2014 Fiscal Year Research-status Report
カナダにおける「開かれた教育行政」及び「開かれた学校づくり」に関する調査研究
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23531037
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
平田 淳 弘前大学, 教育学部, 准教授 (90361005)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | 開かれた教育行政 / 開かれた学校づくり / 学校協議会 / カナダの教育 / サスカチュワン州 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はまず、前年度に行なったカナダ・サスカチュワン州における「学校地域協議会」調査に関して、その成果のまとめと公表を行なった。学校地域協議会は、従来のように委員を投票で選ぶ(公選委員)だけではなく、委員の構成が数の論理で決められることを避けるため、地域の多様性を反映するために教育委員会が任命する「任命委員」も設けられていた。これは生徒や先住民代表に対する配慮であるが、他方で任命委員が積極的に活動に参加することはあまりなかった。教員もまた、学校地域協議会の活動に積極的には参加していなかった。また委員となるのはほとんどが保護者であり、地域住民の委員としての参加も積極的ではなかった。保護者委員は学校を支援することには積極的ではあったが、学校の教育目標や子どもの学力形成という学校の実体的な面での保護者参加はあまり盛んではないということであった。他方で「エンパワーメント」の視点から「学力」をより広く捉え直したとき、学校協議会の活動は生徒等学校当時者の成長につながる可能性は指摘されている。従来の英語圏での議論では、学校協議会は子どもの学力向上に役立つという仮説が提示されていたが、そうした研究成果は管見の限り見当たらない。しかし学校協議会の効果を狭い意味での学力に限定せず、かならずしもテストの結果としては現れない、たとえば自主自律意識の形成やグループワーク・スキルの開発など、より広い「学力」の視点から学校協議会の効果を捉え直す必要があることが提示された。 この結果を踏まえて当該年度は、サスカチュワン州の東隣に位置するマニトバ州で同様の調査をする計画を立てており、「開かれた学校づくり」の制度概要の把握や調査協力者等も得ていたが、多くのイスラム系過激派組織による国際情勢の不安定化から、当該年度のカナダ訪問は延期し、次年度に行なうこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、前年度の調査結果のまとめと、学会発表や学会誌への投稿を通してその成果の公表を行なった。学会誌は現在編集中であるが、掲載可の返事は得ている。当該年度はサスカチュワン州の東隣に位置するマニトバ州で調査を実施する予定であったが、イスラム教過激派集団による国際情勢の不安定化もあり、当該年度のカナダ訪問は延期し、調査は次年度に延期することとした。その意味では多少の遅れも感じられるが、他方でマニトバ州教育省や州内教育委員会のウェブサイトから、同州の学校教育制度のあり様や、「開かれた教育行政」や「開かれた学校づくり」の制度概要などの把握は既に済んでおり、実際の調査を行なう際にアレンジをしてくれる協力者も州教育省内に得て、コンタクトは維持しており、こちらが要望すれば調査計画の作成と実施はスムーズに行くことになっている。その意味では「おおむね順調に進展している」と言っていいだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究の最終年であるが、昨年度予定していたカナダ・マニトバ州調査をイスラム教過激派集団による国際情勢の不安定化により延期したため、その実施を行なうことから始まる。既に調査許可は得ており、ウィニペグ市とギムリ市で調査を行なう予定である。協力者も既に得ていることから、計画はスムーズに実行に移せるものと思われる。調査を実施したあとは、その成果の学会での発表とその論文化による公表を予定している。論文化と併行して、当該年度調査予定であったカナダ東岸州のニューブランズウィック州フレデリクトン市とセント・ジョン市で学校協議会調査を行なう。同州教育省は以前他の調査で訪問したこともあり、調査計画作成も順調に進むものと思われる。調査の実施は年末あるいは年明けに行なうことを計画している。
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Causes of Carryover |
本研究においては調査協力者の都合もあり、毎年1月から3月の間に約2週間のカナダ現地調査を行なってきた。当該年度も同時期に行なう予定であったが、イスラム教過激派集団による国際情勢の不安定化のため、当該年度の現地調査は翌年度に延期することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に行なう予定であったマニトバ州調査は翌年度に行なう。次年度使用額は渡航費や宿泊費、資料収集費、その他調査費用に充てる計画である。
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