2011 Fiscal Year Research-status Report
日本の大学拡張・大学開放発展史~地域連携再構築のための基礎的研究~
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23531011
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山本 珠美 香川大学, 生涯学習教育研究センター, 准教授 (60380200)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 大学拡張 / 大学開放 / 公開講座 / 大学博物館 / 地域連携 |
Research Abstract |
平成23年度は、戦前における高等教育機関の拡張事業の全体像を捉えることを計画していた。はじめに、平成22年度までの研究で明らかとなっていた部分も含め、明治期から最近までの約130年間の大学拡張史について通史的記述を試みた。その構成は次のとおりである。I明治期((1)通俗講談会、(2)講義録と校外生制度、(3)学術資料の公開、(4)図書館の公開)、II大正期~昭和戦前期((1)通俗教育調査委員会、(2)文部省主催成人教育講座、(3)地方都市における専門学校の取組、(4)セツルメントと自由大学運動)、III戦後((1)大学開放の法制化、(2)生涯学習機関としての大学)(以上、大阪教育大学)。さらに、これとは別に、近年増えつつある子どもを対象とする大学開放事業について、1990年代の理科離れに原因があることを明らかにした(以上、大阪教育大学、近日刊)。 上で明らかにできなかったのは次の2点である。いずれも従来の大学拡張・大学開放史研究において盲点となっていた点であるが、一つ目は植民地における高等教育機関の取組である。本年は台湾の高等教育機関の大学拡張事業に関する資料の収集に取り組んだ。二点目は戦前における学生主体の大学拡張の取組である。旧制大学、高校、専門学校の学生活動に関する資料について、校友会雑誌などを手がかりに収集しはじめた。 また、研究代表者は勤務大学において、学生主体による大学開放の実践活動を試みている(大学博物館ミュージアム・レクチャー、および、島嶼部でのアウトリーチ活動)。これらの実践報告を紀要論文としてまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明治期から戦前期までの大学拡張については、平成22年度までの研究の蓄積もあり、「何が不足しているのか」が明確である。明らかになっていない部分の穴埋めをしていけば良いことから、おおむね順調に進展していると言って良いと思われる。ただし、戦前の高等教育機関は大学だけでも全国に49校存在し、どこに焦点をあてるかは課題である。 一方、本研究は単に歴史的な事実を明らかにするのみならず、現代の実践へとつなげることを企図している。研究計画上、平成23年度は戦前の歴史研究としていたが、実践活動については随時まとめることとしている。その部分については前倒しで実施できていると考えて良いだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は引き続き戦前における高等教育機関の拡張事業の全体像を捉えることが目的となる。とりわけ、戦前における学生主体の大学拡張について、旧制大学、高校、専門学校の学生活動を校友会雑誌などを手がかりとして明らかとし、学術論文にまとめたい。また、年度末には中間調査報告書『戦前における高等教育機関の拡張事業』(仮題)を刊行する予定である。 平成25年度、平成26年度には、戦後における大学開放の展開を分析することを計画している。具体的には、公開講座の広がり、大学改革と大学開放、生涯学習系センターの成立、大学開放をめぐる言説(新聞記事等)等である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、所属先の本務多忙により、夏期に予定していた出張を十分遂行することができなかったため、次年度に繰り越す研究費が発生した。 平成24年度は平成23年度分に実施できなかった分を含めて出張を行い、特に地方都市における高等教育機関の学生主体の拡張事業の実態について、資料収集し、実態を明らかにしたい。
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