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2012 Fiscal Year Research-status Report

子どもの「問題行動」克服のための表現活動に関する現象学的研究

Research Project

Project/Area Number 23531038
Research InstitutionMiyagi University of Education

Principal Investigator

田端 健人  宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (50344742)

Keywords児童生徒の問題行動 / 悪 / 現象学 / 実存哲学 / 質的研究 / 教育方法 / 学級集団 / 事例研究
Research Abstract

1.小学校現場での子どもの問題行動について、観察や聞き取りにより、事例を収集した。問題行動としては、学級崩壊、盗み、軽いいじめ、靴隠し、さらに、軽度発達障害や虐待による二次障害の子どものいる通常学級などである。また、既に公表されている問題行動の諸事例を収集した。
2.1の諸事例を検討する中で、「問題行動」ないしは「悪」とみなされる行動と、子ども個人や子ども集団の発達過程との密接な連関性が浮かび上がってきた。つまり、「問題行動」は、単純に、発達の病理とか失敗なのではなく、萌芽期においては、発達の一環であり、より高次の「善」を潜在的に孕む前段階の表現なのではないかという関連性である。
3.また、問題行動の容態は多種多様であるが、共通した発生メカニズムがあるのではないかとの仮説に至っている。
4.この発生メカニズムを、現象学や実存哲学を導きとして事例を考察した。このことにより、問題行動の発生メカニズム解明のためには、現象学の影響を受けた実存哲学が有効であることを示した。さらに、臨床心理学、生物学、霊長類研究、ニューロ・サイエンスの科学的知見もまた、この発生メカニズムを考察するために示唆に富んでいることもわかってきた。
5.観察や聞き取りを主とした調査方法について、学術的な検討を行った。具体的には、質的研究について検討し、その一つである現象学的・解釈学的アプローチによる質的研究を、その理論背景である哲学としての現象学や解釈学を吟味し、こうした哲学を実践現場に応用する学術的可能性について考察した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の予定以上の達成度としては、次の点がある。 ①子どもの問題行動やいわゆる「悪」が、病理現象ではなく、発達の一環であり、高次の「善」と不可分であるという知見に達した点。 ②研究方法の再検討として、これまでの質的研究を概観し、現象学的・解釈学的アプローチのこれまでの不十分さを克服する知見を発表した点。 ③当該研究の発表が、教育学と哲学の関連する研究者の一定以上の評価を得た点。 ④ニューロサイエンスを含む諸科学の最新の知見とのクロスオーバーの可能性が出てきた点。
おおむね順調な点としては、以下の点である。 ①参与的観察と聞き取りによる事例収集の数。数量としてはやや少なめではあるが、上質かつ研究目的にふさわしい事例収集ができた。 ②現象学、実存哲学についての知見の進展。 ③研究成果の発表回数。
やや不十分な点としては、よりいっそう多くの事例、特に中学校の事例を参与的に観察なり聞き取りする必要がある。
以上を総合して(2)の評価とした。

Strategy for Future Research Activity

継続して事例収集にあたる。収集する事例は、多様な問題行動であり、それが克服できたりできなかったりするプロセスも含む。またそのプロセスに表現活動がどのように関与しているかも記録する。なお、問題行動そのものを実際に観察することは研究者には難しいため、聞き取り調査を主とする。特に中学校や高等学校の事例の収集に力を注ぐ。
現象学や実存哲学を、質的研究の方法論として活用することについての学術的検討については、一定の成果が得られたため、これについては一旦終了する。それに代えて、子どもの問題行動や「悪」の発達的意味やその発生メカニズムを解明するために、現象学や実存哲学を考察し、適用していく計画である。具体的には、現象学の影響を受けた実存哲学、ハイデガー、アレント、レヴィナス、ハンス・ヨーナスが、当該研究にとって有益であるため、この研究にも集中的に取り組む。
ニューロサイエンス、霊長類研究等の最新の知見が、当該研究と深くかかわることが明らかになってきたので、この点を掘り下げていく。その一つとして、ミラーニューロン研究が、自閉症児の中核症状についての従来の見解を覆し、本研究がこれまで共同研究し収集してきた実践例と親和的であることが判明したので、ミラーニューロン関連研究の最新の動向を調査する。また、それを教育学や哲学とクロスオーバーさせている先行研究を追跡する。
成果発表については、これまでの2年間に学会発表や紀要発表等を積極的に行ってきたので、こうした散発的な発表を今年度は若干控え、いっそうまとまった形での成果発表を計画している。また、学術的な発表だけでなく、現場教師や学生や市民一般にも親しみやすい形での発表も今後は行っていきたい。
他の諸科学とのクロスオーバーについては、かなり広範にわたり専門性も高い共同的研究になるため、新しい研究プロジェクトとして構想したい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

ミラーニューロン研究関連書籍の購入。場合によっては、ニューロサイエンスに携わる研究者とコンタクトをとり、専門的知見を得るための、交通費や情報提供費。ニューロサイエンスを教育や哲学と関連づけている研究者も若干いるため、そうした研究者との連携、情報や意見の交換を行うための経費。
学会発表ならびに学会での情報収集に必要な経費。学会としては、教育関連学会に加え、現象学や実存哲学やハイデガー研究に関連する学会や協会も含む。
東日本大震災後のいわば慢性期の仮設住宅や間借り学校での生活と学習により、問題行動が増減していないかについても、当該研究と関連する点があるため、そうした調査も追加的に行う。

  • Research Products

    (8 results)

All 2013 2012 Other

All Journal Article (3 results) Presentation (2 results) Book (1 results) Remarks (2 results)

  • [Journal Article] 教育の存在論は可能か?-ハイデガー学問論から-2013

    • Author(s)
      田端健人
    • Journal Title

      学ぶと教えるの現象学研究

      Volume: 15 Pages: 1-18

  • [Journal Article] 「荒れた学級」からの回復事例-M.ブーバー「人間関係の存在論」からの解釈-2013

    • Author(s)
      田端健人・真竹健人
    • Journal Title

      宮城教育大学紀要

      Volume: 47 Pages: 255-276

  • [Journal Article] 質的研究における「問い」について-「問いの現象学」を手がかりに-2012

    • Author(s)
      田端健人
    • Journal Title

      宮城教育大学紀要

      Volume: 46 Pages: 185-192

  • [Presentation] 「荒れた」学級からの回復場面-M.ブーバー「人間関係の存在論」によるエピソード解釈の試み-2012

    • Author(s)
      田端健人
    • Organizer
      日本教育方法学会
    • Place of Presentation
      福井大学(福井県)
    • Year and Date
      20121006-20121007
  • [Presentation] 教育関係における他者の受容-マルティン・ブーバーによるカール・ロジャーズ批判から-2012

    • Author(s)
      田端健人
    • Organizer
      日本教育学会
    • Place of Presentation
      名古屋大学(愛知県)
    • Year and Date
      20120824-20120826
  • [Book] 斎藤喜博研究の現在2012

    • Author(s)
      横須賀薫編 (田端健人共同執筆)
    • Total Pages
      564
    • Publisher
      春風社
  • [Remarks] 国立大学法人 宮城教育大学ホームページ 「教員紹介」

    • URL

      http://www.miyakyo-u.ac.jp/cgi-bin/KyouinDB/DB.php?id=63

  • [Remarks] 国立大学法人 宮城教育大学附属図書館ホームページ「宮城教育大学紀要」

    • URL

      http://library.miyakyo-u.ac.jp/Outline/Publication/kiyou/miyakyo-kiyou.html

URL: 

Published: 2014-07-24  

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