2011 Fiscal Year Research-status Report
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23531061
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中坪 史典 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10259715)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / アメリカ合衆国 / 保育者の専門性 / 感情的実践 / 感情的理解 / 感情的知性 / 「見守る」 |
Research Abstract |
当該年度における研究実績の概要は、次の通りである。(1)保育者の専門性としての感情的実践に関する国内外の研究動向について、「子どもとの関係における保育者の感情的実践」「保護者や同僚との関係における保育者の感情的実践」の側面からレビューした。(2)保育者の専門性としての感情的実践に関して、特に、保育者が子どもの行為を「見守る」場面を対象に、保育者の感情的理解と感情的知性について検討した。研究方法として、Video-cued Multi-vocal Visual Ethnographyの手法を採用した。具体的には、大阪・アトム共同保育所の映像を用いて、3名の保育者の研究協力を得て、子どもの行為を「見守る」とは何かについてインタビューを実施した。収集されたデータは、質的分析法(大谷 2011)を用いて分析した。その結果、次の点が明らかにされた。第一に、「見守る」保育における保育者の感情的理解とは、子どもに介入しないけれども関与しないわけではないことから「非介入的関与」と捉えることができる。従って、保育者の「介入的関与」「非関与」は、保育者の感情的理解とは言い難い。第二に、「見守る」保育において保育者は、子どもに対して視線や表情を媒介として、「見ているよ(注目・観察)」「だめだよ(指定・禁止・抑制)」「信じているよ(信頼)」「そうだよね(共感)」「大丈夫だよ(支持)」などの感情を表出しており、これらは保育者の感情的知性として捉えることができる。このことによって子どもは、「見てくれている感」「分かってくれている感」「信じてくれている感」「認められている感」などの安心感を得ることができる。第三に、「見守る」保育において保育者は、子どもと問題状況を共有し、個々の子どもの気持ちに寄り添い、共感するにもかかわらず、そうした感情をあえて抑制したりすることから、高度な専門性を伴うものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の達成度について、自己点検による評価の理由は、次の通りである。上記の通り、当該年度において本研究は、(1)保育者の専門性としての感情的実践に関する国内外の研究動向について、「子どもとの関係における保育者の感情的実践」「保護者や同僚との関係における保育者の感情的実践」の側面からレビューするとともに、(2)保育者の専門性としての感情的実践に関して、特に、保育者が子どもの行為を「見守る」場面を対象に、保育者の感情的理解と感情的知性について検討した。これらの成果として、(1)については、広島大学大学院教育学研究科紀要第三部(教育人間科学関連領域)第60号(2011年)に、「保育者の専門性としての感情的実践に関する研究動向」という論文タイトルで掲載した。(2)については、2011年11月、アメリカ合衆国フロリダ州オーランドで開催された全米乳幼児教育学会(naeyc)年次大会において、「Why Japanese Early Childhood Teachers Lead or Intervene to Young Children Passive? -The Mimamoru Methodology and professionalism in early childhood education and care in Japan-」という発表タイトルでシンポジウムを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、次の通りである。(1)当該年度において検討した、子どもの行為を「見守る」場面における保育者の感情的実践について、その成果を再検討して、2012年8月、ポルトガル(ポルト)で開催される欧州乳幼児教育学会(EECERA)の年次大会において発表するとともに、論文として取りまとめ、国内外の査読付学術雑誌に投稿する。(2)保育者が子どもの行為を「見守る」場面を対象とした保育者の感情的実践(特に、感情理解と感情的知性)について、同様の映像(大阪・アトム共同保育所)を用いて、Video-cued Multi-vocal Visual Ethnographyを継続する。具体的には、当該年度に研究協力を得た3名の保育者以外に、以下の保育者を対象に、同様のインタビューを実施する。(a)映像の当事者としての保育者(大阪・アトム共同保育所の保育者)(オート・エスノグラフィー)、(b)映像の保育とは異文化の保育者(日本とは異なる国の保育者)(エスノ・エスノグラフィー)。(3)(2)において収集されたインタビュー・データは、質的分析法(大谷 2011)を用いて分析するとともに、その結果については、2012年11月、アメリカ合衆国ジョージア州アトランタで開催される全米乳幼児教育学会(naeyc)年次大会においてシンポジウムを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は、次の通りである。(1)パソコン、デジタルビデオカメラ、ブルーレイディスクの購入:映像データの整理、映像クリップの作成時における映像データの編集などの作業において、今日の高画質映像を用いた動画編集を行う場合、現在の研究環境では不十分な側面があることから、よりパフォーマンスの高い設備備品が必要である。(2)旅費・謝金等:国内および海外において、専門的知識の提供を受けたり、現地調査 を行ったりする必要がある。また、国内外の学会等において研究成果を報告する。(3)図書・資料:本研究を進めるための情報収集、先行研究の分析資料として用いる。(4)その他:検討会や研究会の開催、学会報告(シンポジウムやラウンドテーブル)の企画・運営などに使用する。
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Research Products
(2 results)