2012 Fiscal Year Research-status Report
学力向上政策における移民の教育に関する比較研究―ドイツとスイスの事例から―
Project/Area Number |
23531122
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
中山 あおい 大阪教育大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00343260)
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Keywords | 学力向上政策 / 移民の教育支援 / スイス / ドイツ |
Research Abstract |
今年度は、23年度に引き続き、スイスの学力向上政策に重点を置き、バーゼルでの訪問調査を行った。前回の調査では、ドイツと同様にスイスにおいてもカントン(州)間の標準化が進められていることがわかり、前回調査したチューリッヒと比較するために移民が急増しているバーゼルでの取り組みを調査することで、カントンの教育政策や実践の独自性を把握するとともに、それが標準化の動きにどのような影響を受けながら展開しているのかを探った。 具体的には、(1)バーゼル教育省の移民教育の担当者にインタビュー調査を行い、移民の子どもの教育状況と教育支援の状況の一端が明らかになった。バーゼルにおいて特徴的なことは、移民の出身地の言語教育に力を入れ、多言語能力を身につけさせることが将来的に有益であるという教育方針が立てられ、実践に結びついていることである。また、(2)バーゼルで実施されていた学力テストの担当者にインタビューし、カントンレベルの学力テストから国レベルの学力テストへの移行の動きが把握できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度に、スイスの学力向上政策の全体の動きを把握したうえで、24年度はチューリッヒに続き、バーゼルの教育政策や移民教育の現状を確認できた。そのため、カントン(州)間の比較が可能になっただけではなく、さらに教育の標準化の動きとそれぞれの州における対応の違いがわかった。例えば、バーゼル州は移民の多言語教育に力をいれることで学力の向上も促そうとしていることや、学力テストはカントンでの独自なものから、国レベルで実施する方向にあることが判明した。 このように、学力向上政策においても、カントンにより多様な実践がある一方で、標準化の動きのなかで共通しているスイスの教育の一端が明らかになった。しかしながら、今年度は、他の言語圏のカントンでの調査は行えなかったため、次年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
24前年度までに実施したチューリッヒとバーゼルの教育省のインタビュー調査をもとに、25年度は、(1)それぞれのカントンで教育政策がどのように実践に活かされているのかを、学校現場を訪問調査することで明らかにしたい。また、(2)教師へのインタビューとともに、(3)教員養成段階で移民の子どもの支援に関する講義やカリキュラムがどのように行われているのか、教員養成大学での訪問調査を行う。また、他の語圏以外での取り組みを調査して、学力向上政策や移民支援におけるカントン間の相違を把握するととともに、多様性のなかで進展している標準化の動きを明らかにしたい。そして、移民の教育という観点から、ドイツの学力向上政策と比較し、研究の総括を行い、その成果を研究会や論文等で公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に引き続き、バーゼルやチューリッヒ等を訪れ、学校訪問調査や教員養成大学での聞き取り調査を行う(海外旅費)。さらに、他言語圏とドイツでの調査も行い(海外旅費、通訳謝金:「前年度繰越金」)スイスとドイツの比較を行う。 海外の聞き取り調査結果は、テープ起こしや資料整理(謝金、その他)を行い、また研究成果を国内の学会や研究会で発表する(国内旅費)。
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Research Products
(1 results)