2013 Fiscal Year Research-status Report
保育実習における自己評価規準の開発―ルーブリック評価と心理学の観点から―
Project/Area Number |
23531081
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
沢崎 真史 聖徳大学, 児童学部, 教授 (80320703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 遊夏 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (70364974)
森 貞美 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (10337850)
細戸 一佳 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (90337775)
上田 智子 聖徳大学, 児童学部, 講師 (50334561)
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Keywords | 保育者養成 / 実習 / ルーブリック / ポートフォリオ / コンピテンシー |
Research Abstract |
保育者に求められる資質が高度化・多様化している現在、養成課程における実習の重要性は一層高まっている。しかし、実習における目標の設定や到達度の規準には曖昧な点が多く、学生が自らの学びの成果を具体的に把握することができず、自信を持ちにくくなってしまっている現状が見られる。そこで本研究は、ルーブリック評価による「保育実習自己評価規準」の作成、および実習ポートフォリオの設計により、学生が主体的に学ぶことのできる保育者養成プログラムを開発することを目的としている。 平成25年度は、まず第一に、平成23年度より継続している、実習における自己効力感や不安の変化に関する縦断的調査を行い実習への影響の分析を行った。第二に、近年注目されているコンピテンシー概念とそれに基づいて保育者に求められるコンピテンシーを特定しようとする諸研究を参照しながら、実習自己評価規準作成のためのルーブリック評価の項目の検討を行った。第三に、保育者の養成課程およびキャリア発達の中で、保育者がどのように資質能力を獲得していくのかを明らかにし、ルーブリック評価項目の作成につながる具体的行動レベルでの発達モデルを得ることを目的に、保育者養成の経験の多い保育士、元保育士に対するインタビュー調査を行った。その結果、養成段階においては、「子どもを理解し、信頼関係をつくる」、「保育を振り返る」能力を養うことが期待されていること、採用後に保育の経験を積み重ねることで資質能力を獲得することも期待されており、とくに3年目を重視していることが明らかになり、保育者に必要な資質能力の獲得には、時期的なずれや段階があり、また、必ずしも単線のステップで獲得されるわけではないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の入学生から縦断的な追跡調査を実施し、学年の進行にともない、実習における自己効力感や不安がどのように変化していくのかを調査し、それらが実習にどのように影響するかを分析してきたが、この研究については予定通り進行している。 一方で、一部の研究計画には変更または追加が生じている。第一に、「保育実習自己評価規準」に用いる、ルーブリック評価の項目の析出に向けては、近年注目を集めているコンピテンシー概念に注目することが不可欠であることが明らかになったため、コンピテンシー概念とその活用の可能性について検討する必要が生じた。第二に、保育実習における達成目標や到達度評価の基準を明確化し、ルーブリック評価の項目を作成していくにあたっては、保育現場との連携、すなわち、実習生が日常的に接する機会の多い指導保育者の影響を考慮する必要があることが明らかになった。そこで、保育者養成に携わった現場の保育者への調査をもとに保育者養成のプロセスで身につく資質能力を明らかにするために、実習生や新任の保育者の育成に携わってきたベテランの保育者へのインタビュー調査を実施した。また、実習日誌上で行われている指導保育者による指導・助言の文言の分析を企画し、データの収集・整理を行い、分析に着手したところである。このように、新たな調査の企画・実施を行ってきたため、当初の研究計画から変更が生じており、計画の遂行にやや遅れが生じている現状がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、研究最終年度にあたるため、これまでの研究成果の総括を行うとともに、「保育実習自己評価規準」の作成と、振り返り・自己評価のためのポートフォリオの開発に取り組んでいく。 まず第一に、初年度から継続している縦断的追跡調査の結果をもとに、入学時からの実習の積み重ねにともなって、学生の自己効力感、実習不安にどのような変化が生じるのか分析し、その成果を論文としてまとめる予定である。さらに、コンピテンシー概念や、保育者に求められるコンピテンシーに関する諸研究を検討した成果、および、保育者の専門的職業能力の獲得のプロセス、キャリア発達のプロセスについて、経験のある保育者を対象として行ったインタビュー調査の成果についても、論文化する。また、昨年度後半より、新たな研究方法として採用した、実習日誌に記録されている指導保育者の指導・助言の文言の分析については、学会報告を行う。 そして、これらの研究から得られた知見をもとに、「保育実習自己評価規準」のルーブリック評価の項目を析出し、規準の作成に取り組んでいく。また、学生自身が、規準に基づいて、実習での学びや自らの達成について振り返り、自己評価を行っていけるようなポートフォリオを開発する。 最終的には、作成した規準やポートフォリオに基づいて、実習を終えた学生たちに、実際に保育実習の自己評価を行ってもらい、自己効力感や実習不安との関係を分析するなど、規準の有効性について検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経験のある保育者を対象としたインタビュー調査を実施したところ、調査の指標として参照した保育者コンピテンシーとの整合に課題があり、改めて分析を実施することとした。そのため、平成25年度に予定していた研究発表およびシンポジウムの実施等を平成26年度以降に繰り延べることにし、最終年度には、研究報告、発表等の経費が当初の計画よりも多く必要であることから、平成25年度の予算の一部を繰り越している。 平成26年度は、研究発表の機会を増やし、シンポジウムも実施することで、平成25年度の繰り越し分を含め、予定使用額の全額使用を予定している。
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Research Products
(1 results)