2011 Fiscal Year Research-status Report
編集を概念装置とした読むことの学習指導論の再構築とその授業開発に関する研究
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23531162
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
寺井 正憲 千葉大学, 教育学部, 教授 (50272290)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 編集 / 書き換え / 読み書き関連 / 読むことの学習指導 / 創作 / 模倣 / 見本 |
Research Abstract |
初年度は、研究課題(1)「編集の観点から見た読むことの学習指導の実践研究、理論研究の検討」、並びに研究課題(2)「編集の観点からの読むことの学習指導モデルの仮説と実践授業による検証」に関わって、編集という概念装置るに関わる理論などを収集し検討するとともに、これまでの読むことの学習指導に関わって先行する実践や理論を収集し整理して、成果や課題について検討し整理した。それによって、読み書きを関連させた学習指導を編集という概念でとらえ直すことの有効性やそのための方法、さらに授業づくりや分析の観点、方法などについて知見が得られた。 課題(2)に関わって、特に模倣や書き換えなどが積極的に行われてきた短歌の創作という言語活動について、専門家である盛岡大学学長・望月善次氏を招聘して、実践拠点校の大久保小学校や協同的に研究を進める船橋市内の教員とともに講演を聞き、また短歌の創作における模倣や書き換えに関わる講演、実践研究に関する指導、書き換えを取り入れた創作ワークを受けた。実践の蓄積とともに実践に関わる解釈やそこにおける問題、意味づけ方などが明確となり、次年度以降の実践的な課題が具体化してきた。 大久保小学校では、読み書き関連を基盤にして創作活動の実践開発に関わる研究に着手した。俳句、詩、物語、随筆などについて、作品を読んで、話題、発想法、人物造形、構成、表現技法などを学び、それを創作活動に生かすような実践開発を行った。そのような学習活動を推進する上で、指導者の見本が学習材として有効であるとの知見が得られた。船橋市内の国語研究会と協同して進めている書き換えを取り入れた実践開発では、ただ書き換えを行う学習指導では、編集活動としての読み書きにおいて能力に関わる育成が必ずしも十分ではないことなどの知見が得られた。これらの知見によって、編集として読み書きの学習指導を開発する視点や課題が明確になってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究課題(1)「編集の観点から見た読むことの学習指導の実践研究、理論研究の検討」、研究課題(2)「編集の観点からの読むことの学習指導モデルの仮説と実践授業による検証」における先行する実践や理論の分析については、順調に進んでおり、文献の収集や整理とそれに基づく実践や理論の状況や課題が明らかになりつつある。 また、課題(2)に関わって、実践開発の研究拠点校や協同的に研究を行う実践研究会との連携を少し前倒しして取り組み始めた点が、当初の計画より進んだ状況にある。これは、早めに実践家に理論的な背景や基本的な考え方についてご理解いただき、実践の質を上げることを通して、モデルの枠組みについて精緻化を図りたいという意図による。 全体を通して順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、初年度に得られた結果を基にして、まず研究の課題(1)に関わって、先行する実践や理論について課題や展望をまとめる作業を行う。 また、課題(1)に関わり、読書生活論、思考力育成、情報処理能力の観点から編集行為としての読むことの学習指導の在り方について検討を行い、読者である学習者をエディターとして育成することの意味や有効性について考察する。 これに加えて、メディアを使った編集学習を研究する方から専門的知識の提供を受け、編集学習や出版学習を具体的に想定して、編集行為として読んで表現する学習指導のモデル化を試みる。 さらに、課題(2)に関わって、学習材や指導方法、単元構成に関する具体的な視点や方法などを蓄積するために、言語活動の充実という視点から多様な表現活動を取り入れた読むことの学習指導や、メディアの編集や出版を積極的に進める授業を視察したりする。 これに加えて、初年度に着手した研究拠点校や国語研究会との連携をさらに進め、実践開発に努めていきたい。寺井が全体講師を務める習志野市立大久保小学校では、特に文学作品の読み書き関連を基盤にした創作学習について実践開発に取り組み、その成果を記録し整理する作業に取り組んでいく。また、船橋市の国語研究会や船橋市立海神南小学校との連携を深め、書き換え学習に焦点を合わせて、実践開発に取り組んでいきたい。特に海神南小学校では、学力向上や言語活動の充実という課題と関連させながら、書き換えや編集の読むことの学習指導、書くことの学習指導における有効性も視野に入れて研究進めていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度実施する、先行する実践や理論について課題や展望をまとめる作業、また読書生活論、思考力育成、情報処理能力の観点から編集行為としての読むことの学習指導の在り方についての検討に伴って、実践資料や理論書、実践書などを物品として購入する予定でいる。 また、メディアを使った編集学習を研究する方から専門的知識の提供を受るとともに実践検討などを行うような、ゲストティチャーや連携する実践家との研究協議会を開催するために、謝金や食事その他の費用を使用する予定でいる。 さらに、学習材や指導方法、単元構成に関する具体的な視点や方法などを蓄積するために、学会に参加したり、多様な表現活動を取り入れた読むことの学習指導やメディアの編集や出版を積極的に進める授業を視察したりするための旅費を使用する予定でいる。 これに加えて、初年度に着手した研究拠点校や国語研究会との連携をさらに進め、実践開発に取り組んでいくために、授業分析に必要な教育機器、パソコンなどについて購入計画を少し前倒しして、物品費を使用して少しずつ購入して整備する予定にしている。
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