2011 Fiscal Year Research-status Report
後期中等教育段階の学習成果の評価と認定の方法に関する比較研究
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23531016
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
矢野 裕俊 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (80182393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 敦 大阪市立大学, 付置研究所, 教授 (60335776)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 学習成果の評価 / 後期中等教育 / 中等教育修了資格 |
Research Abstract |
この研究は、後期中等教育段階における生徒の学習成果の評価と認定の方法について、近年の動向の国際比較を試みつつ、わが国における今後のあり方を探るための知見を得ることを目的とするものであり、知識基盤社会において後期中等教育の修了段階で学習成果をどのように評価し認定するべきなのかを明らかにすることは、学校教育から職業への移行のより適切なあり方を考えるうえできわめて重要な意義をもっている。 本年度は、研究会を3回開催し、スウェーデンやフランスにおける後期中等教育修了の認定方法について研究協力者に発表してもらい、国際バカロレアの現状について発表した。また、香港、韓国、フィンランド、イギリスを訪問し、それぞれの国(地域)における現在の学校教育の重点および学習成果の評価にかかわる情報を収集した。それにより、諸外国における後期中等教育段階の学習成果の認定がいずれの国(地域)においても重要な教育改革の課題として意識されていることがわかった。 また、アメリカや日本など、国際バカロレアを導入することで、グローバル化したこれからの時代において後期中等教育の質保証の新たな枠組みをつくろうとする国も表れており、大学入学資格としての国際バカロレアの普及とそれに対応したカリキュラムの導入実施が広く国際的に進んでいる。国際バカロレアによって中等教育カリキュラムを実現し、それにより国際標準となる学習成果の認定や評価のあり方を考えようとする傾向は今後もいっそう強まるものと予想される。国際バカロレアは、その実態も含めて今後いっそうの研究を必要とする問題領域であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
後期中等教育における生徒の学習成果の評価と認定の方法について、今後のあり方を探るための知見を実証的データに基づいて得るために、本年度は、(1)わが国の後期中等教育における学習成果の評価・認定の方法の歴史的・実態的把握と、(2)諸外国・地域の後期中等教育における学習成果の評価・認定の動向把握を行うこととした。(1)については、主として文献資料の収集と整理を進め、高等学校における学修をめぐる、およそ過去30年の政策や措置の推移について概観するとともに、次年度以降のための、より本格的な資料検討のための準備を行うことができた。(2)については、外国事情に触れた中等教育・青年期教育関係の文献を収集するとともに、香港、韓国、フィンランド、イギリスにおける子ども・青少年の学習支援の状況を実際に訪問し、現地の研究者へのインタビューを実施するなどにより、今後さらに研究を深めるためのつながりを築くことができた。さらに研究協力者を含めた研究会を3度にわたり開催し、スウェーデン、フランスなどにおける中等教育修了の認定制度の実際とその問題点について発表をすることにより、本研究推進のための共通理解を広げることができた。以上の理由により、「おおむね順調に進展している」と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に続き、(1)わが国の後期中等教育における学習成果の評価・認定の方法の歴史的・実態的把握と、(2)諸外国・地域の後期中等教育における学習成果の評価・認定の動向把握の二つの調査を進める。 (1)の国内調査については、文献資料調査を続けながら、高等学校、大学等の教育機関の訪問調査により大きな重点を置き、主として関係者からの聞き取りにより、生徒の学習成果の評価と認定をめぐって現在の後期中等教育が抱える問題および 関係者の問題認識を調査する。この担当は主として研究代表者、研究分担者と研究協力者が行う。 (2)の国外・地域調査では、研究代表者、連携研究者を中心に文献収集により諸外国での学習成果の評価・認定の方法について状況把握を進めるとともに、試験による学習成果の評価・認定制度を維持してきた2つないし3つの国・地域を訪問し、それらにおいて伝統的に行われてきた資格主義的な方法による学習成果の評価・認定をめぐって当該国でどのような問題が指摘され、改革が議論されているのかを把握する。訪問する国・地域においては、カリキュラムを管轄する行政当局、試験実施団体、後期中等教育機関(各 1,2 校)を 訪問し、関係者からの聞き取りにより調査目的に係るデータ収集を行う。 以上2つの研究調査を継続実施することにより、次年度後半および次次年度にかけて諸外国・地域において、OECDの認識にもあるように、グローバル化した時代におけるベースライン資格としての後期中等教育修了がどのような内実をもった学習成果としてとらえられているのか、またわが国の後期中等教育の実情をふまえてどのような学習成果の評価・認定方策が可能なのかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の費目別使用計画は次のとおりとする。 物品費 150,000円 旅費 570,000円 人件費・謝金 410,000円 その他 70,000円 計1,200,000円とする。 このうち研究代表者に1,100,000円、研究分担者に100,000円を配分する。物品費は、訪問調査などの際に使用するパッド型パソコンの購入に充当し、旅費は、国内・国外の訪問調査、研究会出席のための交通費に使用する。また、人件費・謝金は、訪問調査の補助、資料収集の補助、収集資料の整理、資料の分析・検討の補助などのために使用する。「その他」では資料の複写費、郵送費、研究会開催のための会議費として、70,000円を使用する。
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