2013 Fiscal Year Research-status Report
編集を概念装置とした読むことの学習指導論の再構築とその授業開発に関する研究
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23531162
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
寺井 正憲 千葉大学, 教育学部, 教授 (50272290)
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Keywords | 編集活動 / 書き換え / 読み書き関連 / 読むことの学習指導 / 創作 / 模倣 / 見本 |
Research Abstract |
研究3年目は、本年度設定した三つの研究課題の内、まず課題①「実践拠点校や実践研究会における授業の実践」について、実践拠点校で構想した単元を実践し、授業研究会でその結果を記録し、分析、検討した。大久保小学校では主に文学テキストについて読み書きを関連させた編集活動の実践、海神南小学校では書き換え活動を活かした実践に取り組んだ。その結果、読み書き連動の編集活動によって、編集活動に応じて読みの認知的な構えや活用される能力が異なること、表現形式や言語活動をメタ認知しやすくなること、能動的な読みの態度が得られること、編集活動の見本に読む能力、書く能力、表現内容、表現形式を組み込むことが容易になるなどの授業づくりに重要な知見が得られた。 次に、課題②「読むことの学習指導理論のモデルの検証と見直し」については、課題①における実践の単元開発やその分析、検討によって、第3次で実現される編集活動に内在する読む能力・書く能力の知識・技能を第2次で習得できるように組織すること、児童や学級、学校の学力の実態に応じて編集活動として取り込む読む能力、書く能力を調整することが容易になることなどの知見が得られた。また、編集活動によってエディターである学習者の学習意欲や能動的な態度が得られやすいことが理解された。 課題①、②に関わって、メディアリテラシーの研究者である群馬大学教授の中村敦雄氏を招聘して、実践拠点校の海神南小学校、大久保小学校や協同的に研究を進める教員とともに講演を聞き、メディアリテラシーの視点を加味した授業づくりの知見を得た。 さらに、課題③「国内における編集活動を中心にした実践資料の収集」については、単元を貫く言語活動に関わる授業実践資料で活用できるものが多くあり、これらの資料を収集し分析し、課題①、②の授業づくりに役立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目の研究課題①「実践拠点校や実践研究会における授業の実践」、研究課題②「読むことの学習指導理論のモデルの検証と見直し」が、実践開発の研究拠点校や協同的に研究を行う実践研究会との連携を計画的に進めることができている。メディアリテラシーに関わる理論家を招聘して研究会を開催することによって、実践家に理論的な背景や基本的な考え方についてご理解いただき、実践の工夫やその効果について成果が上がってきている。研究課題③「国内における編集活動を中心にした実践資料の収集」によって得られた資料を活用することで実践の質的な改善も進んでおり、また収集した文献を整理して、現在計画が進んでいる実践成果をまとめて出版する際に、研究レビューなどを提示できるように進めている。 全体を通しておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
①実践拠点校や実践研究会における授業実践 10月までに実践拠点校の習志野市立大久保小学校、船橋市立海神南小学校、千葉市中学校国語部会や実践研究会において、前年度の実践の検討に基づき、さらに単元を改善して編集する条件を細やかに設定して学習指導の質的な向上を図った授業実践を行い、実践記録を取り、その分析、検討を行う。授業づくりのために編集に関わるパソコンソフトや製本器、資材などが必要になるとともに、授業分析するための教育機器が必要になる。さらに、研究協議会の会議費、実践践記録の文字化や整理のアルバイト代が必要となる。 ②研究のまとめと成果の発信 読むことを編集行為としてとらえた学習指導論や授業実践をまとめ、シンポジウムによる公開研究会の開催、書籍の発刊などで研究成果を発表する。先行する実践や理論を整理してレビューとしてまとめ、これに実践拠点校や実践研究会の実践成果を加えて出版するようにしたい。方向性としては、読み書きを連動させた創作学習、書き換え学習を取り入れた読むことの学習指導という2系列で整理する予定である。また、先行実践として行われてきた大村はまの読書生活指導に関わる読むこと実践を編集活動という視点から分析、検討して、これを論文としてまとめるようにしていく予定である。 これらを実現するために、これまで集めた文献で抜けのあるものに追加で収集する予定であるので、これに費用が必要となる。また、実践や理論の研究成果について多面的に考えるシンポジウムを行う公開研究会を開催して研究成果を発信するとともに、成果をまとめ報告書や書籍として刊行する予定であるので、学会参加のための旅費、シンポジストや実践発表者などの専門的知識の提供に関わる謝金、書籍編集にあたって会議費、報告書の印刷費などが必要になる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
7月末に妻が死去したことに伴い、幼い娘を独りで保育しなければならない状況になり、8月以降の学会出張などができなくなって旅費の支出が減ってしまい、その分の費用が残ってしまったため。これに加え、先の理由で、授業を検討する会議なども当初の予定より回数を開催できなくなって人件費・謝金の支出の減ってしまい、その分の必要が残ってしまったため。 授業づくりにかける支出を当初計画より増やして授業に関する新たな編集活動を採用したり質的な向上に役立て足りする予定である。また、授業研究会の回数や講師の人数を増やすなどして支出を当初計画より増やして、授業の考察の質を高めていくようにする予定である。
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