2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本的人材育成システムにおける企業内教育と職業能力開発の展開に関する実証的研究
Project/Area Number |
23531067
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
永田 萬享 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (70155935)
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Keywords | 企業内教育 / 公共職業訓練 / 委託訓練 / 学卒者訓練 |
Research Abstract |
本研究で明らかになったことは、第1に、わが国の人材育成システムは企業内教育の著しい突出とその偏重を特徴としていたが、90年代以降、転換期を迎えている。終身雇用制の崩壊や少数精鋭主義化、あるいは成果主義の拡大は、これまでわが国の人材育成システムの中核に位置していたOJTをベースとする長期間にわたる教育訓練を困難にしている。言い換えれば、従来の一括採用した学卒労働力を企業内で長期間かけて育成するシステムから、学校や公共職業訓練を含む多様な教育機関で育成するシステムへの転換が必要になっていることである。 第2に、90年代以降、不安定雇用者の増大が著しく進行していることである。彼らの多くは企業内教育を受けられず、本格的な教育訓練のないまま放置されている。一方、人材育成システムの転換期・混乱期を迎えて、個人主導や個人責任型のキャリア形成が進行している。彼らが教育訓練にかける費用は教育訓練市場の4割にも達し、大きな負担になっている。 第3に、その一方で、公共職業訓練を取り巻く状況も厳しくなってきている。公共職業訓練には、地方(都道府県)が行う普通職業訓練と国(雇用・能力開発機構)が行う高度職業訓練があるが、前者では地方財政の逼迫によってそのスリム化が進み、後者ではそれを担う雇用・能力機構が高齢・障害・求職者雇用支援機構に再編されている。 第4に、こうした日本的雇用システムの縮小・再編を受けて職業能力開発政策は大きく変容していった。企業主導型から個人主導型への転換である。 第5に、しかし、政策的に公共職業訓練の必要性が重視されることはなかった。重視・拡充されたのは民間教育訓練機関の活用による委託訓練であり、公共職業訓練ではリストラが進行し、訓練施設の統廃合が行われ、学卒者訓練の縮小が展開されているからである。
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Research Products
(4 results)