2012 Fiscal Year Research-status Report
高等教育における「地域性」の現代的意義に関する研究:大学の人材養成機能に注目して
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23531104
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
猪股 歳之 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60436178)
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Keywords | 高等教育 / 地域性 / 人材養成 |
Research Abstract |
本研究では、 (1)大学の沿革に見られる特徴的な「地域性」の抽出分析、(2)既存統計を活用した就業構造の地域別特質とその変化についての分析、(3)大学の「地域性」の変遷とその背景についての分析、(4)近年具体化しつつある大学の教育・研究プログラムや組織などにおける「地域性」発現のプロセスに関する分析、(5)個別機関についてのケーススタディ、の主に5つの分析から研究課題の遂行を計画している。 なかでも(4)教育・研究プログラムや組織などにおける新しい「地域性」の発現プロセスに関する分析においては、微生物学や発酵学の分野に着目し、地域の産業を踏まえた教育課程・組織を構築しつつある大学の関係者を対象とした聴き取り調査を続けてきた。いずれの機関においても、教育研究課程や組織設置のために導入した経費そのものが持つ条件等により与えられることになる一定の方向性に加え、それぞれの地域における発酵・微生物関連産業の規模などがその教育研究課程の性格に密接に関わっていた。前者に関しては経費の時限の有無や適用可能な地域的範囲など、後者に関してはその課程修了後の就職可能性、人材需要の展望などが教育課程や組織を性格付ける条件として大きな意味を持っていた。大学や社会が置かれた環境を反映し、現実的な側面からの微調整を加えながら形作られてきた大学の新しい「地域性」は、教育課程や組織を単位として地域(産業)との連携を強化するという点で、分析(3)大学の「地域性」の変遷とその背景や、分析(5)個別機関についてのケーススタディとも関わり、本研究における重要な要素となっている。人材養成の状況やそこで生じている新たな展開を把握するためにも、これまでに調査を行ってきた機関を対象とした聴き取り調査も継続して実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の初年度は東日本大震災直後の時期に当たり、事態への対応や復旧へ向けた業務等により研究計画が大幅に遅れた。当該年度はその遅れを取り戻すべく研究を進めたが、震災による初年度の計画遅れの影響を完全に克服するには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度までの研究により浮かび上がってきたのは、地域の状況を踏まえた新しい教育課程・組織を設置する際に、各機関の既存の教育研究課程や学問分野の特性といった所与の条件に加え、卒業者に対する需要を左右することになる市場規模や、新プログラム・組織設置を可能にする資金そのものが持つ性格などが、新しい教育課程や組織を規定する条件として強く機能しているという事実である。教育研究機関としての大学の性格と、地域の産業が直面している課題や大学への期待とのマッチング、そしてその結果としての新しい教育課程・組織の設置において、それらを性格づけるさまざまな条件が与える影響について、ケーススタディを積み重ねながら検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、 (1)大学の沿革に見られる特徴的な「地域性」の抽出分析、(4)近年具体化しつつある大学の教育・研究プログラムや組織などにおける「地域性」発現のプロセスに関する分析、などを継続して実施し、それらの結果から抽出された大学等を対象とした(5)個別機関についてのケーススタディ、を実施するための経費として使用することを計画している。
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