2011 Fiscal Year Research-status Report
日本固有の社会関係資本の概念と測定尺度の検討―子育て・教育問題の社会学的研究
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23531111
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
垂見 裕子 お茶の水女子大学, 人間発達教育研究センター, 特任助教 (10530769)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 社会関係資本 / 質的調査 |
Research Abstract |
米国と日本における社会関係資本と教育達成に関する量的調査のレビューを行い、社会関係資本の概念・視角・操作的定義・測定尺度(質問項目)、分析枠組みを比較した。米国においても、社会関係資本には「決定版」といえる尺度がないが、教育社会学の領域における実証研究では、以下のような論点が議論されてきた。第一点目は、社会関係資本の定義は、集合的な資源として捉えるよりも、個人が活用する資源と捉えるべきではないかという点である。二点目は、社会関係資本の尺度として、つながりの密度(構造)ではなく、つながりから得られる資源(中味)を計測する必要があるのではないかという点である。例えば、前者の尺度には、「親の友人の数」、「学校行事に参加した回数」などが含まれるが、後者の尺度には、「進路に関する情報」、「子どもをほかの親に預ける」などが含まれる。三点目は、社会関係資本と教育の関係を実証する際には、資源が学校教育と適合するか否かの視点が欠如しているという点である。例えば、母親と祖母の間の信頼関係が強くても、祖母が「女子には教育は必要でない」という意識であれば、その信頼関係は、子どもの学力に何ら正の影響を及ぼさない。米国の量的調査の蓄積で議論されてきた事項を整理することにより、日本における社会関係資本の定義と尺度化を考える際に考慮すべき点が明確になった。質的調査のサンプリングの準備として、東京都各地域の社会経済指標に関する統計データを収集、整理した。それを基に、二つの区を選定し、各地域それぞれ対象校を一校選定した。依頼文書、説明資料を作成し、対象校を訪問し、校長先生、教頭先生と打ち合わせを行った。第一候補の対象校に調査協力を断られたため、新たに対象校を選定しなおした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象校の選定に時間がかかったこと。また研究対象校の承諾を得るのに時間がかかったこと。
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Strategy for Future Research Activity |
対象校の調査協力の承諾を得られるように、学校の負担を減らす。具体的には、非参与観察は行わなず、インタビューを中心に行う。インタビューを行う際には、参加する親に、本研究ではプライバシーの侵害にならないよう細心の注意を払うこと、また本研究に参加する意義(学校や親の現状を分析することにより、学校と親の連携の在り方や、家庭内教育の改善策を考えるきっかけとなること)を強調する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
インタビューの実施・分析:(6~3月)個別インタビューをとおして、親が、他の親や、学校や、コニュニティとどのような機会を利用してつながりを構築しているのか、何故様々な活動あるいはグループに参加するのか・しないのか、そのつながりから得られた資源に対してどのような意味づけをしているのか、それらの資源をどのように子育てや子どもの教育に活用しようと意図しているのかを聞きとる。対象者には、過去1カ月を振り返り、日々のルーティンを描写してもらう。各対象者を3回(計60回)インタビューする予定である。すべてテープに録音し、テープ起こしを行う。⇒テープ起こし費を要する。(11月~12月)学校教員や、地域と学校を結ぶコーディネーターや、子育てサポーターを対象としたインタビューも行い、どのようなネットワークやリソースの提供が意図されているのか、利用状況などを聞きとる。観察から得られるデータとインタビューから得られるデータは、データおよびデータ解釈のクロスチェックにも使われる。⇒テープ起こし費を要する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Child Development in Developing Countries: Introduction and Methods2012
Author(s)
Bornstein, M, Britto, P. R., Nonoyama-Tarumi, Y., Ota, Y., Petrovic, O. and Putnick, D. L.
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Journal Title
Child Development
Volume: 83(1)
Pages: 16-31
Peer Reviewed
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