2012 Fiscal Year Research-status Report
ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの「教養」理念形成と「愛の書簡」
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23531012
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
櫻井 佳樹 香川大学, 教育学部, 教授 (80187096)
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Keywords | 教養 / フンボルト / 書簡 / ロマンティック・ラブ / 近代家族 |
Research Abstract |
「ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの『教養』理念形成と『愛の書簡』に関する研究」は、フンボルトが妻カロリーネと交わした膨大な「愛の書簡」を研究対象として、その社会史的・思想史的意味の解明、ならびに彼の日常的な「愛」の実践と思想が、彼の「教養」理念形成にいかなる影響を与えているかを解明しようとするものである。 平成24年度は、まず当時における「書簡」メディアの果たした役割について明らかにした。その成果を中国四国教育学会第64回大会において発表すると共に、「ヴィルヘルム・フォン・フンボルトとドイツ書簡文化」として中国四国教育学会編『教育学研究』(CD-ROM版)第58巻に掲載した(平成25年3月発行)。「書簡の世紀」と言われる18世紀ドイツにおいて、書簡というメディアを使って、自己の感性を洗練させ、自らの徳を育てようとするブント(育徳同盟)にフンボルトとカロリーネは参加しながら互いの関係を親密なものにしていったこと。また書簡は、他者が学びうる学習教材としての価値があるとみなされ、そのため内面や秘密を打ち明けるという苦悩に直面せざるを得なかったことなどが明らかとなった。したがって、ドイツ書簡文化とは、人々の内面性への関心が高まることによって、親密な書簡を大切に保管する一方、それを公開するという啓蒙主義の矛盾する時代の産物だと言えることが明らかになった。 また両者の相互関係としての「恋愛」がいかに「結婚」へと至ったのか、「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」「恋愛結婚」「近代家族」等の成立の事例として考察することはこれまでの先行研究で指摘されなかった大変独創的なテーマである。現在その点の解明を試みているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の課題は、まず平成23年度で着手した研究を継続し、成果としてまとめることであった。すなわち18世紀における「書簡」メディアの果たした役割、フンボルトとカロリーネの往復書簡の特徴について成果をまとめることであったが、それらについては中国四国教育学会第64回大会(平成24年11月11日 於:山口大学)にて発表したこと。ならびに発表内容を一部修正・加筆ののち、中国四国教育学会『教育学研究』(CD-ROM版)第58巻に掲載した。 またフンボルトとカロリーネの二人の関係に焦点を当て、愛についての理論と実践がいかにフンボルトの「教養」理念形成に寄与したかを解明することも課題であった。この点については、両者の相互関係としての「恋愛」がいかに「結婚」へと至ったのか、「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」「恋愛結婚」「近代家族」等の成立の事例として考察することはこれまでの先行研究で指摘されなかった大変独創的なテーマであることが研究の過程で明らかになった。したがって、二人の「愛」や交際の仕方という愛の理論と実践が思想史的・社会史的にどのような意味を持つのか解明するためには、まず「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」「恋愛結婚」「近代家族」に関する先行研究を押さえることは欠かすことのできない作業である。幾分遠回りなアプローチではあるが、現在その点の解明を試みているところである。以上総合して、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度で着手した研究テーマについては、引き続き研究を進める。フンボルトとカロリーネの二人の関係に焦点を当て、愛についての理論と実践がいかにフンボルトの「教養」理念形成に寄与したかを解明する。この点については、両者の相互関係としての「恋愛」がいかに「結婚」へと至ったのか、「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」「恋愛結婚」「近代家族」等の成立の事例として考察する。その成果をまとめ、教育哲学会(神戸親和大学)で発表する。また、フンボルト夫妻の書簡とフンボルトの初期著作の比較研究をさらに進め、中国四国教育学会(高知大学)で発表する。さらにドイツ教育学会「陶冶と教育の哲学委員会」にて、「ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの『教養』理念形成における社交性の問題」(仮)について発表する予定である。 以上を通して、最終年度としての成果報告書をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(次年度の研究費の使用計画) 1.「フンボルト『教養』理念形成」「『愛』『書簡』の社会史研究」関係図書購入 2.資料収集並びに関連学会(研究会)での研究成果発表のための旅費 3.成果報告書印刷費
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Research Products
(3 results)