2012 Fiscal Year Research-status Report
科学的な思考力の育成を図る教授・学習方法の開発と教師教育への適用
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23531159
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
清水 誠 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30292634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高垣 マユミ 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (50350567)
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Keywords | 科学的思考 / 学習過程 / 言語活動 / 理科学習 / 教師教育 |
Research Abstract |
平成24年度は,平成23年度の研究を踏まえ,科学的な思考力とは何かを明らかにし,育成のための教授・学習方法の再吟味とその効果の検証を行った。教授・学習方法の検証では,科学的な思考力の中の論理的思考力の育成の場面に絞り,論理的思考,批判的思考,推理,モデル思考といった思考のスキルを育成する教授・学習方法の検討とその効果の検証を小・中学校において行った。 科学的な思考力を検討する中で,論理的に思考するために必要な批判的思考力は,Ennis,久原・井上・波多野,道田,福地・土井,樋口,宮元,楠見,平山,菊池ら多くの研究から,根拠に基づいて推論を行うこと力や,自らの推論過程を多面的に吟味する力であることを明らかにすることができた。そこで,本研究では,批判的思考を自分自身の推論過程が適切な根拠に基づいているか吟味する合理的で省察的な思考と定義することとし,批判的思考力の育成方法を検討した。 木下・山中・山下・岡本,道田,松浦・柳江らの先行研究を検討する中で,批判的思考力を育成するためには自らの思考過程を吟味・検討することが必要であり,他者との対話や協同学習が有効であると考えることができた。そこで,批判的思考力を育成する教授・学習方法として,他者との議論を行う仮説の設定や考察の場面で,「情報の明確化」,「情報の分析」,「推論」,「行動決定」の4つの批判的思考のスキルを役割として分散化し,グループの中で意識的に吟味させる授業方法を考案した。結果は,「情報の分析」や「行動決定」といったスキルの育成が顕著に見られ,批判的思考力の育成に有効であることを示唆することができた。今年度の研究からは,論理的に思考する力を育成する新たな教授・学習方法の一つとして,他者と議論するといった協同的な学習の中で,批判的思考のスキルを役割として分散化し,学習することが有効であることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度以降は、平成23年度の研究を引き継ぎ、下記のように研究を実施することとしていた。①研究協力者とともに理論構築した授業を可能な限り数多く実践し、フィールドワーク、アクションリサーチ、参与観察等により収集したビデオカメラ等の記録をプロトコルや図に起こす。②科学的な思考を深めていく過程を分析する方法を確立し、その分析方法に基づき①で起こした記録の分析を行う。③研究者と小中学校の教師でプロジェクト会議を開きながら、科学的な思考力の育成を促す教授・学習方法の構築を図る。④③で構築した教授・学習方法により検証授業を行い、その成果を明らかにする。⑤研究を総括し、児童生徒が科学的な思考力を育成する教授・学習方法の最終的な構築と教師教育の適用を図るプログラムの作成を図る。 こうした目標に対し、平成24年度は①~④に示した科学的な思考の中の論理的思考力の育成ついて検討を進めることができた。特に論理的に思考するために必要な批判的思考力の育成については、仮説とする教授・学習論の設定に基づく、小中学校における実証に大きな成果と可能性を見いだすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、これまでの研究を引き継ぎ、下記の1.2.のように研究を進める。 1.平成24年度は、科学的な思考力の中でも、批判的思考力の育成に重点をおいて研究を進めてきた。他にも科学的な思考の育成には推理、モデル思考、発散的思考等の思考力の育成を欠かすことができない。そこで、①研究協力者とともに理論構築した授業を可能な限り数多く実践し、フィールドワーク、アクションリサーチ、参与観察等により収集したビデオカメラ等の記録をプロトコルや図に起こす。②科学的な思考を深めていく過程を分析する方法を確立し、その分析方法に基づき①で起こした記録の分析を行う。③研究者と小中学校の教師でプロジェクト会議を開きながら、科学的な思考力の育成を促す教授・学習方法の構築を図る。④③で構築した教授・学習方法により検証授業を行い、その成果を明らかにする。という手法をとりながら教授・学習方法とその効果の検証を進める。 2.研究を総括し、児童生徒が科学的な思考力を育成する教授・学習方法の最終的な構築と教師教育の適用を図るプログラムの作成を図る。最終年度の平成26年度に向けて、小・中学校の教師を対象にした研修会・講演会の資料づくりや教師・学生が活用可能な科学的な思考力の育成を促す授業DVDを作成・公開・提供のための準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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