2012 Fiscal Year Research-status Report
ガバナンス論の政策分析枠組みとしての「有効性」と「合理性」に関する基礎的研究
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23531055
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
武者 一弘 信州大学, 教育学部, 准教授 (50319315)
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Keywords | フィンランド / ガバナンス / 教育政策 / 教育行政 |
Research Abstract |
本科研の課題の解明を前年度の成果を踏まえ、次の三つのアプローチにより試みた。すなわち、①教育委員会制度の抜本改革を迫る多様なアクターの議論を対象とするガバナンス研究の分析、②欧米の教育行政の機構改革を対象とするガバナンス研究の分析、③既に教育行政の機構改革を実現した自治体を対象とするガバナンスの変動の実証的調査である。 平成24年度はあらまし次のような研究を行った。①教育委員会制度の抜本改革を迫る多様なアクターの議論を関係審議会等の答申や報告などを手がかりに分析整理を行った。②英米の教育行政の機構改革を対象とするガバナンス研究の動向について、行政学者や教育行政学者などから専門的な知見・情報を得た。これまで得た知見・情報から、フィンランドのPISAテストで高得点・高順位の下支えとして、教育行政機構改革や父母住民の学校参加のあること、東西冷戦の終結やEU加盟後教育における価値の転換(教科再編(「道徳教育」など)や教育方法の転換(討議中心)により、多様性、寛容、共生の価値観を重視)、英米の政治・行政改革の影響が大きいことを知り、現地調査を行った。③国内の自治体を対象とするガバナンスの変動の実証的調査を行った。平成23年度の成果を踏まえて、平成の市町村合併後の新市町村の建設に着目し、とりわけ市長村立小中学校の統廃合と地域づくりについて調査した。 平成24年度の研究成果の一部は、一方で中部教育学会大会シンポジウム(テーマ「教師の力量形成と地域連携」)、日本教育政策学会大会課題研究(テーマ「構造改革下の自治体教育政策をめぐる動向―教育政策研究の課題と方法をさぐる―」)及び日本教育学会大会ラウンドテーブル(テーマ「大阪府・市の教育政策動向をどうとらえるか」)の企画及び司会と、日本教育政策学会公開研究会の報告(テーマ「『長野県の学校統廃合と教育政策』に寄せながら」)などにおいて発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要に記した第二年次の①②③の三点について、研究目的に照らして評価すると、①は、概ね年次計画で予定した通りの進捗状況であった。また②は、政治学者や教育行政学者からの専門的な知見・情報の収集は計画通りには進まなかった。また欧米の訪問調査は年度末にフィンランド調査一件しか実現できなかった。③は長野県内の調査はきめ細かく実施できたが、県外はほとんど調査できなかった。 その理由は大きく次の二つである。一つ目は、エフォートを予定通りに確保できなかったことにある。勤務校の改組と急遽予算が付き決定した耐震補強工事のため生じた仮設研究室への移動、勤務校で開催となった中部教育学会の大会事務局長職や日本教育政策学会の課題研究担当職などの学会業務(ただこれらは研究成果の発表の面では利点ではあった)、身内で看護・介護を要する者が生じたことなどで時間の確保がままならなかった。二つ目は、訪問日程や調査日程が、前もってまとまった形で確保することが難しかったことである。教育学の専攻・分野主任として、計画段階では予期できなった改組や新カリキュラム実施にかかる重大問題への対応業務が急に入ってくることが多く、長く大学を開けることがしにくかったことに加えて、一つ目のところで上げた事柄が重なり、専門的知見・情報の収集のアポイントメントや国内外の調査計画がなかなか立てられずまたようやくアポイントメントを取り計画を立てても延期や中止をせざるを得なかったことも何度かあった。海外調査に至ってはようやく実現できたのは3月であった。 フィンランド調査に入る前に、同国の教育改革の動向並びに教育ガバナンスの改革動向について研究会をもち、専門的知見や情報を得る機会を得られたことで、調査が有意義なものとなった。この研究会とフィンランド調査は、第三年次以降の研究枠組みを見直し、海外調査のあり方を再建とする得難い機会ともなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果を基にして、三つのアプローチからの研究を継続し遂行する。まず、①の点については、「経済財政運営と構造改革の基本方針2006」の成立前後の諸アクターの動きに注目しながら、教育委員会制度再編の政治・政策過程の解明を継続する一方で、新たに発表された教育委員会制度再編研究の収集・分析を行う。その際、平成24年12月成立の新政権下の教育再生実行会議や中央教育審議会の教育委員会制度の見直しの議論にも十分に目を配りたい。②の点については、欧米のガバナンス論の特質を考察した日本の先行研究を検討するとともに、欧米でのガバナンス概念と学説史に関する理論研究を考察し、欧米でガバナンス論が台頭した背景とその特徴を明らかにする。さらに、欧米の社会・文化的文脈においてガバナンス論を把握するために、第二年次までの文献研究と専門的な知見・情報の収集・分析を踏まえて、欧米におけるガバナンス改革の先進的事例として特定したフィンランドに本調査に入るとともに、アメリカ調査に入る。③については、第二年次に行った平成の市町村合併後の新市町村の建設と市町村立小中学校の統廃合問題を抱える基礎自治体への予備調査と本調査の結果を踏まえ、教育行政の一元化の事例の類型化を検討し直す一方で、本調査や再調査の対象となる自治体を精選し、教育行政の一元化の背景とねらい、住民や専門職の位置づけ、子どもの発達保障と住民や専門職との関わりを、聞き取りや会議及び活動への参与観察などにより明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず物品費についてだが、平成24年度は耐震補強工事のため仮設研究室に移動となったためできるだけ新規購入を控え、勤務校の既存の備品(PC、DVカメラ、ボイスレコーダー、デジタルカメラ、プロジェクターなど)を借り受けて調査や学会研究会での報告にあたった。そのため、物品の整備購入費が結果的に抑えらた。しかし、平成25度は既に日本教育学会の研究会(5月)や大会(8月)などでの報告が決まっており、そのための備品の購入が不可欠である。また4月に新研究室に移ったことから、購入を先送りしていた備品の購入を行う。よって物品費にかかる繰り越し分と第三年次の物品費の計上した分は、全て支出することになる。 次に旅費についてだが、平成25年度は専攻・分野主任の職から解放されまた私的な制約がなくなること、学会の業務負担の軽減などから、長期の海外出張を二回(欧州とアメリカ)実現する予定である。また国内出張については、基礎自治体の本調査と補充調査を実施する予定である。さらに日本教育学会、日本教育政策学会などの学会や研究会での成果報告を予定している。よって、旅費にかかる繰り越し分と第三年次の旅費の計上した分は、全て支出する見込みである。人件費・謝金についてだが、できるだけアルバイトなどは用いないように心がけたり、専門的な知見・情報を得た際に先方が謝金を辞退したりしたことから使用はなかった。しかし第三年次は収集した資料の整理や聞き取り調査のテープ起こしなどでアルバイトを用いる予定である。その他では、郵便や宅配便などの通信費や調査訪問先での複写などのための支出を予定している。だが、平成24年度と同様に、このカテゴリーから海外調査時の、調査対象への連絡や通訳としての現地人の雇い上げにかかる費用を支出した場合は、その他に計上した予算を超えることも考えられる。その場合は、人件費・謝金の分を回すなどで対応したい。
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Research Products
(3 results)