2011 Fiscal Year Research-status Report
米国・オバマ政権のESEA(初等中等教育法)の再改定の実施過程の実証的研究
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23531066
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
青木 宏治 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (10116999)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アメリカ連邦政府 / 教育改革 / 初等中等教育法 / NCLB法 |
Research Abstract |
研究目的の直接の対象である初等・中等教育法の改定問題は、オバマ政権になってから4年目に入るが、その後の連邦財政の危機と連邦議会の構成変化などにより、NCLB法の改正ではなく、Race to the Topというプログラムに予算を配当するというやり方で重点を移している。オバマ政権は、その大統領選挙の公約でNCLB法の成果責任主義やチャータースクールへの強制移行などは、アメリカ公教育の活力を減退させ、そうした「競争」と「罰則的制裁」による教育改革は改め、教師を励まし、子どもたちをその気にさせるようにするための教育政策に転換することを掲げた。そのためにNCLB法を改定すると言っていた。そうしたオバマ政権の教育政策を実証的に調査研究するのが本課題の目的である。初年度である本年は、以下のような研究を行った。・アメリカ再生復興予算という特別予算の中に30%程度の教育投資予算を組み込み、それを使ってのRace to the Topプログラムを教育省が教育改革推進補助金枠を提示した。その関連資料の収集を行った。・連邦教育政策について有力な支持者であったダイアン ラビッチ教授(ニューヨーク大学)が、NCLB法の成果責任主義やチャータースクールには疑問であるという著書、意見を公表し、アメリカでは論議となっている。彼女の主張について資料を収集し、論議を整理した。・オハイオ州マイアミ大学を訪れ、周辺の教育委員会を訪問し、かつマイアミ大学の旧知のキャンブロン・マカビ教授と意見交換し、資料等の提供を受けた。カリフォーニア州バークレーでのRace to the Topへの応募、対応のヒアリング調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オバマ政権が4年前に大統領に当選するときのAgendaでは、Bush大統領が2001年に教育大統領のNCLB法を成果責任主義(Accountability)とテスト競争主義、チャータースクールへの強制移行など中心政策においていたが、それらはアメリカの公教育を過度な競争と制裁をもたらすので、それらを変えると掲げた。しかし、アメリカの連邦財政の赤字、連邦議会での共和党の議席増大などでオバマ大統領の政策は、大きく制約を受けることになる。連邦の教育政策は、アメリカ再生復興予算という財政支出を投じ、その中にRace to the Topプログラムが含まれている。NCLB法に弾力条項―flexibility clauseを付加することで財政誘導支援を行っている。 こうした状況の変化があるが、アメリカの連邦の公教育政策の実施過程を実証的に検討することは所期の目的であるので、それらに関連するデータ、研究者の調査、研究報告などを収集することができた。2月から3月にかけてのオハイオ州オックスフォード市でのヒアリング調査や、カリフォーニア州バークレーでのヒアリング調査を実施することができた。連邦政府の教育政策は不要と説く共和党など保守グループの主張に賛同する研究者もかなりいることが分かった。その理論的、思想的根拠もアメリカの建国以来の根深い連邦国家観をめぐる対立があることが分かった。NCLB法関連の文献、資料に加えて、アメリカの連邦の役割をめぐる論争、公教育とアメリカ社会像との関連などの論文を読み、政治と教育の問題点を発見することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年の調査研究によりオバマ政権の教育改革政策は、大統領当選当時に比して、連邦財政の逼迫などで財政支出を伴う改革は遅れることになってきていること、州や郡、学区等の間での取り組みの格差が顕著となってきていることなどが大きな変化をもたらしている。本年は大統領選挙の年であり、交代することがあれば、大きく研究対象の変化ともなる。しかし、本課題の研究では、オバマ大統領の連邦教育改革政策の進捗状況と手法等を教育法の観点から研究調査することである。連邦の教育改革政策のひとつのターゲットは、子どもの教育格差の解消であるので、州や郡、学区で顕在化してきている格差解消に向けての連邦教育政策のインパクトに関する資料収集をいくつかの地域を特定して調査したい。2年目の計画としては、引き続き連邦の教育政策を法制の制定、改定を含み調査すること、格差貧困地域については、ミシガン州ミシガン州立大学クリスティ ボウマン教授等を訪ねてヒアリングをする予定である。現状等について、研究ノート等として発表をする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ収集と整理を担当するための雇用 15万円、アメリカ調査出張(ミシガン州立大学を中心に、ウィスコンシン大学、カリフォーニア大等)40万円、アメリカ教育改革研究を行っている研究者および研究会(名古屋、大阪に各一回研究打ち合わせ等で出張)、12万円、アメリカ教育政策関連の書籍等を購入 3万円 計70万円平成23年度の執行計画は、4月に支払うべき経費が残っているため、次年度使用額が存在するように見えるが、実際には、全額執行予定である。したがって、次年度研究は、当初計画とおり進める予定である。
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