2012 Fiscal Year Research-status Report
大学入試にみる能力観とエリート像-日・米・仏の比較からー
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23531116
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 雅子 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20312209)
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Keywords | バカロレア / 大学入試 / 国際比較 / 国際オプションバカロレア / フランス |
Research Abstract |
平成24年度は、①前年度に行ったフランスのバカロレア準備教育の授業観察(哲学・文学・地理歴史)およびリセ教員のインタビューのテープ起こし、②国際オプションバカロレアの招聘視学官としてリヨン市のリセ・アンターナショナルにて文学・地理歴史の口述試験の立ち会いと論文チェック及び、③同行にてアングロフォン、ドイツ、イタリア、ポーランドセクションのセクション長に、自国の大学入試・準備教育とフランスのバカロレアの違いをインタビューした。④また日本の入試とその準備教育を探るため、入試の歴史と国語・歴史入試の特徴を文献調査からまとめ、愛知の県立高校にて授業観察と教師へのインタビューを行った。 バカロレアの準備授業と教師へのインタビューからは、哲学、文学、地理歴史とも、バカロレア試験における論文の「問い」を中心に、「問い」に答えるためにどのように履修した内容を編集し、論を組み立てるかを到達点として授業が行われていることが明らかになった。教科書を選択する場合も、いかに良い「問い」が問われているかが選択の基準になるとのことである。哲学や文学のみならず、日本では暗記ものと言われている歴史においても、「問い」を使って歴史的出来事の「意味付け」を考える、資料を組み合わせつつ解釈を構築していく授業が観察された。またフランス同様大論述問題を入試・中等教育修了試験で課す他のヨーロッパの国々と比べても、個人の意見を表に出さず文献資料から厳密に弁証法を適用して論じるフランス式論文とその厳しい訓練は際立っていることも明らかになった。名古屋市における授業観察とインタビューからは、授業で養うべき能力が変わっても入試の形態が変わらなければ、授業も変わらない事が明らかになった(例えば英語における「話す」能力も3年時では消える事等)。入試の準備教育が高等教育の基礎作りになる入試形態を考える事が急務である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
24年度は、①昨年度にフランスで行った調査のテープ起こし、及び文献調査を行い、さらに②フォローアップの調査を6月にフランスで行った。ここで、国際オプションバカロレアの調査とともに、フランスと他のヨーロッパの国々の入試と入試への準備教育についてのインタビューも行う事が出来た。また、②日本における入試とその準備教育の文献調査を進めるとともに、県立高校の教員にインタビューを行うとともに授業観察を行った。③勤務校の附属高校における国際バカロレアプロジェクトのメンバーとして、バカロレア、国際オプションバカロレア、国際バカロレアの比較を行う機会を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、アメリカのSAT(Scholastic Apptitude Test)の歴史的経緯の文献調査と、実際の問題分析を行う。また、フランスのバカロレア調査のまとめとして、前年度に引き続き授業観察とインタビューのテープ起こしを行うとともに、2年間の調査で残された疑問・課題に答えるためにフランスの観察校で最終調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アメリカのSATの問題集および歴史文献の図書費、および総括調査のためのフランスリヨン市の調査旅費および滞在費(約2週間の滞在)。
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