2013 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における少年雑誌の普及と少年読者意識形成に関する歴史的研究
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23531032
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Research Institution | Kyoei University |
Principal Investigator |
田中 卓也 共栄大学, 教育学部, 准教授 (90435040)
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Keywords | 教育史 / 児童文学 / 読者意識 / 読者共同体 / 少年雑誌 / 出版社 / 仲間 / 児童の心性 |
Research Abstract |
平成23年度、24年度、25年度の研究計画に基づき、考察・検討を試みた。このことから以下のことについて明らかにすることができたと考えている。 第一点として、少年雑誌は、児童雑誌の誕生のなかで登場し、「児童」とは異なり、「少年」という枠組みを形成したことである。わが国では、1888(明治21)年の『少年園』の発刊を皮切りに、『少年世界』(博文館、1894年)、『少年界』(金港堂、1904年)、『荘倶楽部』(大日本雄弁会講談社、1914年)と相次いで市場に登場し、子どもらに愛読されることになった。これらの雑誌は、それまでに出されていた「児童雑誌」とは区別され、「少年」という新たな概念が形成されたことに起因する。このときの「少年」はおよそ、小学校低学年から高等学校生ごろまでをさすものであることもわかってきた。 第二点は、少年雑誌における誌面上の想像上の「読者共同体」が存在していたことである。小学校を中心にして雑誌を購読する読者は増加した。このことはわが国の教育制度の確立された「学制」からはじまる近代学校教育制度の発展と関連づけられるものであった。彼らは学校教育を受け、読み書きを基礎に学習経験を積むことになり、花茎事情が良好で、成績優秀であれば、中学校、高等学校への進学の道が広がった。しかしながら家計が苦境であると、進学の道は絶たれることとなり、高等小学校あるいは実業学校、実業補習学校への進路選択が待ち受けていた。 第三点は、読者共同体の特徴の変化があらわれたことである、目には見えない読者の共同体は、戦後になるとさまざまな形に変貌していくこととなる。戦前に発刊された雑誌で戦後復刊を遂げた『幼年クラブ』、『小学一年生』、『小学六年生』(小学館)は読者投稿欄を設定し続けたが、読者等は「幼ク」、「小一」、「小六」と略語にしてとリあつかい、共同体のメルクマールに発展することになった。
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Research Products
(18 results)