2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23531153
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
村上 タカシ 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (70344744)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | プロジェクトワーク / アート・プロジェクト / 地域連携 / インクルージョン / 現代美術 / ICT / 東日本大震災 / 復興支援 |
Research Abstract |
「芸術表現におけるプロジェクトワーク(プロジェ クト型作品:以下 PW とする)の実践研究」とは、現代の多様な表現形態を組み込みつつ、プロジェクト型のアートワークも「行為としてのア ート」(作品)として捉え、芸術表現活動に位置づけ、大学内の実践授業としてもプロジェクト型授業 の一環として学生参加のシステム構築や教材開発等を実践的に研究していくことを目的としている。具体的には大学と民間のNPO等が連携し年間を通したプロジェクトを現代美術をベースに地域住民や商店街、文化関連施設などとも協働で継続した芸術文化事業を展開する。 その実践研究の一環であるアート・インクルージョンというバリアフリーのアートプロジェクトを芸術文化による各地域やまちの活性化を目的としNPOや地域の商店街、まちの人たちと連携して行う。本研究では地域協働プロジ ェクトチームを大学、地域の文化行政機関やアートNPO、社会的企業等の民間セクターの関係者やクリエ ーター等と組織し継続的な取り組みと創造的な文化立国を構築するシステムを導入するための研究及び 実践を行い、創造的表現活動が日常の生活の場においても継続的に展開できるシステム構築の提案とICT(情報通信技術)を活用する ことによりWEB上も芸術文化創造の社会装置としてのメディアと捉え表現の場の創出や各種媒体(メディ ア)を融合することによる相乗効果を図ることを目的としている。震災の影響もあり各種NPOや地域(仙台長町の仮設住宅)との連携は進み実践的取り組むも予定を前倒しで実施することとなった。アート・インクルージョンとしては2011年6月5日、8月8-9日、10月15-16日12月16-17日と仮設住宅の住民やまちの人、子どもたちなどを対象に美術だけでなく、音楽やスポーツなども組み込みコミュニケーションをとるなど芸術表現による交流の成果があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究のスタート時に2011年3月11日に東日本大震災が起き、被災現地として様々な復興支援等の取り組みが必然的に始まった。地域や全国組織の福祉系NPOや困窮者支援NPO、災害支援NPO等と幅広く連携したり内容も復興関連が加わり、対象者も地域の人たちだけでなく仮設住宅に移り住んだ人たちにも広げ実践研究を行った。当初予定していた地域協働プロジ ェクトチームの編成は震災の関係もあり大学、地域の文化行政機関やアートNPO、社会的企業等の民間セクターの関係者やクリエ ーターなど2011年4月-5月の段階でもほぼ整い、日々ミーティングを行い体制を整えることができた。アートインクルージョン実行委員会として行ったクリスマスプロジェクトは復興支援を目的に仮設住宅で行う、クリスマスの時期にアートを楽しむプロジェクトであり、長期化する被災地での心のケアを目的に行う表現・創作活動の1つとして行った。同時に仮設住宅の壁に装飾を施す(ペインティング、国内外の子ども達から送られてきた絵を貼るなど:宮城教育大学国際理解センターとの連携)「仮設住宅ラッピング計画」を実施した。仮設住宅内の集会所や広場で創作ワークショップや作品の発表を実施し、様々なかたちで居住者とアートを通した交流を図ることが狙いである。併せて12月16日には復興に向けアートの現場で活躍する有識者が集う「アート・インクルージョン カフェトーク」も開催した。仙台市太白区長町の「あすと長町仮設住宅」は233世帯の被災者が入居しており、本事業はそれらの住民の孤立化を防ぐと共に、創作活動や会話を楽しんでもらい、それを生活していく上での希望や喜びに繋げて欲しい、というコンセプトのもと実施することができた。上記のような復興支援関連の地域連携の実践研究を行うことができたことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
3.11以降被災現地の1つである宮城県は地震と津波の被害が深刻なエリアである。今後復興が進むとはいえ、仮設住宅での被災者の生活は長期化することが必至であり、それに伴い様々な分野での支援活動も長期的なものが求められている。そのような中での居住者の不安や孤立化をどう防いでいくかが最重要課題となる。行政機関や各種専門のNPOや大学等とも連携しアートを用いて行政の手が届かない場面でのサポートに繋がる実践研究を行っていく。実際、住民と「ただ話す」のではなく、一緒に手先を動かして何かを作りながら話をすることで、より気軽に意思疎通をすることが可能となる場面も多く見受けられた。今回のプロジェクトは住民側へ事業の趣旨を伝え、今後さらに継続的に支援を行っていくための重要なステップになったと言える。また2011年6月からあすと長町の仮設住宅で支援活動を行ってきたが、仮設住宅で行う活動においては場所の提供等、住民側からの協力が欠かせないため、今後も住民や自治会、また仮設住宅の見回り事業を行っているNPO等と連携し、持続的なコミュニケーションや信頼関係を維持していくことが重要だと考える。宮城教育大学においても東日本大震災で甚大な被害を被った宮城県の教育の復興、 県内の児童・生徒の確かな学力の定着・向上及び現職教員の支援を中長期的に行うことを目的として、 2011年6月28日に設置され、復興支援活動が始まっている。様々な関係機関とも連携し実践研究を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度は東日本大震災もあり、前倒しの事業を実施し材料費など物品費が膨らんだ。2012年度は宮城教育大学をはじめ協力大学また仙台市・宮城県・東京都及び国内外の文化施設等、民間セクターとの協働による地域プロジェクト(仙台長町)を開催し継続的な協働事業が可能となるシステム開発を実践的に研究するための物品や施設設備費、Web等の編集、制作等経費、さらに国内外での報告事業や打ち合わせ、下見等での交通費等は予定通りで考えている。3.11以降当初予定していたNPO連携もアート系や福祉系だけでなく困窮者支援や災害支援のNPOなども加わり、実践研究のプログラムも多様で複雑になってきている。物品経費は膨らみ、事務系の人件費が組めなかったが2012年度は計上し、作業効率を向上させ、実践研究の内容を充実させていく予定である。
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Research Products
(4 results)