2011 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける性教育の特徴とそれをふまえた性教育教材開発および授業研究
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23531042
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
田代 美江子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40297049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
艮 香織 宇都宮大学, 教育学部, 講師 (10459224)
渡辺 大輔 都留文科大学, 文学部, 非常勤講師 (00468224)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 性教育 / ジェンダー / セクシュアリティ / 東アジア |
Research Abstract |
本研究の具体的な目的は以下の3点である。 (1)韓国および中国(香港、台湾を含む)における性教育の背景、その具体的内容および教材分析を行い、日本の性教育との比較分析を行うこと、(2)さらに、性教育先進国である北欧、オーストラリア、カナダなどの性教育との比較を行い、日本を含む東アジアにおける性教育の特徴と課題を明らかにすること、(3)東アジアにおける性教育の課題を踏まえ、学校現場の教員と協力し、教材および教育方法の開発、授業研究を行い、日本の子ども・若者の現実と要求に即した性教育実践の具体的課題と展望を明らかにすることである。 研究実施計画に従い、本年度においては次の成果をあげることができた。第1の目的に関しては、これまでの収集してきた教材の翻訳および、特に来年度調査を計画している中国に関しては、ネットによるテキストの収集を実施した。加えて、韓国への現地調査を実施し、保健教育フォーラム(保健教師のグループ)、人口保健福祉教育の教材開発研究所、青少年性文化センター、学校を訪問し、情報交換および資料収集、性教育実践見学等を実施した。また、その成果の一部について『季刊Sexuality』に報告した。 第2の目的と関わり、上記の取り組みで明らかになりつつある韓国の性教育の内容および現状については、まず、日本との比較検討をおこない、さらに研究分担者のフィンランド調査との比較をすすめている。 第3の目的と関わって、これまでの実績をふまえながら、M中学校の養護教諭の協力により、性教育の指導計画、指導案、教材等を共同で作成し、それによる実践の記録、観察、その実践を受けた生徒への、事前・事後調査などを実施し、その分析を継続的に進めている。M中学校との継続的な共同研究は、事前・事後調査および生徒たちのインタビュー結果を次の実践にいかすことで、より具体的な実践研究を実施することに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の研究計画として、以下3点の課題を設定した。 (1)韓国、香港、台湾、中国における性教育に関する情報・資料および教材収集と同時に、これまで収集してきた教材等の整理を行い、それらの位置づけについて確認した後、インターネットおよび現地調査によるさらなる資料収集を行う。初年度は韓国への現地調査を実施すること。(2)現地調査によって収集した資料・教材およびこれまでの取り組みの中ですでに手元にある韓国、香港の性教育教材を中心に、研究協力者の協力を得ながら翻訳およびその内容分析をすすめる。(3)性教育の教材、授業案および授業実践研究として、M中学校の養護教諭との協同研究によって、実践研究を進めていく。定期的に研究会を持ち、実際の授業作りから授業実践の記録分析、授業を受けた生徒たちへのインタビューを通して、実践の内容について議論を深める。 (1)に関しては、韓国での現地調査は、研究協力者の助力により、当初の予想を遙かに上回る有意義な交流および資料収集を実施することができた。また、中国の性教育に関する情報の収集と教材の入手も順調に進んでおり、24年度に計画している中国調査の基盤も固めることができている。(2)に関しては、教材分析は中途段階ではあるが、順調に進められている。(3)の授業実践は、年に少なくとも5回(メンバーによる)の実践研究(授業実践・見学・検討会)を実施し、これまでの取り組みの成果の積み重ねも反映することによって、中学校での性教育実践集としてまとめる段階にまで来ている。24年度の"人間と性"教育研究協議会が主催する夏期セミナーで報告するため、エントリー済みである。 以上の点からも、23年度の実績は極めて順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画をふまえ、24年度以降については、以下のような具体的課題に取り組んでいく。 第1に、研究目的の(1)(2)と関わる 東アジアにおける性教育分析については、24年度においては、中国への現地調査も含め1年目の資料収集を補足しつつ、収集した教材の分析を本格的にすすめる。当初、中国現地での性教育調査の可能性が不確定であったが、初年度の研究成果により、中国での調査を実施することにした。また、これらの結果を性教育教材開発や授業研究に反映させていく。25年度においては、台湾あるいは香港への現地調査を実施し、東アジアにおける性教育の特徴についての分析検討を進め、その成果を学会等で発表する。 第2に、性教育のテキストあるいは副読本の作成については、初年度より継続してきた教材・授業研究の成果を踏まえ、授業案、教材はもちろん、中学校の性教育実践集を作成する。さらにそれらを用いた授業を実際にすすめ、授業分析により、教材および授業のさらなる発展を図る。25年度においては、作成した教材や授業案の再検討をおこなう。 第3に、まとめと成果発表として、東アジアの性教育の特徴を踏まえつつ、作成した授業案、教材、テキスト等を分析し、日本における性教育の課題について明らかにする。学会等においてその成果を発表すると同時に、授業実践に関わる情報については、教育関係雑誌などに発表することで、学校現場の教員に積極的に発信する。また、最終年度の3月にむけて、全体の成果を含む報告集を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究費については、11万円の直接経費のうち、物品費を10万円、旅費を70万0円、人件費を25万円、その他5万円と計画している。 特に旅費については、東アジアの性教育の実態を把握するためには、現地調査は必要不可欠であり、研究費の多くを割いている。24年度は、中国(現在、北京か上海かのどちらにするかを検討中)への現地調査実施を計画しており、本調査においては、研究協力者の同行が必要不可欠である。したがって、研究分担者を含め少なくとも5名分の旅費が必要となる。また、授業研究の対象となる中学校が京都にあるため、国内旅費も必要となる。昨年度の韓国調査および国内旅費の実績(計約116万円)を勘案すると、24年度の配分額では不足することが予想されるため、23年度の未使用分(約34万)によって補填したい。 謝金については、国外調査をスムーズに行うためには、同時通訳が必要不可欠であり、また調査を予定している訪問先、現地協力者への謝金も必要となる。加えて、韓国、中国で収集した資料を分析するにあたり、少なくとも中国語翻訳専門家による手助けが必要である。翻訳確認作業には高度な専門的能力が必要となるため、そのための費用を計画している。加えて、収集する資料が膨大になることも考えられ、その整理のための人員が必要となる。これについては学生アルバイトを計画している。 物品費に関しては、中国を中心としたテキスト、教材の購入、関連資料・図書の購入、また、24年度においては、性教育実践集の作成も計画しており、その印刷代も必要となる。その他、調査にかかわり、情報関係消耗品費、文具費、授業観察などの質的調査で必要な記録媒体の費用は、本研究に不可欠の出費である。 その他、研究に伴う印刷、複写費は、資料収集と教材分析においては不可欠である。また、研究協力者との通信費等についても計画している。
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[Journal Article] Sexuality education in junior high schools in Japan2012
Author(s)
Hashimoto, N.; Shinohara, H.; Tashiro, M.; Suzuki, S.; Hirose, H.; Ikeya, H.; Ushitora, K.; Komiya, A.; Watanabe, M.; Motegi, T.; Morioka,
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Journal Title
Sex Education
Volume: Vol. 12 Issue 1
Pages: 25-46
DOI
Peer Reviewed
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