2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23531014
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
梶原 郁郎 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30390016)
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Keywords | デューイ / 教育課程 / 認識形成 / 仕事と科学 |
Research Abstract |
本研究の目的はデューイの教育課程論と民主主義社会論との関係究明という課題を前に、デューイの教育課程を、(1)科学的認識形成を含む環境制御能力形成論として、(2)行為に連動可能な社会認識形成論として、(3)他者形成の段階的過程として分析することである。これらの課題の意義は、デューイの教育課程を認識形成の水準で明らかにする点にある。 課題(2)を平成24年度の課題として交付申請書に記載したが、この課題には23年度に取り組んだので、24年度は次の課題に取り組み成果を得た。①「戦後生活単元学習批判の批判と継承-J.デューイの自然科学教育論を踏まえて-」、②学会発表「教育過程分析の基礎条件-内容と方法に関するJ.デューイの二元論の検討を踏まえて-」。論文①では、デューイの教育課程における仕事と科学との関係を、認識形成過程の水準で明らかにする作業を踏まえて、戦後生活単元学習批判を批判し、さらに戦後生活単元学習批判における科学教育の内容と方法についてはデューイの教育課程に継承される必要性を指摘した。その継承は、デューイの科学教育論を補完するもので、デューイの意図する環境制御能力形成のために必要な作業である。 次に学会発表②では、デューイの教育課程論と民主主義社会論との関係究明を認識形成過程の水準で進めていくための必要条件を、内容と方法に関するデューイの二元論批判を踏まえて、提出した。その条件は、教育課程の分析者がその教育課程の内容を研究して、その研究の中からデューイの教育方法を整理することである。この単純で困難な作業がデューイの教育課程研究でなされていない現状についても、本発表は、デューイの教育課程に関する先行研究を考察して報告した。その必要条件を満たさない限り、上述の三つの課題に取り組みえない点で、本研究の課題である「デューイの教育課程論の認識論的研究」の不可欠な作業となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デューイの教育課程論と民主主義社会論との関係究明という課題を前に、デューイの教育課程を、(1)科学的認識形成を含む環境制御能力形成論として、(2)行為に連動可能な社会認識形成論として、(3)他者形成の段階的過程として分析することが本研究の課題である。課題(2)を平成24年度の課題として交付申請書に記載したが、その検討は23年度に取り組んだので、24年度は次の課題に取り組んだ。 課題(1)に関しては、論文「戦後生活単元学習批判の批判と継承-J.デューイの自然科学教育論を踏まえて-」において取り組み、次の点を検討した。デューイの教育課程において仕事から科学への知的移行はどのように行われうるのか、科学的認識形成を保障する上でデューイの科学教育論はどこに問題点があるか。これらの作業を、戦後生活単元学習批判を批判的に検討することによって行った。 また上述の三つの課題は、どのような知識でデューイの教育課程は構成されていたのかという観点ではなく、どのような認識形成を保障しうるのかという観点からデューイの教育課程を分析することを要求するものである。その分析のための分析者の要件を、「教育過程分析の基礎条件-内容と方法に関するJ.デューイの二元論の検討を踏まえて-」(学会発表)では、内容と方法に関するデューイの二元論批判を踏まえて、提出した。この作業は、上述の三つの課題に取り組む上で必要とされる分析者の要件を明らかにしたものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的はデューイの教育課程論と民主主義社会論との関係究明という課題を前に、デューイの教育課程を、(1)科学的認識形成を含む環境制御能力形成論として、(2)行為に連動可能な社会認識形成論として、(3)他者形成の段階的過程として分析することである。この課題の検討を、本年度の成果に続けてさらに次のように進めていきたい。第一に、(2)の課題を論文として纏めて、第二に、(3)の課題を論文として纏めて、これらの作業が、上述の関係究明においてどのような点で必要となるのか明示する。以上の作業を通して、デューイの教育課程論と民主主義社会論との関係の全体像を、認識形成過程の水準で素描したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上の今後の課題を推進していくために、次年度の研究費の使用を次のように計画している。(1)図書等物品費80千円、(2)旅費310千円、(3)人件費・謝金10千円、(4)文献複写等その他100千円。旅費は学会発表(東京)と資料収集とに使用する。論文の検討会も兼ねて資料収集は、デューイ全集をはじめデューイ関連の文献も豊富に所蔵されている東北大学図書館で行う。論文の検討会では原稿を発表して、申請者の大学院時代から指導いただいている教員から指導を受け、有益な知見収集に努める。この他に必要な図書・資料については適宜複写依頼等で収集して、本研究の課題に取り組む。
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