2012 Fiscal Year Research-status Report
編集を概念装置とした読むことの学習指導論の再構築とその授業開発に関する研究
Project/Area Number |
23531162
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
寺井 正憲 千葉大学, 教育学部, 教授 (50272290)
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Keywords | 編集 / 書き換え / 読み書き関連 / 読むことの学習指導 / 創作 / 模倣 / 見本 |
Research Abstract |
研究2年目は、まず研究課題①「編集の観点から見た読むことの学習指導の実践研究、理論研究の検討」、並びに研究課題②「編集の観点からの読むことの学習指導モデルの仮説と実践授業による検証」に関わって、これまでの読むことの学習指導における先行する実践や理論を収集し整理して、読むことの指導内容論を中心に成果や課題について検討しまとめた。これにより編集という概念装置を使うことによって現在の読むことの学習指導で提案される理論や実践をとらえ直し、今後の理論や実践における方向性を確認することができた。 つぎに、課題②について、特に文学の読むことの学習指導論において、読者がテクスト内の情報、他の種々のテクストの情報、自身の見聞や体験などに関する情報などを相互に関連させ編集して意味を生成することと、それを学習指導論としてどう構築するかということについて、欧米の読者反応論に基づく読書教育を専門とする広島大学大学院教育学研究科教授の山元隆春氏を招聘して、実践拠点校の海神南小学校、大久保小学校や協同的に研究を進める教員とともに講演を聞き、協議を行った。また、読書教育実践の先進的な提案が行われている小学校全国国語教育連絡会・芦屋研究大会、盛岡市立月ケ岡小学校などに参加したり見学したりした。これらの知見から編集によって読み書きを統合的に展開する学習指導モデルを構築するための必要な視点や要素が大まかに具体化してきた。 さらに、また課題②に関わって、実践的な授業開発に着手し、実践拠点校の海神南小学校、大久保小学校において書き換えを生かした創作活動やリテラチャー・サークルを生かした話し合い学習などを試行し、編集という発想による意味構築の学習指導に関する学習指導過程、言語活動の組織、教師の見本や手引きなどの学習材の在り方、身に付けさせる能力や態度などに関する知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の研究課題①「編集の観点から見た読むことの学習指導の実践研究、理論研究の検討」、研究課題②「編集の観点からの読むことの学習指導モデルの仮説と実践授業による検証」における先行する実践や理論の分析については、順調に進んでおり、文献の収集や整理とそれに基づく実践や理論の状況や課題が明らかになりつつある。 また、課題②に関わって、実践開発の研究拠点校や協同的に研究を行う実践研究会との連携を計画的に進めることができている。早めに実践家に理論的な背景や基本的な考え方についてご理解いただいて、実践の工夫やその効果について少しずつ成果が上がってきている。それらの実践成果について3年目に出版する計画が進んでおり、充実した成果が生まれていると見なされ、その成果を生かしてモデルの構築を進めていきたい。 全体を通して順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
課題① 実践拠点校や実践研究会における授業の実践 実践拠点校の習志野市立大久保小学校や船橋市立海神南小学校、また実践研究会などで構想した単元を実践し、実践結果を記録し、分析や検討を行う。大久保小学校ではテクストの読み書きを関連させた編集学習を中心にした実践に取り組み、海神南小学校では書き換え活動やリテラチャーサークルなどを活かした授業実践に取り組むことにする。小学校の実践を中心にして10~15実践程度行い、授業を録音・録画し、ノートやワークシートを複写して、研究協議会で実践記録を分析し検討を行い、実践データを集積するとともに、授業を分析、記録を行う。 課題② 読むことの学習指導理論のモデルの検証と見直し 実践結果の検討に基づいて学習指導理論のモデルの構築と修正を行う。学習指導過程、学習材、言語活動の配置や質、学習者の意欲・態度、能力や態度の評価などの観点から、実践結果を精査してモデルの構築や改善、補強を行う。また、2年目に引続き、読者である学習者をエディターとして育成することの意味や有効性について議論するとともに、編集の観点からの読み書きや思考、認識などの技能の統括的に再整理する作業を進める。 課題③ 国内における編集活動を中心にした実践資料の収集 次年度の研究成果をまとめる作業にあたって、できるだけ多くの実践をレビューするために、今年度はメディアの編集活動を中心にした実践を行う国内の学校や機関などを訪問し、実践資料を引続き収集する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、課題①に関わって、実践拠点校や実践研究会における授業を実践し、授業を録音・録画し、ノートやワークシートを複写して、研究協議会で実践記録を分析し検討を行い、実践データを集積するとともに、授業を分析、記録を行うために、録音・録画機器や研究協議用のプロジェクターの費用、学習材の印刷や製本のための機器の費用、編集学習用ソフトの費用、研究協議会のための会議費、実践記録の文字化や整理のアルバイト代が必要になる。 次に、課題③に関わって、国内における編集活動を中心にした実践資料の収集すると共に、メディアの編集活動を中心にした実践を行う国内の学校や機関などを訪問し、実践資料を引続き収集する。そのために国内の旅費が必要となる。また、メディアによる編集学習を研究する方から専門的知識の提供を受けるとともに、実践検討などを行うためにゲストティチャーや連携する実践家との研究協議会を開催するために、謝金や食事その他の費用を使用する予定でいる。 最後に、課題②に関わって、読むことの学習指導理論のモデルの検証と見直しを行うために、先行する実践や理論について、また読書生活論、思考力育成、情報処理能力の観点から編集行為としての読むことの学習指導の在り方について検討するために、実践資料や理論書、実践書などを物品として購入する予定でいる。さらに、学習材や指導方法、単元構成に関する具体的な視点や方法などを蓄積するために、学会に参加したり、多様な表現活動を取り入れた読むことの学習指導やメディアの編集や出版を積極的に進める授業を視察したりするための旅費を使用する予定でいる。さらに、研究成果の中間発表を学会で行うための旅費が必要となる。
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