2012 Fiscal Year Research-status Report
<学校力>向上を規定する組織の内的メカニズムに関する基礎的研究
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23531051
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
安藤 知子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (70303196)
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Keywords | 学校力 / 学校評価 / 教員組織 / 特色ある学校づくり / 組織コミットメント |
Research Abstract |
平成24年度は、(1)<学校力>概念を吟味し、測定指標を開発するとともに、それを測定するためのチェックシートを作成することと、(2)高い<学校力>を有すると思われる学校での、「学校全体での取り組み」に対する積極的な意味付与が形成される過程に関する事例調査を行うことの2点を具体的課題として取り組んだ。 まず、(1)については平成23年度中に全国都道府県、政令指定都市教育委員会等に依頼して収集した学校評価に関連する諸資料と、平成24年2月および8月に実施した新潟県公立小学校の学校HPで公開されている学校評価情報に関する資料、および文科省の『学校評価ガイドライン』を素材とする分析考察を行い、学校に対する評価の結果を「見せるように要請する側」と「見せる側」とがそれぞれどのような要素で学校を評価しようとしているのかを探究した。そこから、新たに3層構造としての学校力の7要素を整理した。それは、第一の層〔教育実践の意図・内容・結果〕としての「教育力」、第二の層〔実践を支える諸々の組織行動〕としての「指導力」「安心・安全」「経営力」「連携力」、第三の層〔規程にある組織文化・組織自体の更新能力〕としての「スクール・アイデンティティ」「進化・更新力」というものである。この第一の課題に関する成果を『中間報告・資料集』としてまとめた。 また、(2)については、年間を通してJ市内の2小学校での日常的教育実践と教員研修会を参観したり、情報が公開されている指定研究の公開研究成果発表会等に参加することで、<学校力>の高い学校を検討し、その中から2つの小学校で複数の教員を対象とする聞き取り調査を実施した。聞き取り調査の分析考察は現在継続中であり、平成25年度に学会等で発表する予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した3つの具体的研究課題のうち、(1)<学校力>指標の吟味・再考と測定指標の開発、(2)複数の<学校力>が高いと思われる学校での観察調査および聞き取り調査の実施、という2つの課題については概ね予定通りに進行している。(2)の学校事例調査では、当初予定していたよりも比較的研究者の居住地域に近い学校で複数の観察調査が実施できたために、旅費の支出は少なくなっているが、その分わずかな時間を活用しながら頻繁に学校訪問をすることが可能となり、継続的な観察調査を実施できそうな見込みである。聞き取り調査では、小規模小学校の担任教員全員への聞き取りが実施できた1校と、特色ある取り組みの中心メンバーである研究主任、校長、着任1年目の教員、新採教員への聞き取りが実施できた1校があり、観察調査でのデータの他にも組織の内的メカニズムを分析するための貴重な手がかりを収集することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、1校ないし2校に限定して可能な範囲で日常的な教職員間の相互行為に着目した長期参与観察調査を実施する。その分析考察に基づいて、<学校力>向上を規定する学校組織の内的メカニズムに関するモデルを仮説的に構築する予定である。あわせて、モデル構築のための基礎的データ収集として、指定研究の公開研究会等を開催している複数の学校での教員への聞き取り調査も並行して実施したい。 長期参与観察調査は、A市内の2つの小学校を候補として実施の可能性を探る。研究遂行上の課題として、交付申請書に研究計画を記載した時点から比べても、申請者自身が連続する長期間の観察調査を実施することが困難になってきていることが挙げられる。本務との関係で、まとまった期間を調査に充てることができないので、定期的な観察調査に長期にわたって協力していただくか、大学院生にも協力してもらう形で間接的な観察調査データを収集するか、ICレコーダーやビデオカメラでの定点録画等を依頼するなど、調査方法の工夫が必要である。現時点では、定期的な訪問調査を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の残額は、年度末の3月に東京都内の学校で1泊2日の聞き取り調査を予定していたが、やむを得ない理由で急遽日帰りをせざるを得なくなり、1日で調査を終了したために生じたものである。3月であったため、新規の予算執行が難しく、そのまま残額となったが、以上のような事情による残額であるため、平成25年度に観察調査の際の旅費に含めて執行する予定である。
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