2012 Fiscal Year Research-status Report
最新メディア教育を活用した幼小連携スタートプログラムの開発研究
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23531082
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
駒谷 真美 昭和女子大学, 人間社会学部, 准教授 (20413122)
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Keywords | メディア教育 / 幼小連携 / 幼児教育 / 児童教育 / 最新メディア / スタートプログラム |
Research Abstract |
平成24年度は、23年度に構築したメディアの「受け手・使い手・作り手・送り手」の関係性を強化した「接続期」スタートプログラムを元に、研究実施計画通りに教材制作と【接続期前期】の実践を行った。 24年度前半、本研究の目的である最新メディア教育を推進するため、研究対象年齢に適したタブレットとアプリの基本的操作方法とメディアを活用した表現方法の2種類の教材を制作した。株式会社ロイロは、本研究の主旨に全面的に理解と協力を示しタブレット用アプリ「ロイロノート」(小学生用の写真・動画・テキスト制作ツール)のパイロット版を無償提供してくれた。駿河台大学メディア情報学部間島貞幸准教授と間島研究室の学生達が、操作方法と表現方法の映像制作を担当した。操作方法の教材では、「写真やビデオを撮る」「順番につなげる」「編集する」「文字を入れる」「声を入れる」「音楽を入れる」「発表する」「作品を書き出す」を独立した8パートで構成し汎用性を高めた。表現方法の教材では、「写真を撮ろう」「音を入れてみよう」「メッセージを伝えよう」「文字を入れよう」の4パートで構成し、接続期どの期においてもメディアの「受け手・使い手・作り手・送り手」の道筋を理解できるプロセスにした。完成した操作方法と表現方法の映像教材は、タブレットにアップし参照できるようにした。 24年度後半、都内の大学附属幼稚園2園に研究協力を依頼し、【接続期前期】の年長児クラスを対象に、タブレットを活用した表現活動を実践した。園児の実践前に、教員研修をかねたワークショップを企画実施した。参加した教員は、タブレットを用い、操作方法と表現方法を学び、実際に制作体験をした。年長児の活動は、4人1グループでタブレットを1台使い、幼稚園の思い出を個々にアプリで写真に取り、音声メッセージを入れた1分間の作品をグループごとに発表し、メディアを活用した表現を体得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の全体的達成度は、「おおむね順調に進展している」と判断する。 その主な理由として、幼小連携スタートプログラムの教材制作が完成し、【接続期前期】での実践ができたからである。平成24年度中もタブレットとアプリは劇的に普及し、研究対象の幼稚園年長児の多くも日常的に接触していた。その現状を踏まえた本教材の制作と実践は、時期的に妥当であったと考える。接続期の子どもを対象にした最新メディアの操作方法とメディア情報リテラシー教育の表現方法の教材を制作したことは、25年度の【接続期中・後期】実践にも有意義である。 平成24年度は、教員向けワークショップを実施した点も意義がある。園児よりも大人の教員の方が、最新メディアに対する親和性が低い。そこで、教員の不安や先入観を払拭するためにも、メディア情報リテラシー教育の概念や教授法を学ぶ機会が必要不可欠であった。教員研修には、駿河台大学メディア情報学部の学生、昭和女子大学初等教育学科の学生、玉川大学の学生も参加した。【接続期前期】の実践では、教員は、学生達と共にファシリテーターとして子どもの活動を援助した。 【接続期前期】の実践では、子ども達が最新メディアを駆使し「受け手・使い手・作り手・送り手」全てを体験したことに意義がある。まず、グループごとにタブレットの操作を練習しマスターした(最新メディア機器を体験)。次に、表現方法の教材を視聴しながら、アプリを用いた制作活動を行った(情報収集+取捨選択+制作を体験)。具体的には、「幼稚園での思い出」(写真・絵・造形物等)を各自撮影し、グループで話し合いながら、1分の作品(数人のオムニバス)になるようにまとめた。最後に、作品をプロジェクターに投影しグループごとに発表できた(情報発信を体験)。本実践において協同的遊び体験の多様性が認められ、【接続期中・後期】への学びに繋がったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度前半は、24年度にビデオカメラやICレコーダーで記録した【接続期前期】の実践結果を分析する。また小学1年生を対象にした【接続期中・後期】の実践も研究協力先の大学附属小学校にて継続して行う予定である。幼稚園と小学校の許諾を得た作品は、Unicef One Minute Videoのプロジェクトに応募することも検討している。【接続期中・後期】の実践結果を同様に分析した上で、スタートプログラム(指導計画・教員研修・教材)として、以下の観点から研究の成果をまとめる。 ①企画構想の段階で、スタートプログラム(指導計画・視聴覚教材・ワークショップ)が、MIL教育を初めて実践する現場の教師のどのようなニーズに応じることができたか。スムーズな実践を約束できたか。②実践の段階で、本プログラムを通して、幼稚園・小学校の子どもたちはどのようにMILを促進できたか。特に、幼小連携カリキュラムの3つの軸である、自己と社会性の育ち(自己抑制・気持の成長が核となり、道徳・特活へ発展)、学びの芽生え(体験の多様性・関連性から学びの筋道作りに寄与し、教科教育の体験的基盤を形成)、協同性の育ち(協同的遊び・学びから授業活動の基本へ発展)とMILの発達を結び付け、相互に促進できたか。③評価の段階で、本プログラムの実践結果から、どのような長所短所が表出したか。今後プログラムの汎用化、普遍性はどの程度高められるか。④企画構想から実践の段階において、メディア情報学・初等教育・幼児教育を専攻する大学生が教材制作や実践補助として主体的に関わることで、MILを獲得し専門性を養うことができたか。 25年度後半は、国際学会での発表や学術誌投稿のため論文執筆を行い、研究成果を公にするよう努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度である平成25年度の研究費は、第一段階として、【接続期中・後期】の実践費用と【接続期前期】【接続期中・後期】の実践を数台のビデオカメラとICレコーダーで撮ったデータの分析(テープ起こし)に使用する。第二段階として、24年度は教材制作と【接続期前期】実践に専念したため、行えなかった研究発表を積極的に国際学会(米国のメディアリテラシー教育国際協会など)で公開していく。
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