2011 Fiscal Year Research-status Report
幼児の図形による見立ての描画表現―年齢、環境、性差からの検討―
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23531080
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
島田 由紀子 和洋女子大学, 人間・社会学系, 准教授 (80369397)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 幼児 / チェコ共和国 / 見立て / 描画 / 年齢 / 環境 / 性差 / ことば |
Research Abstract |
幼児の図形による見立ての描画表現について、年齢差、環境差、性差を比較検討することで、イメージする力と創造する力の実態を把握しようする研究である。環境の検討としては、日本とチェコ共和国(以下、チェコ)を対象とした。チェコの教育や保育では、国として日本の教育要領や指針のように具体的には示されていないこと、幼児の描画表現や色の使われ方に違いがあることから比較対象としている。<研究実施状況> 日本の幼稚園、保育所で収集した見立ての描画表現の分類、検討を行った。日本の小学校(計155名)での、図形による見立ての描画表調査を2011年11月に実施。同様の調査を日本の調査と同じ条件で、チェコの幼稚園と小学校で行った(計282名)。調査は2012年3月1日から17日に実施した。また、本研究では「図形」と「色」の影響も含んだ見立ての描画表現の調査研究であることから、「図形」と「色」についての調査も補助的に行った(「三角ものを教えてください」という教示で、調査を行った。)色に関する嗜好調査はあっても、図形に関する先行研究は少なく、また両者についての幼児のイメージ調査はほとんどみられないことから、本研究の成果をまとめる上で、手がかりとなると考えている。<研究の成果> 平成23年度の調査結果をまとめた範囲では(現在、調査結果を検討している箇所もある)、以下のことが挙げられる。(1)年齢に応じて、図形の見立ての取り組み数、成立数ともに増加する傾向がみられた。(2)図形○(丸)は、年齢、性別、環境にかかわらず、他の図形よりも取り組み数、成立数ともに多かった。(3)チェコよりも日本の幼児の方が、取り組み数、成立数ともに多い傾向にあった。(4)性差では、自由画の特徴とは異なる場合もみられた(女児の乗り物の見立て等)。また、調査時によってバラつきもあり、再検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究がスタートする以前より、準備をしてきたことが理由として挙げられる。 「おおむね順調に進展している」最大の理由として、調査協力者や助言者の存在が大きい。調査協力者の近江源太郎(日本色彩研究所理事長 色彩学、造形心理学)氏からは研究方法や論文にする際の助言をいただき、大神優子(和洋女子大学 認知心理学)氏とは、同じ大学に所属していることから、日常的に研究についての意見交換が行うことができ、調査結果についても意見を求めることが可能な環境にあったことが助けとなっている。性差についても宇佐美明子氏(国立音楽大学 幼児教育)と定期的に意見交換を行っており、皆本二三江氏(元武蔵野女子大学・幼児教育)からも継続的に意見をうかがう機会が得られている。教育現場の調査先として、鈴木みゆき氏(和洋女子大学)からの紹介を受けることができ、短期間に調査を集中させることが可能となった。また、調査の際には、保育者養成課程に在籍する学生が同行したので、幼児、児童に対しても、充分な配慮のもと、実施することができた。チェコでの調査も、以前より複数回の調査実施経験を踏まえ、準備し、円滑に進めることができた。さらに、調査の調整役の山田春美氏(チェコ日友好協会、元カレル大学・日本語)が一貫して通訳翻訳を担当し、チェコ日友好協会からの協力が得られたことも大きい。 ひとりでの研究ではあるが、多くの研究者や協力者の支えによって、計画が円滑に進み、また調査協力をしていただいた研究者や、保育・教育現場に対し、フィードバックする予定になっていることも、計画的に進めることが可能となった要因であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究計画は概ね順調に行われていることから、今後の研究計画も予定通りに進めていくことになる。 <調査> 「日本」では、これまでの各調査用紙に対応した調査対象者の偏りを是正する必要があるので、その調整を行う。小学校では、図形の輪郭線に色がついた図形の調査用紙で実施する予定である。幼稚園、保育所では、これまでの調査対象者の、年齢と性を整理した上で、調査用紙(黒い輪郭線、色の輪郭線、面に色)を選択し、調査者数がなるべく均等になるよう調整を行い、実施する。「チェコ」では日本と同様に、調査用紙ごとの、調査対象者の年齢、性別を確認し、人数の偏りの是正に努める。問題点としては、日本の幼稚園や小学校より、規模が小さいので、一箇所の調査での収集できる数が少ないことである。より多くの収集をするための改善方法を模索している。そのひとつに、小学校や幼稚園以外の場所(博物館や美術館)で、日曜日に行われているアート系のワークショップでの調査実施を考えている。調査日程の調整の上、試みたい。 <調査結果の分類、整理、検討>調査結果のデータ化については、即時対応する必要がある。依頼できる内容については依頼し、円滑に進めていきたい。また、描画を分類する際には、複数の判断を求めることで、より客観的な結果を得られることになると考えられることから、ここでも研究者への協力を仰ぐ予定である。 <調査経過の報告>学会等での発表と並行して、調査協力に応じた小学校や幼稚園、保育所にも、報告すると同時に、現場の教員、保育者としての意見をうかがう予定である。また、平成23年度に行った研究報告に対する振り返りも行い、研究のまとめ方の見直し、組立ての改善から、次年度以降の調査研究につなげていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の<物品費><人件費・謝金>について、予定を下回る使用額となった。理由としては、研究開始当初、交付決定額が全額使用が確定していなかったことが挙げられる。そのため、予定していた辞書や新しい資料の入手、その翻訳を次年度以降とした。したがって、繰り越される研究費258,781円は次年度それらに充てる予定である。 研究費の使用の<物品費><旅費><人件費・謝金><その他>について、以下のように考え、使用する予定である。 <物品費>として、パソコン周辺機器等の購入を250,000円予定している。調査用紙の保管を紙媒体だけではなく、データとして保存することにより、今後の研究者間での意見交換や学会発表、また、調査協力園等へのフィードバックの際への活用、また大学の授業でも取り扱いが容易になり、さらに研究の活性化が進むと考えている。 <旅費>は調査を国内、チェコで実施予定、学会等での発表を予定しており、560,000円を計上している。 <人件費・謝金>は、主に、調査員、通訳や翻訳者、専門的な知識の供与、調査内容のデータ化、に使用する予定である。調査実施については調査員を複数依頼することで、短期間、短時間に敏速に行うことが可能となるため、幼児・児童の人数やクラスの状況に応じて配置する必要がある。さらに、チェコでの調査では、チェコ語―日本語間の通訳や翻訳することができ、さらに現地や各学校、園の教育や保育に精通している専門的な知識を持った研究協力者が不可欠である。調査終了後、紙媒体や記録されたものをデータ化する作業の依頼を計画している。人件費と謝金として350,000円の計上をしている。 <その他> 調査の依頼や結果報告等の通信費、調査用紙の印刷や、調査道具一式の運搬費、資料収集の通信費等として使用する。また、学会誌への投稿の費用としても予定しており、40,000円の計上をしている。
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