2012 Fiscal Year Research-status Report
労働市場の縮小に伴う若年者の成人への移行過程の複雑、不確定化に関する実証的分析
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23531132
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
不破 和彦 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 教授 (60004115)
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Keywords | 若年から成人への社会的移行 / 若年世代の労働市場 / 若年世代の就業機会 / キャリア教育 / 職業教育・訓練 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は以下である。 1.本研究課題である”若年者の成人への社会的、経済的移行”は時代的な共通課題であることから、中国および韓国での状況を把握するために、現地調査を実施した。中国は広東省肇慶市、韓国はテグ市と、両国の経済活動を先導する地域の一つを調査対象地に、近年の経済状況との関連から、新規高校卒者および大学卒者である若年世代をめぐる労働市場の動向、さらに若年世代の就業観、就業に向けた教育・訓練機会、就業活動などについて、インタビューによる聞き取りを実施した。両国に共通の状況は、若年世代が希望する職種への就業機会の狭小さ、それに伴う就業の不安定さが自らの社会での地位獲得はじめ将来への人生に不安をもっていることである。こうした事態への国家および社会全体としての対応策の構築とその実践が日本と同様に急がれている。 2.若年世代をめぐる就業問題への対応策の一つとして、日本ではキャリア教育の推進が政策として学校教育段階で実施されている。韓国でも同様な取り組みが国家の政策として行われていることから、それらの現状と成果をめぐる比較検討を目的に、韓国の青少年教育機関および青少年研究者との意見交換を韓国・ソウルにて実施する機会を得た。キャリア教育が本来の趣旨・目的を離れ、就業のための教育活動としての性格が現実的に突出している共通点を確認しながら、今後もキャリア教育のあり方について交流を継続的に重ねていくことを確認している。 3.また、新規高校卒者および大学卒者で就業が未確定者に対する就職指導・支援の実態を青森県で事例的に把握することに努めた。就職未確定者が求める就職指導・支援の具体的な内容、さらにそれらに対する指導・支援のあり方を、実務にかかわる指導員からインタビューでもって把握する作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.研究実施計画に基き作業を進めてきている。研究実施計画の作成にあたって、大学での教育・研究に支障を及ぼさない範囲で遂行していくことを基本的に配慮したことが主たる理由である。 2.研究実施にあたって、必要な関連資料収集を目的とするインタビュー対象者の協力、ならびに職業安定所・ハローワークはじめ関係施設からの協力を得ていることが、研究計画に沿う作業を可能にしているもう一つの理由として指摘できる。 3.中国そして韓国での調査実施にあたっても、これまでの研究において協力的関係を築いてきている研究者から好意的な協力を得ながら、事前準備を進めることが可能になっていることも、海外での本研究の実施にプラスとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.自らの進路選択・決定は若者世代にとって大層に重要課題であることから、学校はじめ両親・保護者さらには社会全体としての指導・支援が継続的・計画的に求められる。キャリア教育が実際に新規高校卒者、大学卒者にとって進路選択に貢献している実態を明確化していくことが不可欠である。この観点から、高校生および大学生を対象にアンケート票による調査を実施する。日本と韓国で同じ内容からなるアンケート票調査を行ない、比較検討する。 2.若年世代の就業機会の拡大、そして就業の獲得は、彼らが成人へと社会的・経済的移行を達成していくうえで基本的な要件であることから、国家および社会として取り組んでいる政策的活動を日本そして韓国、中国において把握し、その成果と課題を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.上述したアンケート票作成とそれを活用した調査実施に向け、アンケート票の印刷、調査実施後の集計などに研究費を使用することが一つである。 2.本年度も韓国を訪問し、アンケート票調査の実施、さらにキャリア教育の内容、方法そしてその成果などをめぐる評価について、国の教育開発研究院はじめ高校、大学、そして青少年研究者などを訪問し、インタビューによる聞き取りを重点的に進める。韓国は日本以上に若年世代の就業困難な実情があり、その対応策としてアメリカはじめキャリア教育などの重点的な推進に着手している点からも、その全体的な現状把握は日本にとっても意味がある。韓国訪問の旅費、調査協力謝金、通訳謝金などへの研究費使用がもう一つである。
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