2012 Fiscal Year Research-status Report
クロス・カルチュラル・キッズの教育戦略の応用可能性
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23531124
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
渋谷 真樹 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (80324953)
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Keywords | 教育学 / 教育戦略 / 中国帰国者 / 国際結婚 / 帰国児童生徒 |
Research Abstract |
本研究は、①駐在員家庭と国際結婚家庭の教育戦略や背景を明確化し、②中国帰国者家庭の教育の現状を把握したうえで、③①で得た教育戦略を地域の学びの場で中国帰国者家庭に応用する可能性を検討することを目的とする。分断されがちなマイノリティ・グループをつなぎ、社会的により成功しているグループの教育戦略をより恵まれていないグループに伝えていくという意義をもつ。 本年度は、まず、スイスの日系国際結婚家庭の社会的背景と家族の経済的・文化的・社会的資本、および、教育戦略について、母親に対するインタビュー調査から明らかにした。その結果、対象者たちは、教育的な資本に恵まれ、日本文化を誇りながらも自主的かつ望まれて渡瑞しており、子どもをスイス社会で自立させることに熱心な一方で、補習校や日本語学校を利用したり、家庭で指導したりしながら、積極的に日本語の継承に取り組んでいることがわかった。 次に、地域のボランティア教室における中国帰国者家庭の教育状況を、継続的な参与観察により明らかにした。そこからは、日本社会で育つ子どもたちは中国にルーツをもつことを否定的に捉えがちであること、日本の学校では学習面でも交友面でも問題を抱える子どもが少なくないこと、幼少期から計画的に中国語の継承に努めてきた母親は少ないこと、中国語の学習に子どもたちは消極的であることなどが明らかになった。 本年度は、中国帰国者教育に長年携わった元教員、および、沖縄の国際結婚家庭の教育に携わってきた研究者を招聘し、地域のボランティアとともに意見交流の場をもった。そこから、マイノリティの自尊感情を育てる教育のあり方や言語教育の方法について示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、国際結婚家庭の教育戦略について論文を執筆することができ、予定通りの達成ができた。国際結婚家庭についての海外調査が行えなかったが、以前の現地調査ですでに多くのデータが得られているため、そのデータの分析を優先した。 中国帰国者家庭の教育戦略については、継続的に参与観察をした他、関係者にフォーマル・インフォーマルに聞き取り調査も行っており、かなりデータが蓄積できてきた。また、外部の教育実践者や研究者との交流を深めることができた。関係者との関係も良好であり、引き続き密度の濃い調査が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、本研究の最終年度であるため、最終的な調査を行うとともに、データを分析し、学会発表および論文執筆を行う。 2013年4月~2014年3月 地域のボランティア団体にて、中国帰国者家庭の教育戦略についての参与観察 2013年4月~12月 駐在員家庭、国際結婚家庭、中国帰国者家庭に関する調査結果の分析 2013年8月~10月 地域のボランティア団体の関係者へのインタビュー 2013年8月~2014年2月 論文執筆および論文作成
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内旅費:研究会・学会への参加 謝金:インタビュー・データのトランスクリプト作成補助、統計データの整理・図表作成補助、翻訳料 書籍・資料費:関連する先行研究や資料の入手 その他:調査の必要経費
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