2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23531061
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中坪 史典 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10259715)
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Keywords | 国際情報交流 / アメリカ合衆国 / 保育者の専門性 / 感情的実践 / 感情的理解 / 感情的知性 / 「見守る」 |
Research Abstract |
当該年度における研究実績の概要は、次の通りである。 (1)保育者の専門性としての感情的実践について、昨年度検討した、アトム共同保育所の映像に加えて、森のようちえん(まるたんぼう)の映像(次の3場面)を検討した。(a)保育者が3歳女児に問題解決を促す、(b)保育者が3歳男児のけんかに介入しない、(c)保育者が集団活動における問題解決を促す。 (2)昨年度検討した、子どもの行為を「見守る」とは何かについての仮説検証を目的に、上記の3場面について検討した。その結果、次の点が明らかにされた。第一に、「見守る」保育における保育者の感情的理解とは、子どもに介入しないけれども関与しないわけではない「非介入的関与」である。第二に、「見守る」保育において保育者は、子どもと問題状況を共有しながらも、自律的問題解決を促すためにポジショニングを整えている。第三に、子どもの自律的問題解決が難しい場合、保育者は自らの感情を抑制しながらも、最小限の一時介入を試みる。第四に、保育者は個々の子どもの気持ちに寄り添い、共感するにもかかわらず、そうした感情をあえて抑制したりすることから、高度な専門性を伴うものである。 (3)既述した保育者の専門性としての感情的実践は、必ずしも諸外国の実践においてみられるわけでなく、日本の文化的特性との関連が考えられることから、アトム共同保育所、及び森のようちえん(まるたんぼう)の映像を用いて、米国の保育者にインタビュー調査を実施した。研究方法として、Video-cued Multi-vocal Visual Ethnographyの手法を採用した。具体的には、米国ロードアイランド州ブラウン大学附属幼稚園の保育者5名を対象に、上記の映像を視聴してもらい、自由に語り合ってもらった。日本の保育者の専門性としての感情的実践は、米国の保育者にはどのように捉えられるのか、今後検討予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の達成度について、自己点検による評価の理由は、次の通りである。 上記の通り、当該年度において本研究は、(1)保育者の専門性としての感情的実践に関して、特に、保育者が子どもの行為を「見守る」場面を対象に、保育者の感情的理解と感情的知性について検討した。昨年度の成果をもとに、さらにその仮説を検証する方向で検討した。当該年度の研究成果は、以下の通りである。 (1)2012年8月、ポルトガル・オポルトで開催された欧州乳幼児教育学会(EECERA)年次大会において、“Why do Japanese Early Childhood Teachers Not Intervene for Young Children Even Though They Have the Educational Intention? -Theory and Practice of Japanese Mimamoru Approach-”という発表タイトルで口頭発表を行った。 (2)2012年11月、アメリカ合衆国ジョージア州アトランタで開催された全米乳幼児教育学会(naeyc)年次大会において、“How Do the US Teachers Recognize the Japanese Teachers' Professionalism?: Japanese Mimamoru Approach in Early Childhood Education and Care”という発表タイトルでシンポジウムを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、次の通りである。 (1)当該年度において検討した、子どもの行為を「見守る」場面における保育者の感情的実践について、2013年7月、中国(上海)で開催されるOMEP世界大会において発表するとともに、論文として取りまとめ、国外の査読付学術雑誌(Early Childhood Research Quarterly)に投稿する。 (2)当該年度に実施した、米国ロードアイランド州ブラウン大学附属幼稚園の保育者5名のインタビューデータを分析する。分析の結果は、2013年8月、エストニア(タリン)で開催される欧州乳幼児教育学会(EECERA)の年次大会において発表するとともに、論文として取りまとめ、国内外の査読付学術雑誌(Journal of Research in Childhood Education)に投稿する。 (3)保育者が子どもの行為を「見守る」場面を対象とした保育者の感情的実践(特に、感情理解と感情的知性)について、2013年6月、映像の当事者である保育者(大阪・アトム共同保育所の保育者)へのインタビューを行う(オート・エスノグラフィー)。 (4)(3)において収集されたインタビュー・データは、質的分析法(大谷 2011)を用いて分析するとともに、その結果については、2013年11月、アメリカ合衆国ワシントンDCで開催される全米乳幼児教育学会(naeyc)年次大会においてシンポジウムを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は、次の通りである。 (1)インタビューデータの処理:テープ起こし、インタビューデータの分析に関する専門的知識の提供などに使用する。 (2)旅費・謝金等:国内および海外において、専門的知識の提供を受けたり、現地調査を行ったりする必要がある。また、国内外の学会等において研究成果を報告する。 (3)図書・資料:本研究を進めるための情報収集、先行研究の分析資料として用いる。 (4)その他:検討会や研究会の開催、学会報告(シンポジウムやラウンドテーブル)の企画・運営などに使用する。
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Research Products
(3 results)