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2011 Fiscal Year Research-status Report

フランス第三共和制期の政教分離(ライシテ)とモラルサイエンス問題

Research Project

Project/Area Number 23531019
Research InstitutionShokei Gakuin College

Principal Investigator

太田 健児  尚絅学院大学, 総合人間科学部, 教授 (00331281)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywordsライシテ / モラルサイエンス / ジュール・フェリー / フェリックス・ペコ / フェルディナン・ビュイッソン / デュルケーム
Research Abstract

本研究は、フランス第三共和制期のライシテの下、脱宗教による世俗的(ライックな)道徳教育論には二つの系譜があるとの仮説を立て、その証明を試みるものである。その際これまでの先行研究の不備を9つ指摘し、その9つの不備を全て埋めていく研究計画を立てた。今年度はその中のいくつかを解決し得たと判断できる。(1)ライシテ実施以降~デュルケーム道徳論までの各種道徳論の存否すら不明という不備に対して、本年度は、それら主要な道徳論を収集・閲覧してその系譜の特徴を解明できた。(2)F.ビュイッソン以外のライシテ推進者であった文官や思想家、J.フェリーやF.ペコの研究の欠落に対しては、フェリーの著作・研究書は現時点で入手できるものは全て入手(現在分析中)、ペコに関しての解読は完了した。(3)ライシテ施行後の1890~デュルケーム活躍期1912頃までの他の道徳論も、その存在を確認、内容分析も終了した。(4)哲学・倫理学分野へのデュルケームの位置づけ問題は、彼の前期道徳論に関する限りはその位置づけが全く可能且つ妥当である事が証明できた。これらを踏まえて今年度の結論として、ライックな道徳論には二つの系譜が事実存在し、前者は自己修養論的な教養論でカント哲学を論拠とするもの、後者はデュルケームに代表される神の存在まで研究対象とし社会学的発想や方法論を駆使したモラルサイエンスであり、方法論的無信仰の立場を採る事が確認された。特に後者の道徳論は、当時としてはきわめて斬新であった社会学の発想と方法論とにより、道徳的である状態をあるがままに記述して、宗教という衣の奥にある「モラルリアリティ(道徳的実在)」を命題化し全く新しい道徳理論を構築せんとしていた。まさにこの研究手法と研究結果とは当時最先端のモラルサイエンスと呼ぶに相応しく、これが中期以降理論体系化されていくが、その手前の論脈が解明された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

(理由)当該科研費申請時の仮説の本年度分が全て証明された事による。つまりフランス第三共和制期のライシテの下、脱宗教による世俗的(ライックな)道徳教育論には二つの系譜があり、前者は自己修養論的な思想を教材とする教養論でカント哲学を論拠とするものである。後者はデュルケームに代表される神の存在まで研究対象とし社会学的発想や方法論を駆使したモラルサイエンスであり、方法論的無信仰の立場を採る。前者の各文献の解読の結果、カントを超える理論体系をもつ道徳論はなく、カントの透徹性にはおよそ及ばない亜流の道徳論が殆どであった。後者のデュルケームの道徳論は、当時としてはきわめて斬新であった社会学の発想と方法論とにより、道徳的である状態をあるがままに記述して、宗教という衣の奥にある「モラルリアリティ(道徳的実在)」を命題化たし全く新しい道徳理論であり、哲学・倫理学の系譜に位置づくものであった。まさにこの研究手法と研究結果とは当時最先端のモラルサイエンスと呼ぶに相応しく、これが中期以降理論体系化されていくが、その手前の論脈が全て解明された。 以上が理由である。

Strategy for Future Research Activity

(今後の推進方策) 申請時の研究計画どおり平成24年度はモラルサイエンスの理論形成とその完成とを解明していく。具体的にはデュルケームの中期道徳論~後期道徳論の文献解読による全容解明である。これまで社会学分野の学説史でしか扱われなかった「集合表象論」「社会実在論」『宗教生活の原初形態』における「儀礼論」、「トーテミズム」、「カテゴリー論」などを全て本研究の仮説である「ライックな道徳論」=「モラルサイエンス」の理論体系の一環として定義し直し、再構成を図る。これによってフランス第三共和制期の道徳教育論の全貌も明らかになり、教育史、思想史、社会学史の全面的書き換えが可能になると予想している。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

上記の推進計画に従い次の文献購入を計画している。1.デュルケーム存命中及び近接年(1925年頃まで)のデュルケームやデュルケミアン研究の文献収集。2.この時期の思想潮流一般が窺い知る事ができる文献(思想系・社会学系の学会誌・雑誌及びこれらの対する研究文献)の収集、所蔵図書館での閲覧・コピー。3.英訳版デュルケーム著作集の購入。4.これまで収集できなかったデュルケームの研究書の収集・閲覧など。 以上が使用計画である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2011

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results)

  • [Journal Article] E.デュルケームとの対話~古い神々は死に、他の神々はいまだ生まれていない~2011

    • Author(s)
      太田健児
    • Journal Title

      『社会学雑誌』神戸大学社会学研究会

      Volume: 第27・28号 Pages: 28-44

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] フランス第三共和制期世俗的道徳教育論の諸相VI~デュルケーム中期道徳教育論IV:『道徳教育論』その2~2011

    • Author(s)
      太田健児
    • Journal Title

      尚絅学院大学紀要

      Volume: 第61・62合併号 Pages: 75-86

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2013-07-10  

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