2011 Fiscal Year Research-status Report
学校管理経営論におけるコミュニティの位置づけに関する比較史的研究
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23531054
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
平井 貴美代 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50325396)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 学校経営 / コミュニティ・スクール |
Research Abstract |
本研究の目的は、占領期における米国学校管理・経営論の導入時に見られる受容とその後の日本的変容について、とりわけ「コミュニティ」をめぐる管理・経営論に焦点づけて検討することにある。経路依存的に制度化されてきた日本の学校管理・経営と「コミュニティ」との関係を米国学校管理・経営論と対比しながら把握することによって、今後さらなる発展が見込まれるコミュニティ・スクールなどの学校経営参加制度が前提する「コミュニティ」概念の、傾向性と課題を抽出することにもつなげられるものと考えている。 本年度は、占領下の学校管理経営政策に関する主要な文書(GHQ/SCAP文書、IFEL文書など)の収集・分析を通じて、当時の学校管理職・教育関係者や学校現場に伝えられた「コミュニティ」認識の具体を明らかにすることを試みるとともに、3年間の研究の基礎固めとして戦後改革期の学校管理経営論のうち、とくに主題と関わる文献やレビューを収集・分析した。前者については、主として「コミュニティ・スクール」やPTA政策の占領文書を一通り収集したが、その他の「コミュニティ」に関連する政策文書については手つかずの状況である。後者については、ほぼ当初予定した通りの研究を進めることができたので、当時の学校管理・経営研究者(確証はないが、学校管理職・教師も)によって「コミュニティ」あるいは「地域」がどのように把握され、はたらきかけがなされていたか、大まかではあるが把握することができた。 また前回の科研費研究からの継続的な関心として、学校内部の組織成員を「コミュニティ」とみなす管理経営認識に関連する論考を発表することができたので、それを手がかりに学校の内外を包括した「コミュニティ」概念の分析へと発展させていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた2つの研究活動のうち、占領下の学校管理経営政策に関する主要な文書(GHQ/SCAP文書、IFEL文書など)の収集・分析については、対象となる文書が膨大であることから思うように進捗させることはできなかったが、戦後改革期の学校管理経営論に関する先行研究の検討はほぼ完了することができた。また、次年度の課題として予定していた、1950年代以降の日米両国における学校管理経営理論の主要文献の収集・分析についても先行して進めており、3年間の研究計画の1/3を進捗させるという点から言えば、予定通りの研究を進めることができたと考えている。 政策文書の収集については、文献研究との往還に伴って分析が深まり、それにつれて必要とする領域が拡大していくものと思われる。たとえば、当初はPTAの受容と「コミュニティ・スクール」の受容について、占領政策における旧教育の否定と民主主義の奨励という文脈で同様のものと捉えていたが、文献を読み進むにつれて両者の違いが明確になり(米国起源のアソシエーションの理念が貫徹されたPTAと、日本における受容のゆがみによって理念通りに理解されなかったコミュニティ・スクールという違い)、それに伴って収集すべき一次資料の想定も変わってきたということがある。したがって、おそらくは最終年度まで一次資料と文献資料の収集・分析は並行して進めていくこととなるはずであり、各年度の研究内容の区切りは流動的に捉えるべきべきものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
占領政策文書(とくにGHQ/SCAP文書)については、引き続き資料の収集・分析を行っていく。加えて、1950年代以降の日米両国における学校管理経営理論の主要文献のうち、とくに本研究が主題とする「コミュニティ」を扱ったものを収集・分析していく。 米国の学校管理経営理論については、当初予定していた、Lynn G. Beck and William Foster, "Administration and Community", Edited by Joseph Murpgy&Karen Seashore Louis, HANDBOOK OF RESEARCH ON Educational Administration(2nd Edition, LOSSEY-BASS, 1999)に加え、同ハンドブック所収のClaire E. Smrekar and Hanne B. Mawhinney, "Integrated Services: Challenges in Linking Schools, Families, and Communities"の引用・参考文献を手掛かりに必要な文献を選定、収集するところまで初年度のうちに進めてあるので、今後は計画的に読了・分析していくこととハンドブックの出版年以降の文献も収集していきたい。 なお、いまだ研究の途上ではあるが、PTAと「コミュニティ・スクール」について占領期における導入時の経緯や受容のあり方の違い等に焦点づけた比較検討に現在着手しており、まとまった成果が得られれば次年度中に学会などで発表を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は占領下の米国学校管理・経営論の導入過程に関わる一次資料の収集・分析を引き続き行っていくことになるが、検討対象となるGHQ/SCAP文書は膨大な量となることが見込まれており、そのすべてをマイクロ複写し、網羅的に調べ上げていくことは予算・時間を考えあわせると不可能に近い作業である。したがって、国会図書館憲政資料に自ら出向いて関連資料の一つ一つに根気よく当っていく必要があり、年間5回程度の出張旅費と相当程度の複写費等が必要となる見込みである。すでにマイクロフィッシュ複写済みの文書については、山梨大学図書館で閲覧、印刷する予定であり、必要に応じてマイクロリーダー用のカートリッジも購入したい。また、占領政策の受容にかかわり地方教育史関係資料を調査することも予定しており、地方調査のための旅費や複写費等が必要である。 日米両国における学校管理経営理論の主要文献の調査に関しては、すでに代表的な文献は初年度のうちに収集し終えているが、研究の進捗状況に応じて検討対象とすべき文献が増えていくものと考えられる。本研究は歴史的研究であるため、現在購入可能な図書はさほど多くなく、むしろ文献を他機関から取り寄せたり、他機関に出向いて複写しなければならないこともある。したがって、それに応じた旅費や複写費を確保しておくことも必要である。 また、研究の意義を確認する意味合いも含めて学会大会に参加して情報収集を行うことや、PTAと「コミュニティ・スクール」について、占領期における導入時の経緯や受容のあり方の違い等に焦点づけた比較検討の成果を口頭発表することも予定しており、学会大会に参加するための旅費等を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)