2014 Fiscal Year Research-status Report
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23531057
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
小川 英彦 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30290159)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 幼児教育史 / 知的障害 / 1970年代 / 文部省 / 厚生省 / 特殊教育諸学校幼稚部 / 心身障害児通園事業実施要綱 / 障害児保育事業実施要綱 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究の目的に照らし合わせて 1970年代においては、72年に「特殊教育諸学校幼稚部学級計画10年計画」を文部省は策定した。これにより、1970年代特殊教育諸学校で幼稚部が設置されていった。しかしながら、実際には、この時期の特殊教育学校幼稚部の設置や在籍児数は、十分には増加していない。澤田の研究によれば、1977年における全国の養護学校(分校を含める)の総数455校中幼稚部を設置している学校は24校(5%)に留まっており、47都道府県のうち幼稚部がなかったのは36道府県あったという。こうした状況から特殊教育諸学校の幼稚部は、障害児保育の主要な担い手とはなり得なかったと考えられる。 2.研究実施計画に照らし合わせて 以上、幼稚部の設置は、十分に進まなかったが、療育施設は、小規模ながらの草の根の実践が継続され、1970年代に入ると、幼児の療育の場が公的に保障されることとなった。1972年に厚生省が「心身障害児通園事業実施要綱」を策定した。この要綱では、その目的を市町村が通園の場を設けて心身に障害のある児童に対し、通園の方法によって指導を行い、地域社会が一体となってその育成を助長するすることとしている。そして、その対象を精神薄弱、肢体不自由、もう、ろうあ等の障害を有し、通園による指導になじむ幼児とした。つまり、この要綱において、就学前の障害幼児の通園制の療育施設に通うことが可能となり、また、その親子が居住する地域に、療育施設が設置されたことは、制度的に大きく前進したと考えられる。本研究では、1970年代を文部省と厚生省の両分野から時代的特徴を明らかにすることができた。結論的には、1973年の中央福祉審議会の中間答申「当面すべき児童福祉対策について」や1974年の「障害児保育事業実施要綱」の公布が、統合保育の必要さや加配や助成金の補助といった制度的充実がみられた点を明確化できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記した1970年代の障害児保育の実施状況について、文部省と厚生省といった教育と福祉の両分野に渡って、総合的に明らかにすることができたためである。 また、1950年代や1960年代と比較すると、福祉サイドでの障害幼児の保育の場が確保されたことは大きな制度面の充実であった。一方、実際には、障害の重度の障害児は療育施設へ、軽度の障害児は一般の幼稚園や保育所へという、障害の程度による振り分けがなされたといった時代の特徴を明らかにできたためである。 よって、1950年代から1970年代における障害児保育の成立と展開について通史として概観することができたこともある。 さらに、本研究を進める上で、いくつかの関連先行研究を入手できたことも理由にあたる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は、先駆的役割を果たした地域史研究を進めていく。その研究を進めるにあたっては、大津市の取り組みを取り上げていく。大津市で実践された早期発見・早期療育の実践が今日に果たした影響があると思われるからである。 平成27年度は宮城県や京都府で行われる関係学会に参加する。宮城県では日本特殊教育学会(東北大学)に係る旅費として、京都府ではSNE学会(京都教育大学)に係る旅費として使用する。愛知県内では日本福祉大学図書館に係る旅費として使用する。また、資料収集に力を注ぎ、関係書籍(復刻版の書籍を中心にして)を購入していく。
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Causes of Carryover |
復刻版の図書の額によってほんのわずかの金額ではあるが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年となる平成27年度では大津市の先駆的実践について研究するため、その関係図書を購入する。その他、日本特殊教育学会(東北大学)とSNE学会(京都教育大学)に参加する。
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