2011 Fiscal Year Research-status Report
米国の州と市長による教育行政の包摂と学校民営化政策の導入に関する調査研究
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23531087
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小松 茂久 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50205506)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育統治 / 米国 / チャータースクール |
Research Abstract |
本研究の特色の一つは、米国の教育統治の特質が学区教育委員会主体の地方分権的で自律的なものから、州や市長を中心とした中央集権的なものに移行する実体を明らかにすることである。もう一つは、公立学校を営利・非営利の学校運営組織に外部委託することによって、地方教育当局が直接的ではなく間接的な統治主体となる事例を明らかにすることである。そのために、米国の州や市長による学区教育統治の直轄管理の実体を現地調査を踏まえて考察分析することが必要となる。平成23年度は、教育民営化の先進州と考えられるミシガン州を訪問して、同州におけるチャータースクールの設置と運営についての聞き取り調査を実施した。同州は他州と比較すると知事部局が積極的に教育改革を進めている州でもある。改革の一例として指摘されることが多いのはチャータースクールの設置数の多さである。そこで、訪問の際にはあえて営利によるチャータースクールと非営利によるチャータースクールの2校を抽出して、両校の運営上の相違や共通点を導き出すべく工夫を行った。さらにニューヨーク市のチャータースクールを訪問した。2001年よりニューヨーク市は市長主導の教育統治を実施して、教育改革を積極的に進めており、その一部に、民営化が含まれる。同チャータースクールでは、伝統的な教員養成のルートではないルートで、すなわちNPOによる教員養成プログラムを経た教員を採用している。当該学校の教員にインタビューを試みて、自身の教職経験について聞き取りを行った。これらのインタビューを元にして、州や市長による直接的な教育統治の持つ意味について一定の見通しを持つことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していたミシガン州のチャータースクールへの訪問調査を実現することができ、インタビュー結果と、文献研究で得られた知見をつきあわせて、米国の教育統治改革と民営化の動向との関連性について、ある程度の見通しを持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は教育民営化の典型的表出としてのチャータースクールの設置と運営について継続的に取り組む。チャータースクールを積極的に設置・運営している都市として着目すべきなのはシカゴとニューオリンズである。シカゴは、2003年から実施されている新たな教育改革プログラム(ルネッサンス2010)の中で、既存の学校(特に低学力学校)を閉鎖して新規に児童生徒の入学の際に選抜性の高いチャータースクールを設置している。ニューオリンズはハリケーンカトリーナの後の都市再建で非常に多くのチャータースクールを設置している。この二都市の文献研究を進めるともに、現地調査を実施することで、州や市長指導の教育改革と教育民営化政策の関連性について考察を深める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年の研究費は米国の2都市の旅費・交通費におよそ半分ほどを充当する予定である。そのほかに図書費(洋書および和書)と消耗品費を予定している。本研究が成果を出すためには米国の現地調査が不可欠であり、研究費の多くが旅費・交通費に充当される。
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