2013 Fiscal Year Research-status Report
大学入試にみる能力観とエリート像-日・米・仏の比較からー
Project/Area Number |
23531116
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 雅子 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20312209)
|
Keywords | バカロレア / 大学入学資格試験 / フランス / 能力観 / 高等教育への接続 / 教育と社会の接続 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日・米・仏3カ国の大学入試の問題分析とその準備学習の調査を通して、各国の試験ではどのような方法でいかなる能力を測っているのか、それは初等・中等教育及び社会で求められる能力といかに関係するのかを3カ国の能力観のモデル化を試みて明らかにすることにある。特にフランスに代表されるヨーロッパ型の大論述問題試験の分析と公教育における準備学習の実態をアメリカモデルとは異なる新たな選択肢と示すことが研究・調査の中心となるため、26年度は3月に渡仏し、バカロレアの模擬試験(バック・ブラン)とそのフォローアップの授業観察及び、哲学、歴史、文学(フランス語)、ラテン語の高校最終年度のバカロレア準備を行う授業観察を行った。併せて初等・中等の論文作成の発展的過程を見る為に初等と前期中等教育のフランス語の授業観察も行った。その内容的発展を文献により確認するため、前期中等教育修了試験の問題集及び内容のリストを購入した。文献調査を行ううちに、バカロレアで使われるフランス式論文形式(dissertation)の基本(サンテーズ)は、公務員試験のみならず一般企業の試験においても用いられている事がわかり、バカロレアは高等教育への接続とともに社会との直接的な接続を果たしていることが明らかになった。公務員試験や一般企業においても求められているのは、弁証法を基本とした分析の方法知であり、模擬試験のフォローアップや授業においても、強調されるのはこの点であった。これがフランス社会で最も重視される能力といえる。本年度の調査では、学校教育と社会とのつながりが文献(公務員試験および企業の試験におけるサンテーズの使用の型と訓練法)と授業観察により検証できたことが大きな収穫であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3カ国比較のうち、日本とフランスの調査と文献分析はほぼ終了し、アメリカの大学入試問題(SAT)の分析も終わったが、アメリカにおける準備教育の調査がインタビューのみに終わってしまった。予定していた訪問学校とのスケジュールが合わずやむおえない状況であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はアメリカの学校との調整を行いつつ、これまでの研究成果をまとめて論文にする作業を引き続き行う。7月に開催される世界社会学会の発表および英語論文の執筆に注力する。さらに9月松山市で開催の日本教育社会学会で調査結果の報告を行う。米国の高校との調整を行いつつ、実地調査を補完するインタビューと文献調査及び試験問題の分析をまとめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画では昨年度はアメリカでの学校調査を予定していたが、調査先の高校(Phillips Academy, Andover校)との調整がつかず実施できなかったため。 昨年度未使用額については以下の3つの事柄で本年度すべて使用する。①引き続きアメリカの調査予定校との調整を行い、本年度中に学校調査を行ってその旅費と滞在費に使用する。②さらに英語論文として3カ国比較のまとめを行い、その英語論文校正費と論文執筆のための図書購入費として使用する。③また、7月に横浜で行われる世界社会学会で発表を行うための、学会登録料及び旅費・滞在費として使用する。④9月に松山市で開催される日本教育社会学会にて調査結果の報告を行うための旅費・滞在費として使用する。
|