2012 Fiscal Year Research-status Report
日本固有の社会関係資本の概念と測定尺度の検討―子育て・教育問題の社会学的研究
Project/Area Number |
23531111
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
垂見 裕子 早稲田大学, 高等研究所, 准教授 (10530769)
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Keywords | 社会関係資本 / 教育社会学 / 保護者と学校と地域の連携 / 家庭の教育力 |
Research Abstract |
本調査は、小学生の子どもを持つ親の社会的関係(つながり)がどのように構築され、それらのネットワークを通して得られた資源を親がどのように子育て・子どもの教育に活用しているのかを把握することにより、近年問題視されている家庭や地域の絆の弱体化、子育ての孤立化、家庭の教育力の低下などの問題に対して、処方箋を得ることを目的とする。 本年度は、対象校を社会経済状況の基準から選定し、各学校を訪問し、校長と打合せを行い、研究の目的・設計・方法を説明した。3つの公立小学校に断られ、4校目で承諾を得て、2月に開始したが、部分実施にとどまった。 さらに5校目で承諾を得て、校長、PTA会長の協力を得て、教員1名及び保護者5名のインタビューを実施することができた。保護者は適宜フォローアップインタビューも行った。学校と保護者、保護者同士の関係、学校と地域の関係性がどのように構築され、それらのネットワークを通して得られた資源を親がどのように子育て、子どもの教育に活用しているかを聞きとった。インタビューはすべてテープ起こしを行い、分析を開始した。 また、対象校の区で、子育て支援やつながりを構築する立場にある行政や専門家(小児科、民生委員など)を整理し、関係者リストを作成し、インタビューのアポを入れた。 また、同様の研究を過去に実施しているSuet-Ling Pong教授が6月に来日したため、研究構想に関して助言を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象校の選定に、予想以上に時間を要したため。センシティブな保護者がいるため、保護者の選定、保護者のインタビューは避けたい、また教員にこれ以上負担をかけたくないという理由から、4校で調査を断られたたため。また調査を実施した学校でも、校長の異動があり、説明に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
対象校(校長、PTA会長)の協力を得ながら研究を進める。テープ起こしは業者に委託する。教育社会学者Douglas Willms教授は、カナダで同様の社会関係資本の研究を行っているので、プロジェクトの進捗を共有するともに、比較の視点を入れて議論を行う。5月末に来日予定。 (1)A校のデータ分析:2012度末にインタビューを実施したA校のデータ分析を行う。適宜、追加インタビューを行う。以下の研究課題に基づき、データを分析する。保護者の学校参加や子育てネットワークなどの場では、どのようなつながり(社会的関係)が構築されているのか。そこで、どのような資源(情報、信頼関係、規範)が生成されているのか。親はそれらの資源を子どもの教育にどのように活用しているのか。 (2)区の家庭教育支援チームと打合せを行い、区の子育てサポートリーダーや小児科医などの専門家にインタビューを行う。どのようなネットワークやリソースの提供が意図されているのか、利用状況などを聞きとり、上記データ分析を補完する。 (3)B校・C校・D校の選定・データコレクション:ネットワークを通して対象校を選定し、各学校を訪問し、校長と打合せを行い、研究の目的・設計・方法を説明、協力が得られる学校を対象校と定める。教員1名と保護者5~10名にインタビューを行う。インタビューはすべてテープに録音し、テープ起こしを行う。 (4)A校・B校・C校、D校のデータ統合:4校のデータを統合した上で、以下の研究課題に基づき、データを分析する。①親の社会関係資本の質、親の社会関係資本の子どもの教育達成への影響力は、家庭の経済的・文化的資本により異なるか。②日本社会の現実を踏まえて、日本では、社会関係資本という概念はどのように定義され、どのような尺度(質問項目)で計測されるべきか。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
テープ起こしは業者に委託するため、その他費用として使用する。 また質的データの分析のためのソフトや関連図書を購入する。 分析結果を、学会で発表するため、出張旅費として使用する。
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