2012 Fiscal Year Research-status Report
中国の国際教育戦略と日本への影響に関する実証的研究
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23531126
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大塚 豊 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00116550)
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Keywords | 孔子学院 / 漢語水平考試 / 教育交流 / 留学中国計画 / 留学生 |
Research Abstract |
建国以来、中国は人材確保の重要な方途として多くの留学生を海外に送り出してきたが、今や留学生の大量派遣国から受入れ国へと変貌しようとしている。本研究の目的は、日中両国が教育分野において今後ますます協力を強める必要があると同時に、厳しく競合しあう関係にあるとの認識に立って、とくに①留学生・研究者の派遣と受入れ、②自国言語の海外での教育と影響力拡大の2つの側面に絞り、中国が積極的に展開している対外的な教育交流および支援に関する政策と措置の実態を実証的に解明することである。 この目的のため、初年度に中国各地および台湾の代表的拠点大学を選定し、対外教育活動の実際を調査したのに続き、第二年度には、中国語の世界的な普及のために設置された孔子学院の実態を考察するため、日本国内の福山大学、工学院大学、早稲田大学、岡山商科大学、関西外国語大学、兵庫医科大学、大阪産業大学に設置された孔子学院を訪問し、関連資料の収集と関係者へのインタビュー調査を実施した。国内の13カ所の孔子学院のうちの相当数から関連の情報を収集することができたが、残り数カ所での調査を継続実施した上で、目的・業務内容に基づく類型化をはじめとする分析を目指している。 加えて、中国が直接、間接に進める漢語・華語の普及が東南アジア諸国に及ぼす影響を調査するため、インドネシアおよびベトナムにおいて、小中高校生を対象とするアンケート調査を実施した。対中国の外交関係がいくぶん緊張していることもあって、アンケート調査の実施には予想以上の困難を伴ったが、分析に必要な数の回答を得ることができ、目下鋭意分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度前半にはきわめて順調に進展していたが、年末に右目の異常を覚え、手術を受けざるを得ず、2か月近くにわたって実質的に研究を進めることができない状態が続いた。年度末に急遽海外調査を含めて、もともと計画していた訪問調査やアンケート調査を実施したが、一部の調査は次年度に回さざると得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度、二年度には実施できなかった中国の西南、華南地域の大学における国際教育交流活動の実態について聞き取り調査などを実施する必要がある。また中国語のグローバルな普及を目指す手段としての孔子学院の事例研究として、わが国に既設の孔子学院に対する訪問調査を引き続き実施する予定である。加えて、アジア各国への中国の国際教育戦略の影響を把握するために、すでに回収しているアンケート結果の分析を急ぐとともに、必要に応じて、補充調査を実施する。さらにアジア諸国での孔子学院に対する受容状況や評価との比較分析の観点から、2012年末までの時点ですでに69か所もの孔子学院が設置されているアメリカの状況を調査する必要も検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の調査の結果、明らかになった留学生受け入れの問題点などを中国大陸の現地で継続的に実施するとともに、アジアの事例として取り上げる国およびわが国での孔子学院に関するフィールドワークを行い、比較の観点からアメリカの孔子学院についても訪問調査実施のために旅費を計上した。フィールドワークのみならず、近年中国において刊行されている関連の文献・資料の分析も必要であり、それらの購入と分析のための経費を使用する予定である。
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