2011 Fiscal Year Research-status Report
高等教育における「地域性」の現代的意義に関する研究:大学の人材養成機能に注目して
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23531104
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
猪股 歳之 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (60436178)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 高等教育 / 地域性 / 人材養成 |
Research Abstract |
高等教育の地域的な性質・機能は、高等教育機関の必須の要件とされる普遍的な性格と対立的な関係から捉えられることが多かった。しかしその一方で、沿革等からも高等教育機関が拠って立つ基盤として地域性を重視する立場も常に存在してきた。そして近年、高等教育機関と地域との連携・協働がさらに活発化している。本研究は、高等教育における"新しい"地域的性質・機能の意義を検討することを目的としている。 本研究では、 (1)大学の沿革に見られる特徴的な「地域性」の抽出分析、(2)既存統計を活用した就業構造の地域別特質とその変化についての分析、(3)大学の「地域性」の変遷とその背景についての分析、(4)近年具体化しつつある大学の教育・研究プログラムや組織などにおける「地域性」発現のプロセスに関する分析、(5)個別機関についてのケーススタディ、の主に5つの分析から研究課題の遂行を計画している。 まず、大学の沿革に見られる特徴的な「地域性」の抽出を目的とした分析では、旧制専門学校の設置過程に注目し、教育史関連図書・資料や各大学・学部の記念誌類の収集・分析を行った。出自の時点で高等教育機関に内包された「地域性」の抽出と、その整理とともに、その後の発展過程で「地域性」がどのように再構築されたのか検討するため、継続して実施する。 また、就業構造全体の変動下における大学卒業者の就業状況変化についての検討においては、既存統計を活用した就業構造の地域別特質とその変化についての分析を行った。大学の量的拡大は同時に大卒者・大卒就業者の増加、ひいては産業構造の変動をも招く。特徴的な「地域性」を持つ大学・地域を対象としたケーススタディの実施、およびこの「地域性」をより広い対象からとらえるために、上記の沿革史分析に加え、就業構造に生じた変化を地域別に把握するための検討を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
東日本大震災の発生により、その対応や復旧へ向けた業務等で多大な時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)大学の沿革に見られる特徴的な「地域性」の抽出分析:設置の際に地域の実情を反映しつつ、長い伝統を有し、制度的な変遷も経ている旧制専門学校は本研究にとって好例である。これらの学校の発展過程において、「地域性」がどのように再構築されたのか検討することにより、大学における特徴的な「地域性」を抽出・整理する。(2)既存統計を活用した就業構造の地域別特質とその変化についての分析:就業構造に生じた変化を地域別に検討するとともに、就業構造全体の変動下における地域と大学の関係を人材養成の側面に注目して検討する。(3)個別機関についてのケーススタディ:(1)と(2)の分析から明らかとなった特徴的な「地域性」を持つ大学・学部を対象として、「地域性」の変遷過程とその背後にある要因について時系列的に検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、(1)大学の沿革に見られる特徴的な「地域性」の抽出分析と、(2)既存統計を活用した就業構造の地域別特質とその変化についての分析を進めるための資料や機材の購入、および(3)個別機関についてのケーススタディを実施するための経費として使用することを計画している。
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