐる教師の技法に関する比較史的研究
Project/Area Number |
23531005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山名 淳 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80240050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 健市郎 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50229887)
山崎 洋子 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (40311823)
渡邊 隆信 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (30294268)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 新教育 / アジール / 学校空間 / 教師の技法 / 教育史 |
Research Abstract |
本共同研究は、新教育運動期において、児童・生徒の「本性」に基づいて彼らの自己活動の余地を保持するために、学校における「アジール」的な時空間(教師の明確な計画性を逃れる曖昧な時空間)の重要性が認識され始めたことに注目し、新教育的な学校における「アジール」との関わりにおける教師の技法を、新教育運動の影響が最も鮮明にみられたイギリス、ドイツ、アメリカ合衆国を考察対象として比較史的に究明することを目的としている。 平成23年度は、6月12日、京都大学において、本研究の目的、方法、研究計画を再確認するための第1回研究会を催した。第2回の研究会は、8月18日、武庫川女子大学において開催した。研究メンバーは、この時期までに、各自の分担に応じて、関連テーマについて先行研究の整理および批判的吟味を行うと同時に、それを踏まえたうえで研究計画を作成した。その後、夏期休暇から秋にかけて、国内外の文書館や研究機関を訪れて、史料の調査・収集・整理を実施した。平成24年1月9日、第3回目の研究会を京都大学において開催し、夏から秋にかけて行った資料の収集および検討をもとにして、各自の具体的な研究対象となる学校を選定し、そのうえで今後の研究に関する見通しの詳細を提示した。同年3月19日、第4回研究会を兵庫教育大学サテライトキャンパスにおいて催し、平成24年度以降の研究活動に向けて、平成23年度の成果を総括し、次年度以降のスケジュールについて話し合った。 なお、理論的基盤については、平成23年度にすでに基本的な考察を行い、研究代表者である山名淳が、教育思想史学会シンポジウムでその報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、平成23年度、計4回の研究会を開催し、研究代表者および各研究分担者が計画していた研究活動をおおむね遂行することができた。平成23年度は、研究分担者である宮本健市郎(関西学院大学)が、アメリカ合衆国において海外渡航調査を行った。「アジール」と教育に関する基礎理論的な考察については、当初の計画以上に進展させることができた。研究代表者である山名淳(京都大学)が中心となって、歴史学、文化人類学、社会学といった領域で検討されている「アジール」論を総合的に検討し、従来の研究手法を改善する方途を探り、それによって、教育史研究の領域に「アジール」論を本格的に導入する可能性について吟味した。その成果は、上述のとおり、教育思想史学会大会シンポジウムで公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の調査・分析は、主として(1)史料の整理および分析、(2)アンケートおよびインタビュー調査の分析、(3)解釈のための理論基盤の検討からなる(ただし、(2)は必要に応じて行う)。(1)については、「研究目的」に掲げた史料カテゴリーおよび観点に即して読解を進める。(2)については、アンケート結果の分析、インタビューのテープ起こしおよびその解釈等をとおして、当該の学校において今日教師たちがどのように「アジール」と子どもの間を取り結んでいるのかを解明したい。(3)については、広く歴史学(阿部謹也、網野善彦、夏目琢史)、文化人類学(中沢新一)、社会学(奥井智之)といった多くの領域で検討されている「アジール」論を総合的に検討し、本研究の代表者である山名(2000)の研究手法を改善する方途を探り、それによって、教育史研究の領域に「アジール」論を本格的に導入する可能性について吟味する。研究成果については、すでに1年目に1回(教育思想史学会における山名報告)を行った。2年目もしくは3年目に1回もしくは2回の報告を行い、最終年度に報告書を公にする また、本研究は、日本以外の国々を考察対象としているために、その遂行に当たっては、対象国において教育史研究に携わる専門家との提携が重要な意味を帯びてくる。本研究メンバーには、各対象国で情報交換を行う研究協力者がおり、各人が適宜研究上の助言を受けることが可能な状態にある。P.カニングハム(イギリス・ケンブリッジ大学)、H.ケムニッツ(ドイツ・ブラウンシュヴァイク工科大学)、K.-P.ホルン(ドイツ・テュービンゲン大学)、W.J.リーセ(アメリカ・ウィスコンシン大学)等である。こうした海外の研究協力者との連携を引き続き図り、適宜、研究上の情報交換を行い、また研究上の助言を受ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、前年度に収集した主要な史料の分析に本格的に取り組む。史料収集作業の一部は、引き続き、平成24年度にも行われることになる。定期的な研究会の開催によって、各メンバーによる研究の進捗状況および暫定的な成果を報告し、その内容について検討する。平成24年度には、夏期休暇前(7月)、秋(11月)、年度末(2月)の3回、研究会を開催する。メンバー全員が所属する学会(日本教育学会、教育史学会、教育思想史学会、教育哲学会)の年次大会が開催される機会を活用して、各自の情報交換を行うこととしたい。なお、平成24年度には、山崎洋子(武庫川女子大学)が海外渡航調査(イギリス)を行う予定である。さらに、山名淳(京都大学)は、昨年度に行うはずであった海外渡航調査(ドイツ)が訪問先の都合で実施することができなかったので、同じく今年度に行うことにする。
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Research Products
(9 results)