2011 Fiscal Year Research-status Report
クロス・カルチュラル・キッズの教育戦略の応用可能性
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23531124
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
渋谷 真樹 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (80324953)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スイス / 中国帰国者 / 帰国児童生徒 / 国際結婚 / 教育戦略 |
Research Abstract |
本研究は、(1)駐在員家庭と国際結婚家庭の教育戦略や背景を明確化し、(2)中国帰国者家庭の教育の現状を把握した上で、(3)(1)で得た教育戦略を地域の学びの場で中国帰国者家庭に応用する可能性を検討することを目的とする。 本年度は、まず、(1)駐在員家庭へのインタビュー・データをグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いつつ分析した。その結果、年代を経るにつれ、情報量や教育機関の選択肢が増え、より主体的な教育戦略が取られていることが明らかになった。また、国際結婚家庭については、スイスの日系国際結婚家庭や国内の欧米系やアジア系、ロシア系の国際結婚家庭を取り上げ、文化資本とライフスタイル移民という観点からインタビュー・データを分析した。 次に、(2)中国帰国者家庭の教育の現状把握については、「中国にルーツを持つ子と親の会『小草』」(以下「小草」)の毎週の補習・母語学習活動や、年4回の懇親行事を参与観察した。その結果、子どもの学習状況や家庭の支援、地域の活動の実態が明らかになった。 その上で、(3)中国帰国者家庭へのアクティブ・リサーチを行った。本年度はまず、子どものための学習教材や教具を収集し、その一部を試験的に使用してみた。また、先行的に地域での支援活動をしている団体の関係者を招聘してワークショップを行い、活動の詳細や理念・背景等について情報交換を行った。 こうした研究は、これまで隔絶しがちであった駐在員家庭、国際結婚家庭、中国帰国者家庭を結び付け、移動の背景や階層的なちがいにも関わらず共通する、文化間移動者の経験を明らかにすることができる。その上で、教育達成がより困難な集団に、より有利な集団の戦略を応用・活用していく方法を明らかにするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)駐在員家庭と国際結婚家庭については、すでに調査済みのインタビュー・データの分析を行った。国際結婚家庭については25件のデータがあり、数的には十分である。また、国際結婚家庭が通うインターナショナルスクールを複数訪問し、参観や聴き取り調査を行った。(2)中国帰国者家庭の教育の現状把握のためには、「小草」で継続的に参与観察を行った。中国帰国者本人やその家族、「小草」スタッフに聞き取り調査を行い、教育の現状や課題を明らかにした。中国帰国者定住促進センターを訪問し、参観や聴き取り調査を行った。(3)子どものための学習教材や教具を収集し、その一部を試験的に使用してみた。また、先行的に地域での支援活動をしている団体の関係者を招聘してワークショップを行い、活動の詳細や理念・背景等について情報交換を行った。これらの成果を、異文化間教育学会で口頭発表した他、近刊の『越境する人々の教育戦略』(志水宏吉編、明石書店)に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)国際結婚家庭のインタビュー・データについては、複数の観点から分析を行う。その成果は、異文化間教育学会(母親の教育観・教育実践の変遷)、および、日本教育学会(学びの場の成立の背景)において発表する。(2)中国帰国者家庭の教育の現状把握のためには、引き続き、「小草」で継続的な参与観察を行う。また、「小草」のスタッフや保護者への聞き取り調査を行う。(3)アクティブ・リサーチを行うためには、先行して類似の活動を行っている団体について調査する。また、より体系的な教科教育、ゲームや視聴覚教材を取り込んだ語学教育、伝統楽器を用いた文化への興味を引き出す教育について、調査しつつ、実践を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額3万円は、購入物品が予定よりも安価だったために生じた。これを加えた翌年度の研究費については、以下のように使用する。物品費:関連する文献・教材・教具・文房具の購入旅費:聞き取り調査。学校訪問。学会・研究会参加。謝金等:データの整理補助。その他:インタビュー録音の文字化。データ入力。図表の作成。
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